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未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
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アレスのプライド

 ジャスティスは両手を広げると神々しい光を放ち始めた。脅威を感じたドレイクは和尚とルサンカにランドタワー内部に避難するように伝える。力及ばずと和尚は察するとルサンカと共に内部に避難して残ったリナとドレイクはジャスティスを見上げている。


 「悪いな、リナ・・・俺と一緒にいてもらうぜ!」


 「あら?らしくないわね。

  いつもなら一緒にいるのが当たり前みたいな事を言うくせに。」


 「ハッ、言うねぇ~・・・・いい女になったな、お前!」


 ドレイクは焔の刃を手にすると腰を落とした。ジャスティスが神々しい光を放つとドレイクは焔の刃でそれらを打ち飛ばした。自ら放った神々しい光を浴びたジャスティスは怒りにも近い表情をしている。


 「つまらない攻撃をしてんじゃねえぞ!俺を倒したかったら近づいてこいよ。」


 激怒したジャスティスはドレイク達のいるランドタワーの屋上に降り立った。


 「覚悟する必要がある。私の直接攻撃は恐怖そのものだぞ!」


 「ほう、それは楽しみだな。はやく見せてくれよ。」


 「言われずとも・・・・見せてやろう!」


 ジャスティスは両手に光の刃を造り上げるとドレイクに襲い掛かった。ジャスティスはスピードも力もすべてがドレイクを上回っていた。防戦一方のドレイクであったがリナは別段手を貸す事もなく状況を見守っている。ドレイクの必死の形相に気を良くしたジャスティスは攻撃の手を緩める事もなく激しいものとなっていった。しかしジャスティスはドレイクの持つ焔の刃が変化していることにまったく気づいてはいなかった。


 「防戦一方ではないか!」


 「そう見えるか?・・・それは気の毒としか言いようがないな。」


 「・・・・!」


 ジャスティスが気づいた時にはすでに遅かった。ドレイクの手にした焔の刃は「冷淡」と形容する言葉が合っている鮮麗された日本刀のように見えた。ドレイクがその刃を見つめると囁いた。


 「これが貴様の業の形か・・・・さて、次に生まれ変わるとしたら何がいい?もちろん決められはしないがな!」


 動揺したジャスティスは距離を取ろうとするがドレイクは焔の刃を鞘に収めると一気に距離を詰めた。瞬時に距離を詰めたドレイクは焔の刃の柄を握り締めると居合い抜き抜刀術をやってみせた。刃の長さが読めないジャスティスは鋭い一閃に反応する事もできず右脇腹でそれを受け止めるしかなかった。ドレイクは焔の刃を引抜くと血払いして鞘に収める。


 「抜刀術奥義 瞬殺」


 白い液体が流れ落ち動かなくなった右腕を押さえながら再び浮遊すると左腕をランドタワーの屋上に向けた。するとジャスティスの左腕が機械音をあげながら巨大化していく。左肩が異常に盛り上がり巨大な砲筒が形成されていく。


 「この私をここまで苦しめた者はお前が初めてだ。褒めてやろう。」


 「ほう、そうなのか。ならばお前を初めて倒した者にもなってやろうか?」


 「リミッター解除!デスパレス重力砲!!」


 神々しい光がジャスティスを包むとその光は砲筒に集約されていく。デスパレス重力砲が放たれるとドレイクとリナの身体に異変が起こった。立っていられないほどの重力感が身体を押し潰そうとしてくる。膝をつき両腕を冷たい屋上の床に押し当てた。


 「ドッ、ドレイク・・・これは・・・?」


 「なるほどな・・・・デスパレス重力砲か・・・とんでもない技だぜ。」


 ドレイクの身体とリナの身体は重力に押し潰されていく。冷たい床に頬を押し付けてもはや抵抗など出来ない。そのランドタワーの内部では和尚とルサンカは天井がきしむ音に反応していた。


 「屋上で何かあったようじゃな。無事であればよいのじゃが・・・・」


 「ジャスティスのデスパレス重力砲が放たれたのだ。無事なわけがあるまい!」


 「誰!」


 ルサンカが和尚を守るように声の聞こえたほうを警戒するとアレスがゆっくりと歩いてきた。巨大な剣を手に笑みを浮かべるアレスに和尚が声をかけた。


 「お主は・・・・アレスじゃな?」


 「俺の事を知っているのか、じじい?」


 「知っておるとも・・・・地獄道の三獣士で天道の十六善神のひとり。その戦士がワシらに何の用があるというのじゃ?」


 「もちろんお話をするというわけではない。お前らを殺しに来たのだ!」


 アレスは柄を握ると巨大な剣先を和尚達に向けた。その言葉にルサンカは力王のベアナックルを握り精神を集中し始めた。力の入るルサンカの肩に和尚はそっと手をのせるとアレスに言った。


 「お主ほどの戦士が女の子と年寄りを殺めようとは堕ちたものじゃな。ワシならばドレイクやタカヒトら強敵との戦いを望むのじゃがな。やはりバカ力だけでは役不足というものか。」


 「うっ、うるさい!」


 「・・・図星じゃったか。」


 額から頬を流れる汗を拭うとアレスは上段に構えた。ルサンカは和尚を守ろうとするが笑みを浮かべながら「大丈夫じゃ」と和尚は言った。鬼の形相をしたアレスは距離を詰めると巨大な剣を和尚の頭上に振り下ろす。しかし和尚は持っている杖でその巨大な剣先の軌道を少し変えると床に剣先が叩きつけられた。激しい衝撃音が鳴り響き、床が陥没していくとアレスは剣先を持ち上げ和尚の胴体を真っ二つにするべく巨大な剣を水平に斬り回した。だが剣の軌道を確認すると杖先で巨大な剣を叩き落した。剣の軌道が変化しバランスを失ったアレスは剣に振り回され床に這いつくばった。アレスは気づいていないが和尚はアレスが斬り付けてきた時からその場を一歩も動いてはいない。現に和尚の後ろではルサンカが驚いた表情で立っている。


 「あてが外れたのぉ~・・・・ワシは和尚ではあるがドレイクに抜刀術を教えた師匠でもある。やはり今のお主ではドレイクはおろかタカヒトにすら及ばんようじゃの。」


 「ちっ、ちくしょう・・・・ソウルオブカラーさえあれば俺は誰にも負けないんだ!破壊神の持っていた黒玉、藍玉、瑠璃色玉も灰玉も茶玉も菜の花色玉もあるんだ!」


 「ほう、お主が灰玉と茶玉を持っておったか。」


 和尚の声など耳に届かずにアレスは床に両手を叩きつけ悔しがっている。和尚はルサンカに屋上の様子を見てくるように言った。ルサンカは急いで屋上への階段を駆け上がっていくとそこには苦しむドレイクとリナの姿があった。そして上空にはジャスティスの左腕辺りから神々しい光が放たれていた。


 「はっ、ははははぁ~

  死ぬ前の最後の言葉を聞いてやろう。言いたい事はあるか?」


 「・・・・ぐっ・・・・お前を初めて倒した者になってやるさ!」


 「ふん、へらず口を・・・最大重力をくらえ!」


 肺を潰されそうな重力にドレイクは意識を失いそうになった。苦しむドレイクの視線の先には心配そうに見つめるルサンカが立っていた。それを見たドレイクは驚愕した。視線を移すとリナが苦しそうに床に押し潰されそうになっている。ところがルサンカは重力を受けることもなく何が起こっているのか分からない表情すらしている。


 「そうか!・・・ルサンカ、奴の気を少し反らしてくれ!」


 ドレイクの必死の言葉にルサンカはうなずくと屋上に転がっていたレンガを見つけた。どうやらデスパレス重力砲により壁から剥がれ落ちたもののようだ。それを取り上げるとルサンカは渾身の力を込めてジャスティスに投げた。ルサンカのマテリアルフォースである肉体強化と手に装備した力王のベアナックルにより投げられたレンガの速度は重火器のそれを凌駕していた。レンガはジャスティスの砲筒に激突すると神々しい光は消えた。それにより重力から開放されたドレイクとリナは立ち上がると反撃を開始していく。


 「リナ、俺を奴の近くまで放り投げてくれ!」


 リナはドレイクの足に大地の鞭を巻きつけると一気に上空へ放った。勢い良く飛び上がっていくドレイクは鞘に収められている焔の刃の柄を握る。


 「抜刀術奥義 瞬殺!!」


 居合い斬りを浴びせるが紙一重でジャスティスはかわした。再び屋上に着地したドレイクやリナ、ルサンカを見てジャスティスは戦況を分析すると撤退を余儀なくされた。悔しい表情をしながらもジャスティスは飛び去っていった。


 「引き際も見事だな。敵ながら天晴れな奴だ!」


 ドレイクはルサンカに屋上に来た理由を聞いた。ルサンカは和尚の命で来た事を伝えるとドレイクは険しい表情をした。リナとルサンカを連れて下の階へと降りていくとドレイクの不安は的中した。ドレイクが階段を降りていくとアレスが和尚の身体を踏み潰していた。


 「てめぇ~!」


 烈火のごとく怒り狂ったドレイクは甲斐のくずきりを手にすると走り向かっていく。それに気づいたアレスは巨大な剣で迎撃行動に出た。巨大な剣を振り下ろすがドレイクはそれを簡単にかわすと甲斐のくずきりでアレスを吹き飛ばした。和尚を抱きかかえるとドレイクは言った。


 「大丈夫か、和尚?」


 「まったく年は取りたくないものじゃの・・・。」


 その言葉に安心したドレイクは後を追ってきたリナとルサンカに和尚の看病を任せた。抜刀術の達人であるが高齢も高齢であり更に持病を抱えている和尚の身体は激しい動きに耐えられなかった。ルサンカを見送った後で持病に倒れこむとアレスの優勢となったのだ。介抱されながらも和尚はドレイクに伝えた。


 「ドレイクよ、あの者がおまえの灰玉と茶玉を手にしておる。」


 「!・・・そうか・・・・・俺は運がいい。来るべき時が来たという事だな。」


 ドレイクは笑みを抑えられなかった。ドレイクの野望が叶う時がアレスという犠牲を糧に来たのだ。立ち上がるアレスは巨大な剣を振り上げた。ドレイクもまた構えをとるがその手には焔の刃とも甲斐のくずきりとも違う新たな刀を持っている。刀というよりは手術に使う刃物のようにも見えるほど細く小さなものだ。


 「貴様、俺をなめているのか?」


 「いや、いたって真剣だよ。これはよく切れるしな。」


 「くそっ!」


 アレスはドレイクとの距離を詰めると振り上げた巨大な剣をその頭上に振り下ろしたが床に巨大な剣先が減り込んでいく。第二斬へと移行するべく巨大な剣を振り上げるがそれよりも早くドレイクの刀がアレスの身体を斬った。「やられた!」そう感じたアレスだが痛みや斬られた事による熱さもない。ドレイクは笑みを浮かべアレスの前に立っている。


 「そっ、そんな攻撃など効くか!第二斬、喰らいやが・・・・・?」


 第二斬をドレイクに浴びせようと巨大な剣を振り上げた瞬間、アレスの身体が硬直して動かなくなった。どういうわけか声を出そうにも出ない。視力・聴力だけは正常に機能して呼吸は出来るが身体は動かない。


 「この刀は呉羽くれはの一振りといって神野国で外科手術を行う時に使われた医療器具なんだ。斬りつけると同時に麻酔効果で身体は動かなくなるんだよ。それでな・・・痛みも感じずにこうやって手を・・・・」


 「・・・・!!」


 驚愕したアレスが目にしたのはその身体にドレイクの腕がどんどん入っていく光景だった。しかし痛みも何も感じない。だがこの光景は見た事がある。それはアレスがタカヒトから色玉を奪い取った時の事だ。宝珠のリングを装着したアレスはタカヒトの身体の中にあった瑠璃色玉・黒玉・藍玉を奪ったのだ。アレスは察した。ドレイクが何故このような行動に出たのかを。


 「ほう、察したか?その通りだ。お前にあずけておいた俺の大切な色玉を返してもらおうと思ってな・・・おっ、あった!」


 ドレイクはアレスの身体から腕を取り出すとその手には灰玉と茶玉のふたつの色玉が握られていた。それをドレイクは胸に押し当てるとふたつの色玉は消えていった。ひと息ついたドレイクの顔は自信に満ちている。


 「そうだわ、タカヒトの水筒も返してもらおうかしら。」


 リナはアレスの腰に吊るしてある徳の水筒を取り上げた。


 「アレスは当分動けないがジャスティスの逃走した方向が気になる。タカヒト達のほうに向かって行ったからな。ルサンカ、和尚を頼む。リナ、行くぞ!」


 ドレイクはリナと共に屋上にあがるとランドタワーから飛び降りた。甲斐のくずきりを操りジャスティスの向かった方向へと飛行していく。ルサンカは和尚を連れてランドタワーの階段を降りていく。その場に残されたアレスは動く事も出来ずしかも圧倒的な戦力の差を見せ付けられた。ズタズタにされたプライドはどこに向かうのだろう・・・。


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