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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
158/253

超古代戦争の遺品

 「これを見せたかった。」


 ドレイクとリナの目前には苔に埋め尽くされているが紛れもなく巨大な砲台があった。デスフェルに連れて来られた場所はバードマンの拠点となる洞窟から東方にある孤島。深い森林を進むとそれはあった。


 「デスフェル、こいつは・・・」


 「いい反応だな。そう、これは超古代戦争ル・ゲハ・ロドンの遺品だ。兵器の名はシュレイガン。バードマン族に伝わる古い書物にこの兵器のことが書かれていた。」


 十六人の戦神と共に旧支配者を倒す為にバードマンら飛行亜人種も戦争に参戦。その時に戦神に与えられた兵器がこのシュレイガンである。シュレイガンについて書物には細かく操作方法が書かれていた。しかし構造や放出されるエネルギーの原料などは一切書かれてはいない。


 「なるほど・・・それでこいつの威力はどれくらいなんだ?」


 「ここ数千年ほどシュレイガンは使われてはいない。ただ書物にはこう書かれてあった。シュレイガンは島ひとつ消し去る破壊力を持つと。」


 「まさに古代戦争の遺品ってやつだな。

  ハーピーの持つあの閃光と関係があるのか?」


 「ああ、書物に書かれていた内容とあの閃光は一致する。」


 「ということは・・・。」


 「やつらも古代戦争の遺品を手に入れているってことになる。」


 デスフェルの言葉にドレイクはジッとシュレイガンを見つめていた。それからドレイクはデスフェルの許可をもらいシュレイガンの調査を行い始めていく。実際調べてみるとかなりシンプルな構造をしている。砲筒とトリガーを引く操作席のみの構造だが不思議なことに接続箇所がない。完全に一体化したシュレイガンをどうやって分解整備するのかわからない。それはもちろん弾薬の投入箇所も同じだ。


 「ふぅ~・・・調べれば調べるほど謎だらけの兵器だぜ。」


 「あんまり根を詰めると身体に毒よ。」


 汗を拭うドレイクにリナは水筒を手渡した。調査を開始してから数日が経っていた。デスフェルに借りた書物を見ながら調べているが依然構造は不明のままである。操作方法は簡単なもので標準を的に合わせてトリガーを落とすだけである。しかし数千年と月日が兵器を苔塗れにしてしまった。苔を取る作業を当初は嫌っていたドレイクだったがここ数日で愛着がわいたのだろうか、今ではまめにそれらを取り去っていく。苔を取ってはシュレイガンの装甲を布で磨いていた。


 「愛車もそうだけど結構凝り性なのね。初めて知ったわ。」


 そんなリナに構う事もなくドレイクは作業を続けている。当初はトリガーなどの可動部分に苔がこびりついて動かせなかったがドレイクの丁寧な?作業により可動部分の苔は完全に取り除かれて操作が可能になっていた。顎のヒゲも長く伸びた頃、デスフェルがやってきた。


 「綺麗になったシュレイガンとは対照的な姿になったな、ドレイク・・・いや失礼した。それより調子はどうだ。直せそうか?」


 「おお、デスフェルか。シュレイガンは完璧だぜ。撃ってみるか?」


 デスフェルは笑みを浮かべた。最初、ドレイク達を連れてきた時にはシュレイガンは苔塗れで周囲の木々と一体化していた。だが今のシュレイガンは古代兵器にも関わらず美しさや優雅ささえ漂っている。上空を移動しているスカイハイランドはセカンドブロックの空を一周して再びデスフェルの洞窟がある上空に位置していた。後数日ほどでシュレイガンの設置されているこの地の上空へと移動してくるだろう。


 「シュレイガンの射程距離に入った時こそ奴らの断末魔を聞ける時。」


 再びハーピー族との激突の時が近づいてきていることをリナは察した。シュレイガンの整備も完了して満足したドレイクはリナを連れてデスフェルと共に洞窟へと戻った。


 「ふぅ~、久しぶりに水を浴びたぜ。」


 タオルで髪の毛をゴシゴシ拭きながらテーブルの上に置かれていた地図を見つめた。それはデスフェルが今回の戦術について細かく書き記されたものだった。真剣に見つめるドレイクにリナがコップを手渡すとそれを一気に飲み干した。


 「ふぅ~・・・・・どうした、リナ。そんなに心配なのか?」


 「そうね・・・心配じゃないと言ったら嘘になるわね。」


 頭からタオルを被ったままドレイクは黙っている。リナも黙ったままドレイクの肩にそっと手を置くとしばらく沈黙の時間が流れていった。ドレイクもリナも気持ちは一つだった。あとはミカがそのことに気づいてくれたるか・・・それが鍵となる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「再びバードマン族の支配するエリア内に近づいてきたわけだが、奴らが攻撃を仕掛けてくると思うか?」


 「可能性は高いと思われます。しかし奴らの攻撃は二度と通じません。今度こそ敗北を味合わせます。」


 ハルピュイアは声を荒げた。確かに同じ手段で攻撃を仕掛けてくるとはてんとも思ってはいない。バードマン側にドレイクがいるかぎり別の手段で攻撃してくるのだがこのスカイハイランドに対してどのように仕掛けてくるのか・・・それが思いつかない。ハルピュイア率いるハーピー族はすでに戦闘態勢を整えていてスカイハイランドにバードマンが襲撃にくるのを、固唾を呑んで待っている。スカイハイランドに緊張が走りその重い空気はタカヒトやミカにも伝わった。ドレイクとの戦闘を考えるとタカヒトは気が重かった。その隣ではミカがリナの大地の鞭を手に持っている。そんなふたりのもとにてんとが近づいてきた。


 「準備は出来ているか?今回は厳しい戦いになる。気を引き締めていくぞ。」


 「てんと・・・どうしてもなの?」


 ミカの言葉にてんとはうなずいた。ミカは正直今回の件に関してあまり乗り気ではなかった。しかしてんとの決意は固く計画通りに行動せざる得なかった。ミカも諦めたように計画を受けれるとハーピー達が騒ぎ出した。スカイハイランドはバードマン族の砦上空に到着したが攻撃らしき行動は何も起きなかったからだ。


 「気を抜くな。まだ奴らのテリトリーから抜け出したわけではない。」


 ハルピュイアはハーピー達に激を飛ばした。この言葉にハーピー達は気を引き締めていく。しかしバードマンからの襲撃はなかった。バードマンの砦から離れていくスカイハイランドでは完全にハーピー達の気は緩んでいた。確実に襲撃に来るだろうと確信していたがそれをあっさりと裏切られたハーピー達は完全に拍子抜けを受けた。装着していた武器や装備品を取り外したハーピー達からは笑みすら浮かんでいた。その直後、ひとすじの閃光がスカイハイランドを撃ち抜いた・・・。


 「何事だ?一体何が起こったというのだ!」


 混乱しているハーピー達にハルピュイアは統制を図ろうとした。だが気の緩んだところに予想しない攻撃。状況を判断できないハーピー達に統制を取ろうとは無理なことだったのかもしれない。スカイハイランドは激しく揺れながら黒雲に向かって落下していく。


 「スカイハイランドが落下している?アエロー、ポダルゲー!」


 ハルピュイアはアエローとポダルゲーを呼ぶと高度を保つように指示した。スカイハイランドの中心部には浮遊石と呼ばれる巨大な石が存在する。それはハーピー族が作り出したものではもちろんない。遥か昔から上空に浮遊していた石である。長き歳月を経て浮遊石に苔が生え、草木が生り、自然界のような大地が形成されていったのだ。


 「ハルピュイア!閃光は大地から放たれたものだ。あれはスマートガンの閃光によく似ている。もしかすると奴らも古代兵器を持っていたとでもいうのか!」


 蒼白した表情のオーキュペテーが言った。もちろん考えられない話ではない。もとは同じ飛行亜人種であったのだから・・・。ハルピュイアはオーキュペテーにケライノーを連れて確認を行うように指示した。それからほどなくしてアエローが飛んできた。


 「浮遊石が直撃を受けた。修復を行っているが落下するほうが早いぞ。どうする?」


 浮遊石をポダルゲーが修復を試みているがもともと存在していた石を修復することなど出来るわけもなく、落下は免れない。険しい表情のハルピュイアにてんとが声をかけた。


 「残念だがスカイハイランドはもう終わりだ。この地を捨てて避難したほうがよい。ノンウイングスを連れて避難するのだ。」


 「我らはこの地で生き抜いてきた。

  ここを捨ててどうやって生きていけばよいと言うのだ!」


 「命さえあればまた築く事は出来る!」


 「てんとの言う通りよ。死んでは駄目、生きて希望を育てていきましょう。」


 「ミカ様・・・・」


 ミカの言葉にハルピュイアは涙が流れるのを必死に堪えた。アエローに修復活動を行っているポダルゲーを連れて避難するように伝えた。そしてハーピー達を呼び集めてノンウイングスや子供達、最小限必要な荷物を持ちこのスカイハイランドから避難するように言った。スカイハイランドは落下を続け黒雲から突き抜けてきた。デスフェル達のいる地上からもスカイハイランドが見えた。そのスカイハイランドから無数のハーピー達が避難していくと飛び去っていった。


 「ハッ、ハハハ 奴らめ、慌てておるわ!よし、ドレイク。もう一撃浴びせて奴らをこの地上から抹殺しろ!」


 「・・・それは無理だ。」


 「何故だ?・・・情けをかけるつもりか!」


 「・・・」


 ドレイクは言葉を詰まらせた。デスフェルはドレイクを押し退けてシュレイガンの操作席に座ると標準をスカイハイランドに定めてトリガーをおとした。だがその砲筒から閃光が放たれることはなかった。デスフェルは何度も何度もトリガーをおとすが反応はない。


 「さっきの閃光が最後だったようだな。シュレイガンはもう機能しない。」


 「くそ・・・・ならば逃げ惑う奴らに一撃を与えよう。」


 「それは時期早々だな。あの浮遊物体の落下による二次災害は避けたい。」


 デスフェルはドレイクの指示に従うことにした。たしかに巨大なスカイハイランドが地上に落下した場合、その衝撃は凄まじいものでハーピー族だけでなくバードマン一族にも被害が及ぶのは確実であった。


 「あの角度だと・・・ここより東に落下するはずだ。

  仲間達を連れて西に避難する。」


 ドレイクの的確なアドバイスを受けたデスフェルはすべてのバードマンを集めて西へと移動を開始していく。移動していく最中も上空から落ちてくるスカイハイランドはそれが巨大な物体であることを認識させた。巨大な物体の接近にバードマンに恐怖感が襲い掛かる。恐怖感に襲われた者はバードマン族だけではない。落下していくスカイハイランドではハーピー達による懸命な救出活動が行われていた。ハーピー族はその能力の衰退からノンウイングスが全体の六割を占めている。ハーピー達はノンウイングスを連れて落下していく方向とは逆の方向、つまり西の土地へと降下していく。


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