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未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
128/253

潜入 ランドタワー

 「ここが・・・そうなの?」


 ミカはキョトンとしている。ランドタワーに勢い良く潜入したのだが入ったフロアには不特定多数の住人が愉しそうに歩いている。ランドタワーは最先端のファッションと情報が飛び交っていて、若者で賑わっていた。


 「これからどうするのかしら?」


 「一階から五階までのフロアがファッション関連で六階から二十四階が生活関連になっているようだ。それから百二十階までは複数の会社が入っている。表示されてあるのはそれまでではあるが無論百二十階が最上階ではないだろうな。」


 てんとは入口付近の案内掲示板を見つめながらそう言った。ランドタワーは最も高い高層ビルでありてんとの想定では二百階まではあると判断していた。つまり案内掲示板に記載されていない百二十階以上の階にスカルマスターがいる可能性がある。


 「ここはやはり二手に分かれるとしょう。」


 「別行動するワケ?」


 「いや違う。後方支援と言うか・・・尾行を頼みたいのだ。」


 「尾行?」


 てんとの心配事のひとつにジェイドとアレスの存在がある。このランドタワーでもしジェイドとアレスに見つけられた場合、対応できるようにミカ・リナ・タカヒトのチームにルサンカとてんとのチームが尾行する形を取る事で襲撃を回避する作戦に出た。ルサンカはジェイドやアレスにはその存在を知られていない。てんともマテリアルフォースにより姿を変えられる。


 「なるほどね。万が一に備えるって訳ね。」


 「そうだ。ルサンカの千里眼を駆使して奴等の存在を常に監視する。

  リナ達はスカルマスターの捜索に専念してくれ。ただしスカルマスターとて無防備ではないだろうな。」


 「そうね。すんなり会わせてはもらえそうにないわね。」


 てんとは先ほど購入した無線式の携帯端末を取り出すと皆に手渡した。それを耳に装着する事で常に連絡を取り合うように促した。てんとの指示のもと、タカヒト達はエスカレーターに乗り上のフロアへと向かった。

 タカヒト・ミカ・リナのチームは難無く、二十四階まで昇っていた。もちろんその後方にはルサンカとてんとのチームが距離を保ちながら着いてきている。順調にフロアを進んでいると館内アナウンスが流れた。


 「館内緊急放送を流します。只今、館内において不審者と見られる者を確認しました。至急、避難願います。十分後のちにガードナーを起動させます。避難願います。」


 館内アナウンスは続けて二回放送された。館内放送を聴いた者達は慌しく下のフロアへと避難していく。館内アナウンスと同時にタカヒト達の所有する携帯端末にも速報が流れた。その速報にてんとは携帯端末で皆に声を掛けた。


 「不審者とはやはりジェイド達も潜入しているのか?

  それとも別の何者かが潜入したか?」


 「誰かはわからないけど私達が狙われているわけではなさそうね。それにしてもガードナーが何かが気になるわね。」


 「うむ、避難しない我等も不審者としてガードナーと呼ばれる何かに狙われる可能性が高い。十分に警戒するのだ。」


 てんとは携帯端末での会話を止めた。上のフロアからは避難して来る者が後を絶たない。それとは逆に正体不明のガードナーを警戒しながら上のフロアへと歩を進めていくタカヒト達。しかしタカヒト達が会社関連のフロアでは最上階である百二十階までガードナーと遭遇することはなかった。何故ならほどんどのガードナーが不審者の始末に追われていたからだ。


 「ふう~・・・しつこい連中だ。そんなだと女に嫌われるぜ!」


 百六十階のフロアではガードナーが頭から足の先まで黒い布をまとった不審者を取り囲んでいた。ガードナーは警備よりも不審者の排除を目的に造られた兵器である。円球に五本の足がついており四本の腕には荷電粒子ガンが搭載されてある。逃げ道を完全にふさいだガードナーは荷電粒子ガンの標準を不審者に合わせた。


 「バーべキューだけは勘弁してくれ。」


 不審者がフワリと身体を浮かすとガードナーの一斉射撃が始まった。放出された荷電粒子弾は不審者の身体を貫くと床に落ちる事すら許されずボロ布のようになっていく。射撃を止めるとガードナーは取り囲むように落ちてきた不審者に近づく。だが落ちてきたのは穴だらけになったまさしくボロ布だけであった。


 「大事な一張羅が台無しじゃないか。

  まあ、代償は払ってもらったから勘弁してやる!」


 ガードナーが一斉に声のする方に向いた。そこにはスローイングナイフを両手に持つ不審者が立っていた。ガードナーは反撃開始に取り掛かろうとした瞬間、回路が停止してその場に崩れるように倒れていく。不審者の放ったスローイングナイフは的確にガードナーの心臓部とも言える思考回路を破壊していた。不審者は穴だらけになったボロ布をまとうと階段を昇っていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「どういうことだ?」


 「もしかしてジェイド達が潜入しているのかしら?」


 「いや、ジェイドやアレスの手口ではない。見てみろ!ナイフ一本でガードナーの機能を完全に破壊している。」


 てんとは確信した。第三の人物がこのランドタワーに潜入していることに。圧倒的な戦闘力を誇るガードナーを瞬時に分析し必要最小限の攻撃で破壊する天才的な戦闘センス。目的は分からないが情報がないだけにこの第三の者はてんとにとってジェイド以上の脅威となった。


 「状況を分析するとどうやら無傷でガードナーを殲滅している。圧倒的な戦闘能力だ。姿形が分からない以上、警戒を怠らないように慎重に進むぞ!」


 てんとの激にタカヒトはかなり動揺した。周囲をキョロキョロと落ち着きなく見回している。そんなタカヒトにミカから携帯端末にメールが送られてきた。


 [タカちゃん、大丈夫だよ。落ち着いて行動すれば大丈夫。タカちゃんのまわりには私達がいるんだから。]


 メールを読んだタカヒトはミカの顔を見た。ニッコリと笑顔のミカの表情を見たタカヒトはうっすら微笑みかえした。少し緊張感のとれたタカヒトは警戒しながら歩を進めていく。

 その頃、不審者の侵入により完全に封鎖されたランドタワー一階の従業員通路をジェイドとアレスが歩いていた。


 「アレス、傷の具合はどうだ?」


 「お前が俺を心配するとはめずらしいな。」


 「てんと達以外に障害となる者が出現したようだ。

  こちらも戦力は最大限に活用したい。」


 ジェイドは携帯端末からすでに不審者の情報を得ていた。不審者の目的は分からないがここにいるということはおそらく目的は同じはずである。ジェイド達は従業員通路から三階のフロアに出てきた。封鎖されたランドタワーの電気設備は完全に停止されてエレベーターでの乗降は出来ない。ランドタワーの三階から上は大きな吹き抜けになってそれは天井が見えないほど高かった。


 「どうするつもりだ。ゆっくり階段を健康的に一歩一歩のぼるのか?」


 「一気に昇るさ。」


 ジェイドは精神を集中させるとその身体がフワリと浮き上がった。アレスの身体も浮き上がり、吹き抜けを一気に上昇していく。それは一瞬の事だった。吹き抜けを上昇するジェイドの姿がてんとの視界に入った。


 「ジェイド!」


 てんとが叫んだ時にはすでにジェイドは吹き抜けを更に上昇していた。それを確認するとてんとは我を忘れひたすら階段を進んでいった。


 「ちょっと、てんと!」


 リナの言葉が耳に入らないほどてんとはまわりが見えていなかった。


 「第三の者も分からないのに!

  ミカ、タカヒト、行くわよ!ルサンカ、警戒をお願い。」


 リナ達はてんとを追いながらも第三の者の警戒を怠らないように周囲を警戒しながら先を進んでいく。吹き抜けは百九十階までだった。ジェイドはフロアに降り立つと周囲をうかがった。

 ガードナーが数体いるが動こうとはしない。よく見るとすべてのガードナーにはナイフが突き刺さりその機能は停止していた。


 「アレス、気をつけろ!どうやら先客がすでに来ているようだ。」


 ジェイドはアレスと共に階段を進んでいく。階段を進むにつれてガードナーの残骸も多くなっていく。ジェイド達が足を止めた先には数千冊にも及ぶ本がおさめられた本棚が所狭しと並んでいた。


 「フロア全体が本棚とはよほど勉学を好んでいるようだな。」


 アレスが本棚に手をやり一冊の本に目を通していく。ジェイドも本棚から本棚へと移動していると薄っすらと黒い影が視界に入った。その影に近づくとジェイドは声を掛けた。


 「勉強熱心だな。おまえがスカルマスターなのか?」


 「・・・スカルマスターと間違えるという事はここの者ではないらしいな。先に言っておくが俺の邪魔をしなければ命だけは見逃してやろう。」


 「大した自信だな。まあ、いい。こちらも戦闘はなるべく避けたい。」


 ジェイドがそう言い残し立ち去ろうとした瞬間、本棚が急に倒れてきた。瞬時に回避したジェイドであるが黒い影は完全に本棚の下敷きになった。倒れた本棚の反対側にはニヤニヤしたアレスが立っていた。


 「どういうつもりだ、アレス?」


 「ふん、誰であろうと排除するのが私のポリシーなのでな!」


 「・・・・俺もそういう考えは好きだぜ!」


 「やはりかわしていたか。ジェイド、俺からいくぞ!」


 アレスは巨大な剣を取り出すと精神を集中させマテリアルフォースを開放した。巨大な剣を振り下ろすと剣風が倒れた本棚を真っ二つにして更に黒い影に襲い掛かる。紙一重で剣風をかわすがアレスから再び放たれた無数の剣風が襲い掛かる。それでも黒い影は綿のようにユラリユラリとかわしていく。


 「なるほど・・・いい動きをする。」


 「試験は合格かい?」


 「ふん、これをかわせたらな。チェェ~スト!」


 アレスは巨大な剣を肩に背負うと勢いよく黒い影に迫っていく。巨大な剣先が黒い影に襲い掛かるがそれすら紙一重でかわす。剣先が床に減り込んでいくのを黒い影は笑みを浮かべながら見ていた。


 「アレス、気をつけろ!何か来るぞ!」


 ジェイドの激にアレスは黒い影を睨んだ。黒い影の胸元がキラリと光るとアレスは剣先を振り上げて光る物体を打ち落とした。床には無数のスローイングナイフが落ちた。


 「おおう!なかなかやるな。これは愉しめそうだ。」


 黒い影は驚いた表情をしながらも腰に手をやると刀を取り出した。それは刃と柄の長さが同じくらいのモノである。


 「ほう、貴様も剣を使うのか。ならば剣士同士の戦いといこうではないか!」


 「これは甲斐のくずきりと呼ばれる名刀。お前のその出来損ないのデカいだけの剣とは違うのだよ。」


 「ふん、ならば試してみるがいい!」


 瞬時に接近したアレスは巨大な剣を振り上げるとそれを一気に振り下ろした。黒い影は刃を受け止めた瞬間払うように受け流すと剣先が再び床に減り込んでいく。その隙をついて黒い影は甲斐のくずきりを水平に振る。刃が迫ってくるのを間一髪でかわすとアレスは巨大な剣を振り上げ黒い影との距離をとった。完全にかわしたかに見えたアレスの胸元に一線の斬り傷が浮かんできた。


 「きっ、貴様・・・只者ではないな。名を名乗れ!」


 「はっ、ははは 別の名乗るほどではないが・・・そうだな、神野国の達人とでも言っておこうかな。」


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