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未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
134/253

土を支配する神

 「申し訳ございません、ピサロ様。」


 「いいのよ、ジャスティスさん。

  失敗は誰にでもあるわ。それより策は練ってあるのよね?」


 「すでにカイザーが行っております。」


 「素敵よ、あなた達。私は結果がすべてだから・・・分かっているわよね?」


 「御衣!」


 ジャスティスが頭を下げると通信は途絶えた。ジャスティスとカイザーはアレスとジェイドを完全に見失っており現在は東方に位置する小国家に身を置いている。この小国家は土を支配する神で黄泉の六亡星のひとりツァトゥグアが支配している。黄泉の六亡星で最も強欲なツァトゥグアは己の欲の為なら誰でも平気で裏切るがピサロとの金銭的な交渉が済んだことでジャスティスとカイザーを受け入れた。


 「話は終わったかいな?長話すると通信料も頂くことになりまっせ。」


 ツァトゥグアもヨグ・ソトホートを所有している。しかし成虫ではない為、天道への移動は叶わず通信のみだけが可能である。ツァトゥグアの言葉にジャスティスは苦虫を噛締めたような表情をした。ジャスティスの力を使えばツァトゥグアを抹殺することはもちろん可能なのだ。ピサロの言いつけがなければすぐにでも抹殺していたであろう。


 「そうそう、さっき天道から部品が届いたんやった。ジャスティスはん、修理に取り掛かるから手術室に来てくれや。御代は結構やで、ピサロはんから貰ったさかいな。」


 たるんだ腹に短い腕を後ろにまわし、がに股に歩いて部屋を出ていった。拳を握り締め怒りを抑えるジャスティスだがここは堪え故障した両腕を治す為に部屋を後にした。

 手術室には数名の医師がおりジャスティスは手術台の上に横になった。天道から送られてきた部品は新型でその能力について医師から説明があった。負傷した両腕を切り離すとすぐに新型の両腕が取り付けられた。手術時間も数時間で終了しジャスティスは両腕を見つめると興奮を隠せないようだった。早くこの両腕をこの能力を試したいとうずうずしている。その頃、ツァトゥグアも同様の事を考えていた。


 「ピサロはんもスカルマスターはんもどうでもいいがな。

  それよりこれから始まるビジネスチャンスが楽しみや。ワシには商売の神様がついとるんや。商売繁盛、商売繁盛!」


 自室に戻りツァトゥグアはそろばんを弾くとニヤケている。受話器を手に取るとツァトゥグアは部下に指示をした。


 「製造は順調に進んでおるんやろうな。

  これから忙しくなるでぇ~。気張っていけや。」


 受話器を置くと葉巻に火をつけた。ツァトゥグアのテリトリーであるこの国には名はない。しかも小国家であり他の国からの侵略も受け易い地形をしているがツァトゥグアの支配地となってからは一度も侵略を受けた事はなかった。ツァトゥグアは利益というものに対して非常に貪欲である。それゆえに他国に及ばない資源を最大限に活用し高い技術力を駆使する事で他国を圧倒する兵器を量産してきた。他国に兵器を売る事で繁栄してきた国だけにこの世界で戦争が終結するのを誰よりも嫌う。現在のスカルマスターは調和と平和を掲げ黄泉の国から戦争をなくそうとしている。ツァトゥグアはそれを嫌い自らピサロと交渉を行った。


 「ワシにとってはゼニがすべてや。

  ゼニはええでぇ~、ほしいものはすべて手に入るさかい。」


 ツァトゥグアの笑い声は廊下で話を聞いていたカイザーの耳にも届いた。カイザーは無言のまま、その場を立ち去るとジャスティスと合流した。逃走したアレスとジェイドが再びランドタワーにいるとの情報を得たカイザーはジャスティスと共にランドタワーに向かう事にした。


 「アレスめ、新たに得たこの能力で頭を粉々に砕いてくれよう。」


 ツァトゥグアはランドタワーへと飛行していくカイザーらを眺めていた。葉巻をくわえたその顔からは計画通りに事が進んでいる余裕の笑みが見える。カイザー達がランドタワーに向かった同じ時刻、タカヒト達も飛行艇でランドタワーに向かっていた。


 「和尚、神野国に残ったほうが良かったんじゃないのか?」


 「もはやこの世界に安全な場所などなかろうて。ワシはお主らの未来を見守る義務があるのじゃ。それはジークフリードとの約束でもあるしの。」


 ドレイクは和尚の言葉に黙って従った。神野国で唯一保有してあった飛行艇に乗り込む事になったのはユラの一言が原因だ。


 「ランドタワーに行くだと?」


 「ええ、闇夜の岬でスカルマスターとしての役割を果さなければなりません。」


 ドレイクは仰天するもユラは真っ直ぐ見つめてそう言った。もうすぐ七十五日に一度の月太陽が闇夜の岬より現れる。


 「私を信じてくれるすべての者達にこれから起ころうとしている現実を伝えなければなりません。私だけが逃げるわけにはいかないのです。」


 「って言ってるけど、お前達はどうするんだ?」


 「ユラは大切な仲間だからほっとけないよ。」


 「死ににいくようなものだが頑固者のユラが考えを変えることはない

  ・・・仕方なかろう。」


 「ありがとう、てんと、ミカさん。」


 ドレイクは和尚に飛行艇を使いたいと伝えた。飛行艇は神野国独自の技術で造り上げたもので遠方の国への侵略に使われたものだった。崩壊した神野国では無用の長物となったわけだが・・・・。事態が深刻化していることからもはや神野国の建物が存続する可能性は低い。必要な物資を飛行艇に運び込むのと整備に数日必要だった。


 「いくぜ、しっかりつかまっていろよ。

  なんてったって和尚と同じでオンボロだからな!」


 「ほっ、ほっほ・・・・ドレイク、何か言ったか?」


 ドレイクの操縦でゆっくりと飛行艇が浮遊していく。神野国がどんどん小さくなっていくと飛行艇はランドタワー目指して前進していった。高度が安定するとドレイクは飛行艇を自動操縦にしてタカヒト達の集まる場所に歩いていった。タカヒトの隣にドカッと座ると恐がるようにタカヒトはうつむいた。


 「記憶を失ったとはいえ、お前もこれから戦いに行くんだ。

  もっとビシッとしろよ。」


 「ぼっ、僕には戦う力なんて・・・ないし。」


 「タカヒトのマテリアルフォースは治癒力だけだ。

  今回も後方支援にまわってもらう。」


 「おい、てんと・・・お前、勉強不足だぞ。」


 タカヒトの持つマテリアルフォースは傷ついた者を回復させる治癒力だと誰もが思っていた。だがそれは大きな間違いである。タカヒトが傷ついた者を回復させるのではない。


 「つまりタカヒトのマテリアルフォースが細胞を活性化させ傷ついた者の自己治癒力を高め、傷ついたもの自らが自己回復したということか。」


 自己治癒力は生ける者すべてが持っているのだがタカヒトのマテリアルフォースは細胞の活性化を瞬時に高められる。もちろんそれは諸刃の刃でもある。細胞の活性化を高め過ぎればその細胞自体の活動寿命も短くなる。


 「その理論からすればタカヒトが自らの細胞を活性化させ爆発的な身体能力を高める。もしくは相手の細胞を限界まで高めれば活動寿命の限界を超えて倒せる事も可能となるが・・・。」


 「さすがは天道の学舎を主席で卒業しただけはあるな。ご名答だ!」


 ここに来てタカヒトの能力の凄さに驚きそして勝機も見えてきた。徳の水筒とほぼ同じ能力を得た上に時間的な制限もない。あとはタカヒトのマテリアルフォースのコントロールだけが課題であった。ドレイクはゆっくりと立ち上がるとタカヒトに言った。


 「そんじゃあ、修行を始めるか。これからランドタワーに到着するまでの数日間。お前のマテリアルフォースを完全に開花させてみせるぜ。」


 「いいのか、ドレイク。お前は自ら最大の敵を育てる事になるのかもしれんぞ!」


 「ふん、構わんさ。状況は深刻化している。武器は多いに越した事がない。」


 「・・・・僕は敵でも武器でもないよ。ドレイクさんも僕達の仲間でしょ?」


 「ちぇっ、相変わらずマッタリした空気出しやがって。修行を始めるぞ!」


 ドレイクはタカヒトを連れて飛行艇の下部にあるシェルターに向かった。それからランドタワーに到着するまでの間、シェルターから出てくることはなかった。


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