合体という名の最強兵器
「・・・・リミッター解除 神光!」
カイザーは神々しい光を身体中から放つとタカヒトとミカ、てんと達に襲い掛かった。そのおびただしい光の雨は部落の建物すべてを貫き破壊していく。瞬時に状況を把握したミカは風の防御壁を最大限まで引き上げたがそれすら貫いてきた。だがてんとの創りあげた強固な防御シールドにより直撃は免れていた。ホッとしたミカの視線の先には光の雨に貫かれ意識が朦朧としているタカヒトの姿だった。
「タカちゃん!!」
着地した瞬間を狙っての攻撃に防御もままならず神光が直撃したタカヒトは意識を失いそのまま地面に倒れ込んだ。蒼白のミカが倒れているタカヒトの元へと走って向かおうとした瞬間、てんとが静止した。
「待て!ジャスティスがくるぞ。」
ミカが上空に目を向けるとカイザーの隣にジャスティスがいた。いくぶん負傷は負っているようだがそれを問題視しない勢いでジャスティスは地上のミカとてんとにデスパレス重力砲を浴びせた。ミカとてんとは立っていることも叶わず地面に這い蹲るように倒れ込んだ。
「なんだ、この重力は?・・・今、カイザーが光の雨を出せば・・・・」
てんとの不安は的中した。神々しい光がカイザーを包んでいく。「もはやこれまで」と諦めた。ミカもタカヒトを失い、その瞳から生気は感じられない。ただ呆然と死を受け入れようとしている。
「・・・・今度また・・・タカちゃんに会えるかな?」
そしてカイザーの光の雨は放たれた・・・。死を受け入れた二人にとって残酷とでも言うべきか光の雨はスローモーションのように近づいてくるとミカは瞳を閉じた。だがミカ達の光の雨は降りかからなかった。
「ミカさん!しっかりして!」
閉じた瞳を開けると目の前にタカヒトが傘のように変化させた羅刹で光の雨からミカ達を守っていた。神光のダメージか血が流れている左腕を押さえながらミカに問いかけた。ミカは重力に押し潰されて身動きはおろか声をあげることも出来ないが涙を流していた。
「ミカさん・・・・許さない・・・」
ミカが今まで見た事もないタカヒトの怒りに満ちた表情が上空を浮遊するカイザーとジャスティスに向けられていた。タカヒトは両腕の装甲を交差させると羅刹の刃が渦状のユニコーンの角に似た形状に変化した。膝を曲げると上空へと飛び上がる。
「デスパレス重力砲・・・故障・・・」
「右腕の砲筒が破壊されたせいか、
重力影響範囲がかなり縮小されている。残念だ。」
戦況を分析しているカイザー達にタカヒトが接近してくる。カイザーは光の雨をタカヒトの頭上へと降らせるが羅刹でそれらの軌道を変えてかわしていく。カイザーの懐に入った瞬間、タカヒトの身体に異常な重圧が圧しかかった。かわすことも防ぐことも出来ずにタカヒトは地上に落ちるとその身体は地面に減り込んでいった。
「ミカ、タカヒトを援護するぞ!」
重力の影響範囲から解放されたミカとてんとはデスパレス重力砲を放つジャスティスに与一の弓矢とガトリングガンで応戦するがカイザーの光の雨にさえぎられ防戦一方となってしまう。風の防御壁で光の雨を防いでいるミカの目に地面に減り込んでいくタカヒトの姿が映った。 タカヒトの身体が完全に地中に沈んでいく。その光景を楽しんでいるジャスティスが言った。
「ふっ、はっははは
どうだ、絶望の重力は?このまま押し潰してくれるわ!」
「・・・・お前、機械のくせに警戒センサーとかないのか?」
「! なっ、何!貴様いつの間に? グオッ!」
いきなり斬りつけられたジャスティスは致命傷を避けたものの見覚えのある姿に動揺している。リナの大地の鞭がカイザーに襲い掛かると光の雨も止んだ。上空から降りてきたドレイクとリナはミカ達のいる場所に着地した。ドレイクは減り込んだ地面の方を見つめると言った。
「タカヒト、はやく上がってこい!」
「待って!あの重圧を受けたタカちゃんは・・・!」
驚愕したミカの目に映ったのはほぼ無傷のタカヒトが地面から這い上がってくる姿だった。タカヒトのマテリアルフォースは細胞の活性化であり自らの治癒も可能である。歩いて近づいてくるタカヒトは心配するミカに笑顔で応えた。
「タカヒト、お前はカイザーの相手をしろ。ジャスティスは俺がやる。アイツには戦闘中に逃げられたからな!」
「ちょっと待て、ドレイク。ここは皆で総攻撃を・・・」
「てんと、ここはふたりに任せましょう。
ドレイクはタカヒトの修行の成果が見たいのよ。あっ、そうそう タカヒトの徳の水筒を取り戻して置いたから良かったら使って。」
リナは徳の水筒をタカヒトに手渡した。リナはミカを連れてユラの待つ高台へと歩いていった。心配しながらもドレイクとタカヒトを信じて、てんともリナとミカの後をついていった。
「ふん、我らから逃れられると思っているのか!」
左腕の砲筒からデスパレス重力砲を放出しようとしたジャスティスにドレイクの焔の刃が襲い掛かる。斬撃をかわしたジャスティスに代わりカイザーが神々しい光に包まれると渦状のユニコーンの角に似た形状をした羅刹がそれを阻止した。
「おいおい、俺達を無視して女のケツを追いかけるのはちょっと妬けるな。これはな、タカヒトの試験でもあるんだ。わかってくれるか?タカヒト、試験に合格したらいいものをやるぜ。」
「えっ・・・いいもの?」
「ふん、試験だか保険だか知らんがその傲慢さが命取りだ!」
「まあ、そう言うなよ。タカヒトもがんばっているんだぜ。俺としては応援してやりたいんだ。それに・・・・まあ、いいや。行くぜ、タカヒト!」
ドレイクは焔の刃を手にジャスティスに向かって飛んでいった。デスパレス重力砲の標準を合わせたいジャスティスであるが甲斐のくずきりで風を操りながら飛んでくるドレイクの素早い動きについていけないようだ。カイザーもまたジャスティスの援護に向かうが再び飛び掛ってきたタカヒトが阻止に向かう。
「戦闘力分析・・・戦術検索・・・・・・・確定、攻撃開始!」
カイザーから神々しい光が放たれると光の雨がタカヒトに降り注ぐ。羅刹の刃を傘のように変化させると光の雨を受けながら地上に落下していく。着地したタカヒトは光の雨を受けてはいるがその勢いは次第に増加しつつあった。光の雨は広範囲のターゲットに有効的な攻撃技であるがその範囲を狭める事で集中豪雨を創り出す。戦術を変えてきたカイザーの攻撃は完全に優位に立った。一方的に攻めるカイザーの姿をジャスティスは笑みを浮かべて見ている。
「どうやら試験とやらは残念な結果になったな。」
「そう言うのはまだ早いってもんだ。それにお前はそんな事を気にしているほど余裕はないと思うんだが・・・・違うか?」
ドレイクの焔の刃は素早くジャスティスの身体を切り刻んでいく。焔の刃はジャスティスの業を吸収した事で鋭い刃を持つ日本刀のように形状を変えていた。鮮麗された刃にドレイクの素早い抜刀術がジャスティスとの戦闘力の差を更に広げていた。ジャスティスは初めての敗北を味わうのにそう時間は掛からなかった。ドレイクから逃走するかのようにジャスティスは地上に降下すると破壊された物陰に隠れた。ドレイクは追い討ちはかけずに地上にいるタカヒトを見つめていた。防戦一方のタカヒトはジリ貧状態が続いている。
「このままだと・・・・そうだ!」
光の集中豪雨にタカヒトは羅刹の傘で受け止められずに地面に膝をついた。身体を丸めたタカヒトの目に映ったものは腰に吊るしてある徳の水筒だった。光の集中豪雨を受けながらタカヒトは徳の水筒を握ると蓋を外して一口飲んだ。
瞬時にタカヒトの身体が金色に輝き始めるとその変化は羅刹にも及んだ。光の集中豪雨を受けている傘から金色の糸が無数に現れるとそれは光の集中豪雨の間を縫う様に猛速度で駆け上がっていく。向かってくる金色の物体にカイザーは分析が間に合わない。
「分析不能・・・・物体・・・糸?・・・!
光波・・・属性一致。金色光・・・・ブバッ!」
同じ光の属性である金色の光の雨はカイザーの身体を貫いていった。白い体液を口から吐きながらカイザーは地上へと落下していくと破壊された建物の間に落ちた。金色を失ったタカヒトの元へ上空からドレイクが降りてきた。
「よくやったぞ・・・
まあ、最後のアレは少しインチキっぽかったが試験は合格だ。」
「ありがとうございます。ドレイクさんの修行のおかげです。」
「よせやい、照れるじゃねえか・・・さて、リナ達のところに行こうぜ。」
頭をかきながらドレイクはタカヒトを連れて高台へと歩いて行こうとすると傷だらけのジャスティスが立ち塞がった。唯一の武器である左腕の砲筒も落下により破損していた。動く事もままならず、仁王立ちしているジャスティスにカイザーがゆっくりと浮遊しながら近づいてきた。カイザーもまた金色の光の雨と落下によるダメージが酷くジャスティスのもとに辿り着くと膝をついて倒れた。
「もはや勝負の決着はついている・・・・」
「ゴホッ、・・・・それは勘違い・・・だ・・・
我らの真の能力を・・・見せてやろう。」
倒れたカイザーは神々しい光を放つとジャスティスも同様な光を放った。倒れたカイザーの背中にジャスティスはうつ伏せに倒れこむと光が重なり合いそれと同時に二人の身体も融着していく。眩い光にドレイクもタカヒトも腕で目を覆い隠すと次第にその光はおさまっていく。 目を開けたふたりの前にはカイザーともジャスティスとも違う第三の人物が現れた。
「我が名はマスティア。
悪魔界最強の力と神の意思を受継ぎし者。お前達を死へと誘おう。」
マスティアと名乗る者は神々しい光を放ち出した。それがカイザーとジャスティスの合体された真の姿であるとドレイクは察した。そしてその力も・・・・。タカヒトと共に戦闘体勢を整えるとマスティアがゆっくりと動きだした。光を放つ以外には何も変化は見られないマスティアだがその無表情な顔からは何も読み取れない。先に攻撃を仕掛けたのはドレイクであった。甲斐のくずきりを取り出すと一気に間合いを詰めマスティアの首元を斬り付けた。
「何!」
手応えを感じたがマスティアの首は傷ひとつついてなくドレイクの腕を掴むとそのまま放り投げた。驚いたのはドレイクである。マスティアはカイザーのように小柄でもなくジャスティスのように大柄でもない。身長はドレイクよりも少し小さい程度のマスティアが片手で大男を簡単に放り投げたのだ。甲斐のくずきりから焔の刃に持ち替えたドレイクは更に驚愕することとなる。焔の刃は業の多さによりその強度・形状を変化させる刀であり業の影響を受けていない形状は小刀である。そして今焔の刃は小刀のままであった。
「何故だ・・・・奴には業がないのか!」
「我は神の意思を受継ぎし者。神の鉄槌を受けよ。」
マスティアの双肩に背負われている巨大な砲筒から神々しい光で満たされるとドレイクとタカヒトは防御体勢を整えた。しかしマスティアからはなんら攻撃は仕掛けられない。それどころか砲筒の光は消えてしまった。ドレイクも不発と警戒心を解いた瞬間、地中から光の柱がドレイクの左肩を貫いた。
「ぐがあぁぁ~~!」
左肩から大量の血が流れドレイクは地面に叩きつけられた。激痛に立つこともままならないドレイクにタカヒトが近づくがマスティアがそれを許さない。片手を差し出すとタカヒトの身体を重力が支配する。立つ事もままならない状態でマスティアが歩み寄ってくると地面に這い蹲るタカヒトの腕にひとすじの光が突き刺さった。
マスティアは動けないタカヒトの手足に次々と光の刃を突き刺していくと次第に血塗れになっていく。無表情のマスティアはタカヒトへの攻撃の手を緩める事もなくタカヒトがどんなに悲鳴をあげても淡々と突き刺していく。無情の攻撃に悲鳴が鳴り響くと気絶していたドレイクが意識を取り戻した。
「・・・・タカヒト・・・・くそったれが!」
蒼白のドレイクは膝をガクガクさせながらも立ち上がるとそれに気づいたマスティアはタカヒトへの攻撃を止めた。マスティアは指先をドレイクに向けると光の刃を放つ。右脇腹を貫くとドレイクは膝を地面につき口から血を吐いた。完全な勝利を目の前にしてもマスティアは表情を変えることもなく淡々と攻撃を仕掛けてくる。
「血が少ねえ・・・・」
意識を失いかけているドレイクはタカヒトに目を向けると多くの血を流してすでに気絶していた。無傷のマスティアは攻撃を緩めることもなく淡々と光の刃がドレイクの身体を斬りつけていく。
「容赦ねぇな・・・どれ、アレをやるしかねえか?気が進まねぇけど・・・。」
ドレイクは焔の刃と甲斐のくずきりそれと呉羽の一振りを手にした。すると血が流れている右脇腹に左手を押し込むと激痛に顔が歪んでいく。取り出した左手は血に染まっていたがドレイクの顔には笑みがこぼれていた。
「ぐうぅぅ~~・・・・いてぇ~なんてもんじゃねえな・・・おっ、お前も合体したんだよな?だったら、俺が合体しても文句は言わねえよな?特別に見せてやるよ・・・・俺が求めていた最強の刃を!」
ドレイクは震える手で小刀の形状をした焔の刃を甲斐のくずきりの柄の端部に取り付けた。そして呉羽の一振りで柄を切る。バッサリと開いた甲斐のくずきりの柄の中に血だらけの手の平に握られていた灰玉と茶玉、呉羽の一振りを入れた。
切り裂かれた柄が閉じていくとドレイクの手にした刀はまるで生きているかのように姿を変えていく。刃はそれほど長くはなく刃は幅広でどちらかというと鉈に近い形状をしている。ただほかの刀と違う点は鍔の部分に六本の鋭い刃が柄を持つ方向に向かって突き出ているところだ。これでは柄を握ると手首付近に突き刺さり武器としては扱えない。
「なるほど・・・・古文書通りの形状になったな。」
ドレイクは柄を握ると六本の鋭い刃が手首に突き刺さった。ドレイクの表情は歪むが突き刺さった刃からは血が滴り落ちることはなくそれどころか刀身がみるみるうちに赤く染まっていくのが分かった。
「ふう~・・・意識が遠のきそうだ・・・極刀斬神刀の用意は出来た。お前達の命が尽きるか、俺の命が尽きるのか・・・・神のみぞ知るってところだな・・・・ 」
血で赤く染まる斬神刀の柄を握り向かっていくとそれを迎撃する為マスティアは双肩の巨大な砲筒から神々しい光を放つ。それはドレイクの身体を貫いた神の鉄槌だった。しかしドレイクは手にした斬神刀で神の鉄槌を切り刻むとその先にいるマスティアに走っていく。
「ならば、神の怒りを与えてやろう。」
マスティアは両手を差し出すとドレイクは重力に足を止められた。神の怒りを受けたドレイクにマスティアから容赦のない光の刃が放たれていく。笑みを浮かべたドレイクは斬神刀を振り上げると光の刃は撃ち落された。更に斬神刀を地面に突き刺すとドレイクの動きを止めていた重力のすべてを打ち消した。これにはマスティアも動揺した表情を浮かべている。
「今のは誤算だったようだな・・・時間もない、サッサと決着を着けるぞ!」
顔面が蒼白しているドレイクは腰を落とすと剣先は後ろ下方を向き正面からみると剣が見えない脇構えの体勢を取った。最後の攻撃を仕掛けるドレイクにマスティアは双肩の巨大な砲筒から神の鉄槌と呼ばれる神々しい光を放った。それと同時に神の怒りと呼ばれる重力砲も放つと更に自らも光の刃を両手に持てるすべての力をぶつけてきた。
「互いがすべての力を掛けて勝負とは・・・いいぜ、俺はそういう戦いが好きなんだ。生と死を賭けて・・・いざ、尋常に勝負!」
ドレイクは腰を落としたまますり足で前進していくと向かってくる神の鉄槌も神の怒りも無視してそれらをすべて身体で受け止めた。身体中から大量の血が流れるのを感じながらもドレイクの鋭い眼光はマスティア本体しか見えていない。脇構えから水平に刃が振り抜かれるとマスティアも両手の光の刃を振り下ろした。マスティアの刃がドレイクの両肩の皮一枚を斬った。限界を感じたドレイクは片膝を地面についた。この状態でマスティアの追撃がくれば確実にやられる。だがマスティアは動こうとはしなかった。上半身を失ったマスティアの下半身は白い体液を流しながらその場に倒れた。上半身は下半身の後に大地に根をはったように立っていた。
「紙一重の勝負だったな・・・・さて、タカヒトを・・・・おっ?」
ドレイクはフラフラするとその場に倒れ込んだ。明らかに出血が多かったようで薄れていく意識の中で何者かが近づいてくるのが分かった。斬神刀の柄を握る力もなくもはや動けないドレイクは諦めるしかなかった。それでも近づいてくる者に一撃浴びせられればタカヒトだけは助けられるかもしれないと斬神刀の柄を握った。だが近づいてくる何者かはドレイクの斬神刀の柄を持つ手を握るとドレイクの頭を上げて膝の上に置いた。
「・・・・何故、ここに・・・・?」
「ミカ達はユラのいる高台に向かったわ。
来て良かった・・・・やっぱり心配だったから。」
「そうか・・・タカヒトは・・・・?」
「大丈夫、意識はないけど無事よ。」
「そうか・・・・ひさしぶりの膝枕もいいものだな。」