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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
151/253

最初のブロック その名はファースト

 「ブロックに数分で辿りつく。準備はいいか?」


 モニターを確認するとドレイクが皆に言った。タカヒトは装備を確認するとドキドキしながら到着するのを待っていた。静かにスピードスターが駅の止まるとタカヒト達は駅ターミナルに出た。割と狭く小さなターミナルで人影もまばらだ。ターミナルを出てもやはり人影はあまりなく取れかけた看板には「ファースト」と書かれていた。ここがキングダムシティから遠く離れたブロック、ファーストである。天道はキングダムシティを中心にいくつものブロックが周囲を取り囲んでいる。その外側にタカヒト達がいた修理工町やお花の家がある。ブロックに入ることが天道へ入ったと考えていいだろう。


 「ここからが本当の戦いになるだろう。気を引き締めていくぜ。」


 目的はこのファーストに存在するオーブを身体に吸収すること。天道軍や地獄の猛者に遭遇した時に共鳴石を手に入れられれば幸いなのだが吸収を第一と考えて行動していくとドレイクは言った。駅近くにいた数少ない天道人から情報を得るとドレイクの愛車モービルウォーカーに乗り込み駅を離れ町へと向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「まったく、あなた方は仕事をサボっていたのかしら?破壊神七十二布武の侵入を許すとは・・・状況はどうなっているのかしら?」


 「現在、破壊神七十二布武は各ブロックを進行中です。もっとも接近している者は第一位のバアルで次に第四位のガミュギンです。」


 キングダムシティに戻っていた不機嫌なピサロの問いかけに統括者のひとりが答えた。統括者は天道を統括する者達で五人いる。その昔、徳寿や先代破壊神、ハデスがその職についていたが現在ではピサロの部下が職を遂行していた。統括者の下には五十名の管理者。その下に百名の監視者がいる。それらの頂点に創造神となったピサロが君臨している。


 「バアルとガミュギンね・・・結構厄介な相手じゃないの。」


 「お言葉でございますが我らにしてみれば取るに足らない存在でございます。」


 「あら、勇ましい事。私は長旅で疲れているから後のことは頼みましたわよ。」


 「御衣!」


 そういい残すとピサロは席を外した。残された統括者達は管理者に指示すると監視者にも命令はすぐに通達された。与えられた命令はシンプルにして明確なものだった。


 「破壊神七十二布武にキングダムシティの土を踏ませるな。」


 この命令はすぐに実行された。自室でお茶を楽しむピサロが窓の外を眺めると数十万の兵士達が破壊神七十二布武の迎撃に行軍を開始していた。笑みを浮かべ椅子に腰を下ろすとピサロは数冊の本を読み始めた。本を読みながら地図に目を向けると何かを目で探している様子だったがそれが何を探しているのかは誰にも分からない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「おい、あれじゃねえか?」


 「ちょっと、赤玉。紫玉も白玉も僕の意識の中にいるんだよ。赤玉も大人しく意識の中に入りなよ。」


 「バカ野郎!俺様のモットーは自由であれだ!何人も俺様から自由を奪うことなどできねぇぜ!」


 タカヒトの言う事など聞く耳も持たずに赤玉はドレイクの隣でナビゲーションをしていた。ご機嫌な表情で運転するドレイクの隣で赤玉は嬉しそうに飛び回っている。


 「もう・・・言う事を聞かないんだから!」


 「しょうがないよ、タカちゃん。でも赤玉ったら本当に嬉しそうね。」


 「うん・・・紫玉も白玉も一緒に外に出たら?」


 (私はタカヒトの意識の中で十分だ。いろいろと整理したい事もある。)(紫玉)


 (そうだよ、タカヒト。僕達は赤ちゃんみたいに子供じゃないのさ。)(白玉)


 タカヒトは色玉達にもいろいろな考え方や生き方があるのだと知った。いままでタカヒトは赤玉達のことを深く考えたことがなかった。もちろん時には相談をしたり考えを聞いたりしてきてはいたがそれは戦いのためのものであった。


 「僕はいままで色玉の事を理解していなかったのかもしれない。」


 「うん?何か言った?」


 ミカの問いかけにタカヒトは首を横に振ると笑みを浮かべた。走るモービルウォーカーの風を浴びながらタカヒトは大切な事をひとつ学んだ。しばらくモービルウォーカーを走らせてかなり時間が経つが町らしき建物は見つからなかった。走っても走っても何も変わらない風景に少しドレイクは不機嫌になっていった。


 「ちくしょう・・・どこまで行っても何もねえぜ!」


 「まったくだ。どうやら偽情報を掴まされたらしいな!」


 イライラの募るばかりのドレイクに赤玉が追い込みをかける。イライラが最高値に達したドレイクはモービルウォーカーを加速させた。シートに押し付けられるほどの加速にタカヒトは恐くなった。実はタカヒトはジェットコースターの類がまったく駄目でこの加速は恐怖そのものであった。隣にいるミカの手を握ると下を向いて目を閉じた。恐怖のあまり声をあげようとした瞬間、モービルウォーカーの速度が落ちていく。恐る恐るタカヒトが目を開けると遠くの方に城らしき建物が見えた。しかしその建物の上空には何かが飛び回って建物からは煙が上がっていた。


 「おいおい、トラブルか?

  ちょうどストレスも溜まっていたところだ。いっちょ、暴れっか!」


 モービルウォーカーを再び加速させると煙のあがる建物に向かっていく。近づいていくとその建物は城とも見える巨大な城壁に囲まれ窓らしきものは一切なかった。窓どころか出入口すら見当たらずにただ上空を恐ろしい姿をした魔物達が飛び回っていた。モービルウォーカーを止めると上空を飛び回る魔物達からもドレイク達の姿が見えた。一気に急降下する魔物達にドレイク達は身構えた。


 「おい、ストレス発散にはちょうどいい相手だな。」


 「フフフ、ごう慢な方ですわ。相手の力量も分からずに闘おうなんて愚かな。」


 「仕方あるまい。我ら破壊神七十二布武とは知らないようだ。」


 「ホホホ、城を落とす前の準備運動ってところですかな。」


 「言うじゃねえか!俺はドレイクってんだ。お前らは?」


 三匹の魔物達は声をあげて笑い出した。その後で彼らは名乗り始めた。グリフォンの翼を持つ豹顔の魔物はシュトリと名乗り、やはりグリフォンの翼を持つ犬顔の魔物はグラシャラボラスと名乗った。最後に三つの顔を持つドラゴンはブネと言うらしい。


 「なるほど、破壊神七十二布武、十二位、二十五位、二十六位が集まったってわけか。まあ、いい。ストレスの発散くらいはなるだろう。」


 「ほう、我らを知っての無礼か。死を持って償え!」


 グラシャラボラスは小石を拾うと瞬時にそれは粉となった。「この小石はお前達だ」といわんばかりのアピールであった。動揺したミカの前にタカヒトが守るように立つ。ドレイクは笑みを浮かべながら言った。


 「ふん、たいそうな力自慢のようだが小石は攻撃を仕掛けてこないからな。」


 ドレイクは極刀斬神刀を取り出すと刃先をグラシャラボラスに向けた。ほかの魔物は手を出す様子もなくドレイクとグラシャラボラスの一対一の戦いとなった。だがそんな一戦にケチをつける者がいた。


 「ちょっと、待ったぁ~!」


 赤髪に赤い瞳をしたタカヒトがドレイクとグラシャラボラスの間に割ってはいった。


 「おい、赤玉・・・どういうつもりだ?」


 「どういうつもりもこういうつもりもねえ!俺様がこいつをやる!!」


 「俺のストレス解消はどうする?」


 「ハッ!リナにでも慰めてもらいな!」


 「言うじゃねえか!・・・まっ、出所祝いだ。ここは譲るぜ!」


 ドレイクは斬神刀を振り下ろすとリナ達の待つ場所へと歩いていった。笑みを浮かべる赤タカヒトは準備運動をしながら身体をほぐしている。


 「犯罪者じゃねえぞ、全く・・・・まあ、そんなわけだ。おまえを倒すのはこの俺様だ。宜しく頼むぜ!」


 「愚か者共が!我が爆裂拳の餌食としてくれよう。」


 激怒したグラシャラボラスは腰を落とすと両手を返し握り締め腰の位置に置く。すると両腕がふたまわりほどデカくなり浮かび上がった血管がその破壊力を示していた。グラシャラボラスがニヤリと口元をゆるませた瞬間、赤タカヒトの懐に入り込むと両手の拳が襲い掛かる。だが瞬時に狂刀羅刹を盾のように広げた赤タカヒトは致命傷を避けたもののあまりの衝撃に膝下まで地面に減り込んだ。さらに連撃は続き防戦一方となる赤タカヒトの意識の中では主格であるタカヒトが心配していた。


 (赤玉、大丈夫なの?紫玉や白玉と協力して戦おうよ。)(タカヒト)


 「何言ってやがる。タカヒト、俺様はいままで遊んでいたわけじゃあねぇぜ。」


 (そのとおりだ、私達もタカヒトと同様に能力を高める事を考えていた。)(紫玉)


 (そうだよ、タカヒト。赤ちゃん、僕達の凄さを見せてあげよう。)(白玉)


 「けっ、言われなくてもやってやらあ!」


 赤タカヒトはグラシャラボラスの攻撃を受け続けながらも埋まった脚を地面から抜いていく。強力な打撃と俊敏な脚を持ってヒットアンドアウェーを繰り返すグラシャラボラスは赤タカヒトの攻撃範囲の外に常にいる。ダメージを受けずに相手にダメージを与え続けることこそグラシャラボラスの攻撃スタイルだ。その連撃は残像を残しながら二本の腕が数十本にもなり、狂刀羅刹を盾のように広げながらの防戦となっていた。赤タカヒトは少しずつ距離を詰めながらグラシャラボラスの攻撃を受け続けているが次第に変化が見られていく。狂刀羅刹を盾から鋭い突きに特化した直刀に変化させるとグラシャラボラスの連撃に刃先を合わせていく。グラシャラボラスの連撃の軌道を狂刀羅刹の刃先で少し変えることで直撃を避けていく。


 「なかなかやるな。だが爆裂拳はこの程度ではないぞ!」


 グラシャラボラスの打撃はさらに速度と威力を増して赤タカヒトに襲い掛かる。それに反して赤タカヒトは狂刀羅刹を腰に吊るした鞘におさめると今度は両腕で連撃の軌道を変えていく。両腕から左腕一本になり更に左手の指一本で軌道を変えていく。必死の形相で爆裂拳を放つグラシャラボラスとの距離も次第に詰められていく。懐に入り込んだ赤タカヒトは最後の爆裂拳をかわすと渾身の左拳でグラシャラボラスの内臓をえぐるように突き刺した。


 「グフッ・・・我が・・・爆裂拳が・・・」


 グラシャラボラスはうずくまるようにその場に倒れ込んだ。赤タカヒトは意識のないグラシャラボラスを見つめながら言った。


 「剛拳だけで勝てるほど戦いは甘くはねぇぞ。おまえは昔の俺様によく似てやがる。修行して出直してこい。いつでも相手をしてやるぜ!」


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