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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
156/253

友の契り

 バードマンは笑みを浮かべ他のバードマンに指示するとリナを呼び寄せた。リナは無傷でドレイクの顔を見るなり抱きついてきた。


 「おまえを部下にするのはやめよう。どうだ、俺に協力してはくれまいか?」


 「ずいぶんと聞き分けが良くなったな。まあ、リナに手荒なマネをしなかったことに関しては男気を感じてるぜ。俺はドレイクだ。お前は?」


 「俺の名はデスフェル。バードマン一族の長だ。」


 「ほう、バードマンと言うのか・・・。」


 「なにか疑問があるのか?」


 「いや・・・こっちの話だ。」


 デスフェルはドレイクとリナを洞窟の奥に連れていった。洞窟ではあるが中はわりと明るくゴツゴツした岩場でも足を捕られることはなかった。連れてこられた先には岩で出来たテーブルがありその上にさまざまな食事が用意されていた。デスフェルが岩が加工された椅子に座るとドレイクとリナも座った。


 「お前達の好みを調べる暇がなかったのでありとあらゆるものを用意した。口に合えば良いのだが我が一族のもてなしだ。食べてくれ。」


 バードマンは肉食類であり用意された食物はこの辺りで捕られる獣の肉であった。バードマン一族は食に関してかなり細かいようであり肉は火を通して味付けもされていた。デスフェルは皿によそられた肉をカトラリーで一口サイズに切り口に運んでいく。ドレイクもカトラリーで一口サイズに切って口に入れた瞬間驚いた。その表情にデスフェルは微笑んだ。


 「どうだ、うまいだろ。我が一族は食を極め生活のほとんどを食に費やしている。」


 「たしかにうまい・・・

  これほどの知識がありながら何故ハーピーと対立している?」


 デスフェルは渋い表情をするとカトラリーを置き、話を始めた。それは数年ほど前の事だ。ハーピーよりバードマン一族に和平の使者が送られてきた。だがそれは和平の使者ではなく、殺戮部隊であった。


 「白旗をあげ和平を語る奴らを俺達は受け入れた。だが奴らの真の目的は我が一族の崩壊であった。奴らは我が国に火をつけ次世代を担う一族の子らを惨殺した。それだけに飽き足らず厚い黒雲を創り天光の光りすら奪い去った。」


 デスフェルは怒りに満ちた表情で語っていく。国を追われたバードマン一族は現在この洞窟でひっそりと生活している。もちろんいつまでも隠れているわけではない。ハーピー殲滅作戦の準備は整っていた。先だってドレイクとの激突はデスフェルが周囲を偵察していた時にハーピー一族と間違えての襲撃だった。


 「あの時はすまなかった。あそこには殲滅作戦の集大成が設置されている。ハーピー一族に知られるわけにはいかなかった。まあ、あの出会いが今を築いているのだがな。」


 デスフェルは酒を飲み干すと側近のバードマンが酒を注いだ。ドレイクも酒を飲み干すとバードマンが酒をグラスに注いだ。デスフェルは殲滅作戦をふたりに語った。


「そう遠くない未来に大掛かりな作戦は実施される。お前達の戦闘力は我ら一族に引けを取らない。俺達からお前達に与えられるものは何もないのかもしれん。それでも力を貸してくれ。」


 「そう言われると俺も断れんな・・・いいだろう、共に戦おう!」


 デスフェルとドレイクは酒を酌み交わすと友の契りを交わした。それからほどなくしてドレイクとリナはデスフェルと共にハーピー殲滅作戦を実行する為に洞窟より行軍を開始した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「タカちゃん!あんまり走っちゃあ駄目だよ。」


 意識を取り戻しすっかり元気になったタカヒトはハーピー達と仲良くなっていた。わりと人見知りをするタカヒトだったがハーピーの子供達のあどけない表情が心の距離を縮めたのかもしれない。てんとはバードマン一族の襲撃に備え防御を固めるようにハルピュイアに伝えた。ハルピュイアはてんとのアドバイスを受けながらスカイハイランドの守りを固める工事を急ピッチで行っている。鉄壁の守りだと豪語していたハルピュイアであるがてんとの細かい調査にその穴がいくつか見つかった。神の使いであるミカの連れに敬意を表したハルピュイアはてんとを防衛相談役にしてそのすべてを任せた。タカヒトはというと幼いハーピーの子供達と楽しく遊ぶ毎日を送っていた。


 「僕たち今度バードマンから一族を守る為に遊撃隊を結成したんだ。だから仲間になってほしいんだ。一緒に闘おう?ねっ、いいでしょ?」


 「遊撃隊?・・・よく分からないけどいいよ。」


 喜ぶ子供達にタカヒトは笑顔を見せた。幼い子供達が紛争に借り出されることなど許されるわけがない。遊撃隊の意味こそタカヒトは分からなかったがこの子達だけでも自分が守らなければならないといままで思ったこともない感情がタカヒトの中に芽生え始めた。子供達との約束を交わしたタカヒトをミカは嬉しそうに見つめていた。

 それから数日経った頃、バードマン一族がハーピー殲滅すべく行軍を開始したとの情報をハルピュイアは得た。上空を浮遊するスカイハイランドは地上のどの位置からでもその姿を確認することが出来た。逆に言えばスカイハイランドに向かってくる外敵を即座に発見し、迎撃出来る。バードマン一族がどんな策を練ろうともハーピー族に気づかれずにスカイハイランドへ辿り着くことは不可能であった。ハルピュイアは迎撃準備を進めるように部下に指示した。てんとのアドバイスにより死角となっていた数箇所のポイントを防衛壁で固めることでスカイハイランドは完全な要塞と化していた。


 「我らには神の使者であるミカ様がおられる。バードマンがどのような手段で攻めてこようとも我らの勝利は必定!」


 ハルピュイアの言葉にハーピー達は勝鬨をあげた。だが直後、バードマンの動向を監視していたハーピーが飛来してきた。


 「バードマンが地上より一斉に飛び立ちました!」


 「よし、アエロー、オーキュペテーは迎撃に

  ケライノーとポダルゲーは防衛戦線を固めよ。」


 ハーピー一族最強戦士達を筆頭にハーピー達は迎撃行動に出ていく。バードマン達は一箇所からの攻撃を仕掛けてくるところを見ると乾坤一滴の戦術であると察したてんとは防衛戦線を前へ前へと前進させていくハルピュイアに疑問こそ感じなかった。バードマンの戦術に対抗するにはハーピー達も一箇所への戦力の集中が課題となった。スカイハイランドは広大な大地からなっておりほかの防衛基地にいたハーピー達も応戦に向かうためにその場から離れていった。ハーピーとバードマンが激突している正に反対側ではスカイハイランドへと潜入してくる影があった。


 「これは想像以上に手薄になっている。さすがはドレイクだ。」


 「そうかい。まあ、ある奴の戦術を真似たんだがこれほどの成果とはうれしいぜ。」


 「ほんと誰もいないわね。」


 バードマンの別動部隊としてデスフェルとドレイク、リナはスカイハイランドに降り立っていた。草木の生い茂るその大地は地上とはまるで別世界であった。辺りを見渡すと防衛基地らしき建物があるがそこには誰もいなかった。警戒しながらも歩いていくと簡単にフォフィーナで覆われたハーピーの居住スペースに辿りついた。布で覆われた建物にはハーピーの子供達が隠れていた。


 「バードマンが来た・・・タカヒトさんに伝えよう。」


 「よし、お前が行ってこいよ。俺達で奴らを監視している。」


 子供遊撃隊は気づかれないように行動していく。子供のハーピーはその翼がまだ成長していない為飛行することはできない。額に汗をかきながら走っていく。


 「ハァハァハァ・・・タカヒトさん・・・大変です・・・」


 別動部隊の存在を知ったタカヒトはミカを連れてハルピュイアのもとへ伝えに行った。しかしハルピュイアはバードマンの戦力が思った以上に激しくこの場を離れるわけにはいかないようだ。タカヒトとミカはハルピュイアの指示によりてんとを連れて別動部隊を迎撃する行動に出る。


 「ところでデスフェル、潜入したはいいがこれからどうするんだ?」


 「もちろん背後からハーピーどもを叩く。挟み撃ちにする。」


 「挟み撃ちって私達三人ではちょっと無理があるんじゃないのかしら。」


 「だからこそリナに来てもらったのだ!」


 不思議な顔をするリナにデスフェルは話を続けた。リナの持つ雷撃はハーピーに対してかなりの効果があるらしい。実は同じ飛行亜人種ではあるが弱点は異なる。ほとんどの攻撃に対して絶対的な耐久性を誇る彼らであるが唯一の弱点は・・・・


 「我ら一族は炎に対して、

  ハーピー族どもは雷に対して致命的なダメージを負ってしまう。」


 デスフェルがリナの雷撃に対して無傷だった理由がはっきりした。デスフェルはハーピーに対して唯一ダメージを与えることができるリナの雷撃を中心にドレイクと共に挟み撃ちをかければ必ず勝利を得られると確信していた。納得したドレイクがふと視線を建物に向けると動く影が映った。ゆっくり近づいてその影を掴むとハーピーの子供だった。


 「くそっ!離せよぉ~、離せ!」


 「デスフェル、この子供達どうする?」


 「ガキとはいえハーピーの戦士になる子供だ。殺す!」


 「うえぇ~~ん、いやだぁ~よぉ~~~。うわぁぁ~~~ん」


 ドレイクに首根っこを掴まれて泣き叫ぶ遊撃隊の子供達にデスフェルは冷酷な言葉を浴びせた。鋭い爪を光らせるデスフェルを制止したリナはドレイクに捕らわれている遊撃隊の子供達に大地の鞭で縛ると建物の柱にくくりつけた。泣いている子供達には悪いがこれしか子供達を守る方法がなかった。デスフェルは気に入らなかったようだがリナに促されてほどなく彼らはその場を去っていった。デスフェル達はハルピュイアのいる本陣の背後にまで近づいていた。本陣では慌しく動きまわりハーピー達の姿が見えた。


 「ここからリナの雷撃で牽制しながら一気に本陣を叩くぞ!」


 デスフェルの言葉にリナの身体が牡丹色に輝くとその両手からほとばしる雷撃が放たれた。本陣を焼き尽くす勢いの雷撃はその直前で桜色の壁に阻まれた。デスフェルは驚愕したがリナとドレイクは目を見合わせた。本陣には明らかにミカがいると察したからだ。それはミカ達も同様だった。


 「てんと、この雷撃って・・・。」


 「うむ、どういうわけか知らんがどうやらリナはバードマン側にいるらしいな。」


 「どうするの?」


 「別動部隊の排除と真相追及をする。行くぞ、タカヒト、ミカ!」


 ミカのサクラリーフを展開しながらてんと達を連れて雷撃の放たれた方へと走っていく。


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