殺戮部隊 サンギガトン
タカヒト達特攻野郎Aチームはイーターが墜落死した巨大な穴の反対側から砦近くに辿り着いていた。砦の中心にデカい塔がそびえ立ち周囲には土で出来た巣らしきものが複数あるがイーターはいない。どうやらすべてのイーター達はドゴル達の討伐へ向かったようだ。歓喜の声は砦まで響いてデオルトは作戦が成功したものと確信した。
「このままデノガイドのいる塔の最上階へ向かうぞ。」
デオルトがタカヒト達に告げると塔内部へ歩を進めていく。
「おまち!」
塔内部へ潜入しようとした瞬間デオルト達を呼び止める声がした。辺りを見渡したが姿はなくそびえ立つ塔を見上げると三つの影が見えた。すべてのイーターは作戦に引っ掛かり塔の中にはデノガイドしかいないものと確信していたデオルト達には痛恨の一撃であった。何故ならデノガイド以外を相手にするのは戦力の低下に繋がるからである。デオルトの額からは冷たい汗が流れ落ちる。
「何者だ!」
「何者?よくぞ聞いてくれました。いまこそ正体を明かすとき!
いくわよぉ~~とうぅ~~クルクルクルッ、ハアァ~~!!」
砦から勢い良く前回転しながら飛び降りてきた三つの影がタカヒト達の進路をふさぐように着地した。太ったイーターと細く長いイーター。それにちょっとオネエっぽいイーターだ。イーターとしては珍しく二足歩行の昆虫種であった。
「ワイはイタ太郎ぉ~~!」
「ミイはイタロスぅ~~!」
「そしてわたしがギガイーター!三人揃ってハイ、殺戮部隊サンギガトン!!」
着地と同時に三匹のイーターは名を名乗ると機械体操のような決めポーズを取った。いままでと違う展開にタカヒトは言葉を失い、ただ呆然としていた。オネエっぽいイーターはそんなタカヒトを見て笑みを浮かべて喜んだ。
「きっ、決まったわ!お前達の動きを止めるほどの衝撃だったようね・・・
もしかしてアンコール希望かしら?」
「いっ、いや・・・結構です。」
「それは残念ね・・・まあいいわ。私達、殺戮部隊サンギガトンに出遭ったのが運の尽きね!私達の強さは普通じゃないわよ、まさに女王の強さよ!」
「あのぉ~~・・・質問です。女王の強さって何ですか?」
女王の強さが分からないタカヒトは何気に質問してみた。ギガイーターはそんなタカヒトのけなげさを気に入ったらしく説明を始めた。
「いいわ、説明してあげる。まずこの太っちょいのはイタ太郎と言ってただのデブではないわ。伝説のカブト虫カブくんを投げ飛ばした事が一度だけあるわ。そのパワーは圧倒的よ!」
「伝説のカブト虫って知らないんだけど・・・。」
「んっ、何か言った?次に紹介するのが紳士的に見えるイタロスよ!イーターの中で最も細く、細さでは誰にも負けないわ。」
「・・・それって強さ?」
「あと・・・最後に私がいるじゃないの!そう私が女王よ!えっ、女王の強さは何かって?ふん、決まってるじゃない!この美貌、このスタイル、そしてこの頭脳よ!えっ、頭脳って頭がいいのかって?当然よ!さあ、かかってらっしゃい!最強奥義サンギガアタックを見せてあげるわ!」
「最強奥義サンギガアタック??」
なんとなくカッコいい言葉にタカヒトは瞳をキラキラ輝かせた。サンギガアタックとはサンギガトンの必殺技らしくこの技を喰らったら地獄へ一直線と豪語する。しかしこの技は最後の技だから今は出せないと語った。
「私達が敵に追い詰められて、追い詰められて最後の最後に出す逆転技よ。」
それでも身振り手振りで必死にサンギガトンが説明している姿は滑稽でタカヒトは笑ってしまうのを必死に堪えた。
「!! そこの子供!目を潤まして・・・・はっ!もっ、もしかして恋ね!
私の美しさに見惚れて・・・そして恋をしたのね!」
「えっ?・・・いや・・・」
「きっ、貴様!ギガイーター様に恋とは許さんぞ!」
「あのぉ~~ そうじゃなくて・・・」
「この野郎ぉ~~!!」
イタ太郎とイタロスは息荒くタカヒトを睨みつけると一瞬にしてタカヒトの前に接近してきた。真っ赤な眼をした二匹は鋭い爪をタカヒトの首元に突きつけた。その瞬間、タカヒトに戦慄が走る。てんと達は成す術もなく二匹の接近を簡単に許してしまったのだ。イーターの頂点に立つ最強戦士サンギガトンを甘く見ていた。タカヒトが殺されるという最悪の状況が脳裏を過ぎる。てんとはタカヒトを守るべく飛び向かっていくが二匹のイーターを止めたのは意外にもギガイーター本人であった。
「おまち!・・・お前達の気持ちはわかるわ。でも恋は自由よ。そう恋は自由そして・・・お前達の私への想いは痛いほど分かるわ。でもこの子供の想いも分かるの。そう、あなた達は恋のライバルであり、友でもあるのよ!」
ギガイーターは涙ながらに両手を挙げてやさしく語った。それを聞いたイタ太郎とイタロスはタカヒトの首元から鋭い爪を離すと下を向き少しの間二匹に物事を考えている沈黙の時間が流れた。数分ほど経った頃、イタ太郎は顔をあげると何かが吹っ切れたように口を開いた。
「恋のライバル、そして友・・・ワイは負けへんで!」
「悪かったな。今度、飯でも喰いながらギガイーター様について共に語ろう!」
「・・・・うっ、うん・・・・」
イタ太郎とイタロスはタカヒトと手を取り合った。それは恋のライバルとしてタカヒトを認めた瞬間でもあった。恋のライバルは少ないほうがいいに決まっているがライバルに打ち勝ってこそギガイーターとの愛情が深まるとイタ太郎とイタロスは確信した。もちろんタカヒトにはその気は全くないのだが二匹が盛り上がっている以上、水をさしてはいけないような気がしてとりあえずイタ太郎とイタロスに合わせてみた。そんなイタ太郎とイタロスとタカヒトの男同士の友情にギガイーターは涙を流していた。
「いいわ~~男の友情、そして恋の戦い。その中心にわ・た・し。うぅ~~~ん最高!
わたしって輝いてるわ!さあ、わたしを奪い合いなさい!・・・あっ、そうそう、こんなところで自分に酔っている場合じゃないわ。お前達行くわよ。あんた達も早く行きなさい。私達はデノガイド様に楯突こうっていう輩を退治しに行くところなの。まったく困ったちゃんだわ。
あっ、それと世界中の男が私を狙っているからのんびりしてられないわよ。あなたもがんばりなさい。」
ギガイーターはタカヒトにウインクするとイタ太郎とイタロスを連れて立ち去っていった。取り残されたタカヒトに冷たい風が追い討ちを掛けるように吹いた。少しの沈黙の後、同情するようにデオルトがタカヒトの肩をポンッと叩くと先に塔の中へ歩いていった。グラモもてんとも無言でデオルトの後を着いていくとその場にはタカヒトがひとり取り残された。
「ちょっと!僕、あんなのヤダよ!ミカちゃんがいるんだもん、絶対に嫌だ!」
あれ(サンギガトン)がなんだったのか?タカヒト達にはよく分からなかったがとりあえず回避出来たという事で塔へ潜入していった。塔内は静まりかえっていたが一匹だけイーターがトボトボ歩いていた。どうやら出遅れたらしくフロアをうろうろしている。
「てんと、どうする?イーターがいるよ。なんとかしないと先へは進めない。」
てんとはフロアを見渡して少し考え込む。
「グラモ、イーターが這い上がれない位の穴を気づかれずに掘れるか?」
「もちろん可能だが。」
グラモはキョロキョロと辺りを見渡すと穴を掘り始めた。物凄い速度で掘っているが鈍感なイーターはグラモにまったく気づかず、相変わらずウロウロしている。
「出来たが!」
グラモが頭をヒョコッと出すとイーターがスッポリ入る位の穴を掘り終えた。てんとはデオルトにウロウロしているイーターをこの穴まで引き付けるように頼むとデオルトはイーターの前に向かって飛んでいく。
「お・・・えざ・・・」
デオルトに気づいたイーターは追いかけてくるがさすが出遅れたイーターだけに動きが鈍くいつまで経ってもデオルトに追いつけず穴まで辿り着かない。遅い割に息切れだけは異常に激しく穴の存在すら分からないほど疲れきっていた。デオルトが穴の上を飛び越えてイーターの近づいてくるのを待っている。
「オギャァアアア~~」
グラモが掘った穴の存在には全く気づかずイーターはそのまま落ちた。穴に落ちたイーターは激しい息切れと動悸に起きあがることも出来ずうずくまっていた。
「成功だな。先を急ごう。」
「ねぇ、てんと。このイーターはどうするの?」
「放っておけ。大丈夫だ、死にはしない。」
砦の一階フロアには何もいないことを確認すると階段をのぼりタカヒト達は二階を目指していく。その頃、殺戮部隊サンギガトンは数千匹のイーターが落ちた巨大な穴を歩いていた。ゴツゴツした岩場の下には数え切れないほどのイーターが潰れていてピクリともしない。長い間歩いたせいかサンギガトンの疲労はピ―クに達していた。
「ギガイーター様、どこにもいません!」
「そんなことはないわ。必ずいるわ。捜しなさい。ところでイタロス!特徴は?」
「はっ、特徴はグーモ族とパピオンそれに浮遊している生き物と子供の四名です。」
「デノガイドに逆らう不届きな奴らね。はて?何処かで会ったような・・・!」
ギガイーターの脳裏にタカヒト達の姿が浮かんだ。そしてギガイーターは怒りに震えた。イタ太郎とイタロスを騙し、その上ギガイーターのプライドをズタズタに傷つけたタカヒト達を許せはしなかった。イタ太郎とイタロスを引き連れて激怒したギガイーターは砦へと引き返していく。