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未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
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ユラの涙

 ダゴンとハスターの援護を終えたカイザーとジャスティスは再び上空に上がると状況の進行を傍観している。そこに飛行艇が大都会上空に近づいてきた。飛行艇内部ではすでに戦闘体勢は整えられていた。ドレイクとリナ、タカヒトとミカ、それにユラとてんと、和尚とルサンカがペアを組む。降下したと同時に自動操縦となっている飛行艇は大都市から戦線離脱するようにプログラムされてある。ドレイクが皆に目をやると激を入れた。


 「ダゴンとハスター、そしてその背後にいるカイザーとジャスティスに警戒しろ!必ず無事に帰還するんだぞ・・・・んじゃあ、いっちょ行くか!」


 飛行艇からドレイクが飛び降りると地上に向かって落ちていく。それに続くようにリナもタカヒトもミカ、ユラ、てんと、和尚にルサンカが落ちていく。彼らの誰一人としてパラシュートの類を装備しておらず一気に地上に向かって落下していく。

 ドレイクは甲斐のくずきりを取り出すとそれを近づいてくる地上に向けて突き刺した。甲斐のくずきりから発せられた衝撃波は地面に激突すると同時に逆風がドレイクの身体に襲い掛かった。それによりドレイク達の身体は落下速度を急激に抑えられフワリと地上に着地した。その後をリナが着地してタカヒトもミカ、ユラ、てんと、和尚にルサンカの順に着地した。

 プログラム通りに飛行艇も戦線を離脱するように飛行を開始していく。そこでタカヒト達が見た光景は無残なものだった。そこにはタカヒト達が見てきた大都会の光景はそこにはなかった。崩壊しかけたビル郡、近代設備を誇っていた表通りは崩れ去っていた。人々の悲鳴はすでになく崩壊したビルの下敷きになり動かなくなっている者、ダゴンに踏み潰された部落から逃れられず絶命している者など至る所に動かない者達が倒れている。その光景を見てユラは膝をついて叫んだ。


 「どうしてこんなことに・・・

  争いは争いしか生まない事がまだ分からないのですか!」


 涙を流し地面に顔を埋めるユラに誰もが声を掛けられなかった。しばらくしてそんなユラに和尚が一言声をかけた。


 「気を落とすでないと言っても無理かの・・・誰しも心というものは変わりやすいものじゃ。お主にとって六亡星の裏切りは辛かろう。じゃが、まわりを見てみい。お主の事を心配する、助けてくれる大切な仲間が見えるじゃろ?

  お主はひとりではないのじゃよ。」


 涙を流しながらユラはまわりを見渡すとそこには掛替えのない大切な仲間がいた。ミカは膝をつくとユラにハンカチを手渡した。


 「悲しまないで・・・希望を失わなければ必ずいい方向に進むはずだよ。」


 「ユラ、泣くなら歓喜の涙がいいと思うぞ。」


 「そうね、そのほうがいいと思うわ。」


 「僕もそのほうがいいと思います。」


 「ガンバです、ユラさん。」


 「女を泣かせるとは許せんな。」


 「・・・・ありがとう、みんな」


 ミカの手を借りるとユラは何かが吹っ切れたように立ち上がった。ドレイクの作戦通りにタカヒトとミカはダゴンを攻略に向かい、後方支援としてユラとてんとも向かった。ドレイクとリナはハスターを攻略に向かうと後方支援として和尚とルサンカが向かう。


 「後ろに見え隠れする奴らの警戒も怠るな!」


 ドレイクはそう言い残すとリナを連れて上空を飛び回るハスターを倒す為にランドタワーへと走っていった。その後を和尚とルサンカが着いていく。タカヒト達も部落の破壊を楽しんでいるダゴンを発見すると走って向かった。ダゴンは六亡星の中でも巨大な身体を持つ。見上げるほどデカいダゴンにタカヒトは少し弱気になった。


 「うまくいくかなぁ~・・・」


 「タカちゃん、しっかりするの!ユラを助けるんでしょ?」


 「うっ・・・・うん!僕、やってみる。」


 ミカの激にタカヒトは精神を集中させていく。細胞を活性化させる事で身体能力が著しくあがる。タカヒトの両腕には前腕部を覆う篭手の様な形状の装甲が装着されてある。その装甲には小さな剣身が取り付けられており装甲内部に握りがある。一方、ドレイク達はランドタワーの階段を駆け上がっていた。


 「ねぇ、ドレイク。タカヒトに任せて大丈夫なの?」


 「ああ、問題ない。アイツは記憶を失っているかもしれねえがずば抜けたモンを持っている。それにアイツの持つ狂刀羅刹は身体能力に合わせてその形状を変化させていくんだ。攻撃力も相当凄い事になりそうだぜ!」


 「嬉しそうね。」


 「ああ、俺にとって最強の敵にも成りかねないんだけどな。」


 ドレイクの脅威にもなりかねないタカヒトは細胞を活性化させていくが徳の水筒のような変化は見られなかった。ただ狂刀羅刹には変化があった。装甲の小さな剣身が半月を描く様な刃に変わっていた。


 「てんと、見て!羅刹の形が変わっていく・・・」


 「恐ろしい刀だ。主の能力に合わせてその形状を変えていくとはな。」


 「ミカさん、てんとさん、ユラさんをお願いします。」


 タカヒトはダゴンを見上げ膝を曲げると一気に飛び上がっていく。ダゴンは近づいてくる物体が視界に入ったが警戒もなく破壊を楽しんでいる。タカヒトは左腕の装甲を振りまわすと半月を描くような形状をした羅刹がキラリと光った。悲鳴のような叫び声がダゴンから発せられると青い体液がダゴンから流れ落ちた。ダゴンは半人半魚の特徴をもつ亜人種である。腕力があり砲撃を受けても死なない強靭さも兼ね備え、毒に対しても仮死状態としかならない。その身体の表面を覆う鱗が剥げ落ちて体液が噴出していく。てんとの想像を超えたタカヒトの成長に驚いていた。


 「なるほど、ドレイクがタカヒトに任せた理由が分かる。ミカ、ユラを連れてダゴンの体液がかからない場所まで後退してからタカヒトの援護を行うぞ!」


 ダゴンの青い体液は物体を溶かす成分が含まれている為、てんと達は部落近くの高台まで後退していく。タカヒトはダゴンに一撃を喰らわせると再び地面に着地した。見上げるとダゴンは殺気に満ちた表情でタカヒトを見下している。警戒の必要性のない物体から生死を脅かす存在にタカヒトはなったようだ。ダゴンは右足を振り上げるとタカヒトを踏み潰した。土埃が舞上がりその場所をダゴンは両足で何度も踏み付けていく。生死を脅かす存在を完全に踏み潰したダゴンからは歓喜の雄叫びが発せられた。


 「タカちゃん!!」


 「むっ、・・・・大丈夫だ!心配ないぞ!」


 ダゴンが雄叫びをあげている足元では土埃の中でキラリと二本の羅刹の刃が光っていた。タカヒトが瞬時にダゴンの足元に接近すると両腕の羅刹の刃がダゴンの鱗にスゥ~と入っていった。再び羅刹の刃が鱗から離れると同時にタカヒトもその場を走り去っていく。断末魔のような叫び声をあげたダゴンは膝をつくとうつ伏せに部落を破壊しながら倒れた。

 タカヒトがダゴンの背中に乗ると羅刹の刃も形状を変化させた。装甲の外側に半月を描くように取り付けられていた刃は拳を覆うような突きに特化した形状へ変わっていく。ダゴンの脊髄を見下ろすと羅刹の刃を突き刺した。その刹那、神々しい光がタカヒトの視界に入ると瞬時にそれをかわした。タカヒトが上空に視線をうつすとそこにカイザーが浮遊いていた。


 「くっ、カイザーか!ミカ、ここから援護してくれ。私が奴を食い止める!」


 てんとは精神を集中すると身体を形成していく。手に持つガトリングガンで連続射撃しながらカイザーとの距離を詰めていった。ミカも精神を集中して与一の弓を引くと緑色の矢を放っていく。双方からの弾丸と矢の援護射撃にカイザーは神々しい光を放つことで回避する。ミカとてんとの総攻撃ではあるがカイザーの放つ光は圧倒的で形勢は不利となっていく。光はミカに襲い掛かりそれを風の防御壁でなんとか防いでいるがすぐにも力尽きそうな状態だ。


 「ミッ、ミカさん!」


 拳を握りしめタカヒトの感情が高まっていくのと同調するかのように狂刀羅刹の刃は装甲に姿を変えた。タカヒトの足元がグラつくとダゴンが起き上がろうとしていた。タカヒトはダゴンの後頭部に飛び移ると右拳を振り上げた。


 「ああああぁぁぁぁ~~~!!」


 怒りに身を任せたタカヒトは思いっきり殴ると比類なき強度を誇っていたダゴンの後頭部を陥没させた。グラッと頭部が落ちるとダゴンはそのまま倒れ動かなくなった。タカヒトは上空のカイザーを睨むと一気に飛び上がった。接近してくるタカヒトに気づいたカイザーは神々しい光を放つが羅刹の刃を半月状に変化させていたタカヒトはそれを弾き飛ばした。その勢いのままカイザーに斬撃を浴びせるが紙一重でかわされた。今度はタカヒトが着地するタイミングを計算したカイザーは着地ポイントに標準を合わせ神々しい光を放った。それをミカが風の防御壁で防ぐとてんとのガトリングガンが火を噴いた。弾丸をかわすとカイザーはこう言った。


 「リミッター解除!」


 カイザーは神々しい光を身体中から放つとタカヒトとミカ、てんとの三人に襲い掛かった。そのおびただしい光の雨を見つめながらユラはタカヒト達を見守っていた。ユラには近づいてくる者の気配などまったく気づかなかった。


 「・・・・ユラ」


 「! ジェイド?! うっ・・・・・」


 放たれた衝撃波を腹部に受けたユラは意識が遠のくとジェイドにもたれるように倒れた。ジェイドはユラを抱きかかえるとその場から去っていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ランドタワーの屋上に辿り着いたドレイク達は上空を旋回するハスターを確認した。ドレイクは合図を送るとリナは大地の鞭を取り出し旋回しているハスターに振った。鞭の先端がハスターの足らしき脚部の一本に絡まるとハスターの動きが穏やかなものになった。リナの持つ大地の鞭は知能の低い生物を操ることができる。ハスターを捕らえた大地の鞭を駆け上がっていくとドレイクは甲斐のくずきりを手にした。向かってくるドレイクにハスターは暗黒の風を放つ。

 甲斐のくずきりを構えるとすべてを切り裂く暗黒風の裂け目を見極めかわしていく。ハスターが六本の腕らしきものを振り上げるがドレイクの斬撃のほうが一瞬早くそれらを斬りおとした。恐怖の叫び声をあげながらハスターは地上へと落ちていく。リナは鞭を解放したがドレイクはハスターと共に落下していく。甲斐のくずきりから焔の刃に武器を持ち替えると気迫に満ちた雄叫びをあげた。短刀だった焔の刃は業を吸収することでその姿が大鉈となった。両手で柄を握り締め振り上げた。


 「貴様の業は俺が断ち切ってやる。次に生まれ変わるとしたら何がいい?もちろん決められはしないがな!」


 ドレイクは大鉈を振り下ろすとハスターの陥没した頭部が二等分された。ドレイクはハスターから飛び降りるとリナの大地の鞭に摑まった。断末魔をあげながらハスターは地上に激突する悶絶しながら息絶えた。再びランドタワーの屋上に引き上げられたドレイクは上空を見上げた。そこには笑みを浮かべたジャスティスが浮遊していた。


 「高みの見物とはお高く留まってじゃねえか。

  さっさと降りてきやがれ、木偶の坊が!」


 「ふん、ハスターごときに生を勝ち取ったぐらいで調子に乗るなよ!死なせてほしいと懇願するほどの恐怖を貴様等に与えてやろう。」


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