表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
127/253

大都会

 船着場に船を停留させてタカヒト達は大陸の土に足をつけた。船上での生活が長かったせいか、なんとなく地面が揺れている感覚にとらわれる。船着場で一番近い部落について問い掛けてみた。


 「部落?何言ってんだ。そんなもんここいらにはねえぞ。とりあえず、その山道を登っていけ。そうすれば街に出られるからよ。」


 街があると言われタカヒトは呆然としていたが細かい位置をてんとは確認するとそこに船から馬車を降ろしたルサンカがやってきた。出発の準備が整ったようだった。馬車に乗り込むとルサンカは馬に鞭を打ちゆっくりと進んでいく。


 「てんと、街ってどういうことかな?」


 「わからん・・・位置だけは聞いたのだが街の規模も何も情報は得られなかった。」


 てんとが言葉を濁らせるとそれを聴いてきたルサンカが声を掛けてきた。ルサンカの話では相当な規模の街があるらしい。何故ならこの大陸は旧支配者のひとりスカルマスターの支配下だからだと言った。


 「スカルマスターの支配する街なのか。」


 「はい、その通りです。」


 ルサンカは話を続けた。スカルマスターは旧支配者の中で最も高貴で高い知能を誇る。その為ほかの旧支配者達からも一目を置かれる存在であり、旧支配者達の支配するテリトリーもスカルマスターが決めたものらしい。その高い知能からこの大陸は高度な文明を築きあげた。


 「その口ぶりだとルサンカは以前ここに来た事があるのかしら?」


 「はい、以前ハデス様と来た事があります。」


 「ハデスとスカルマスターか・・・妙な取り合わせだな。」


 そんな話をしながら山道を進んでいるとルサンカが馬車を止めた。ミカが声を掛けるとルサンカは前方を指差した。そこには関所らしき建物があり数名の衛兵が門の前に立ち塞がっていた。


 「貴様達も通行手形証の交付を受けよ。」


 衛兵のひとりが近づいてくると声を掛けてきた。馬車を関所に止めるとタカヒト達は通行手形証を得る為に中に入った。すると関所内では手形を得ようと数名の者達が並んでいた。しばらくするとタカヒト達の名前が呼ばれた。


 「今回は観光ですか?」


 てんとが「そうだ」と答えると係りの者は書類に目を通し通行手形に印をついた。印のついた通行手形証を受け取ったてんとはそれを門の衛兵に見せた。開門されてそこを馬車が通り抜けていくとその先には山道が更に続いていた。山道を進んでいくと急斜面も次第に緩やかになり辺りを包んでいた木々もなくなり視界が開けてきた。


 「うわぁぁ~~~・・・凄い。」


 ミカが目を真ん円くして声をあげた。山道を抜けた眼下には想像を絶する規模の建物が広がっていた。巨大な建造物が何棟も立ち並ぶ正に大都会そのものであった。巨大な数棟の建造物を中心として放物線状に拡がっていく小さなビル郡。その更に外側に小さな建物が建てられていた。


 「あの巨大な建造物のどこかにスカルマスターがいるはず。

  まずは街に入り情報収集だ。」


 ここでは夜の時間帯がある。夜の時間帯は六道の世界でも存在するのだがこの大陸にだけ七十五日に一回月太陽と呼ばれる闇夜に輝く太陽が現れる。


 「その時こそスカルマスターが現れる時!」


 てんとは強い口調で言った。ジェイドが何を考えているのかは依然わからないが旧支配者達と呼ばれる旧神 黄泉の六亡星が集結するということは異例の事である。ジェイドも確実に月太陽が現れる瞬間を狙っていると確信したてんとはその事だけを目的に行動していく。


 「今度こそ・・・」


 「うん?何か言った?」


 「いや・・・なんでもない。」


 ミカの言葉にてんとは素っ気なく答えた。それからタカヒト達は大都会の一番外側にある小さな建物が並ぶ場所まで馬車を進めた。どうやらこの辺りは治安もさほど悪くなさそうで寝泊りできる施設がある。ジェイド達の存在がない事を確認するとタカヒト達はこの施設で夜が明けるのを待つことにした。

 てんと達が目指す巨大な建造物が立ち並ぶビル郡の中で最も高いランドタワー。その最上階に全身黒尽くめの姿をした者がいた。銀色に輝く髑髏のマスクに骨の形をした鎧を身につけている。その異様な姿をした者こそ黄泉の六亡星スカルマスターである。しかしスカルマスターは七十五日に一回月太陽が闇夜に輝く時にしか現れないはず。だがそれこそがスカルマスターの策略なのだ。彼ら黄泉の六亡星は旧支配者として天道からも黄泉の国からもさげすまれていた。居場所を失った彼らにとってここは最後の砦でもあった。それだけに彼らが必死でこの地を守るには必要な力があった。それはカリスマ性と呼ばれる力である。彼らはスカルマスターを神とする事でこの地に少しずつ信者とも呼ばれる都民を集め大陸の開発を繰り返し行ってきた。そして都民にカリスマ性を神としての存在を植え付ける為に七十五日に一回月太陽が闇夜に輝く時にしか現れないようになっていったのだった。スカルマスターは都民に姿を見せる時以外はこのランドタワーの最上階にいる。そのスカルマスターが部下からの報告を受けていた。それは関所で通行手形を交付した者のリストについてだ。スカルマスターはリストに目を通すとその者達にチェックを入れて部下に手渡した。部下は一礼するとその部屋から出ていった。スカルマスターは沈む陽を見つめながら眼下の街に視線を向けた。


 「う~ん・・・アリシアさんの紅茶はいつ飲んでもおいしいわ。」


 その頃、天道のピサロは優雅に自室でアリシアの注いだ紅茶のティーカップを手にするとそれを口に近づけた。アリシアは顔を赤らめうつむいた。清々しい風がカーテンを揺らす。椅子に腰掛けたままピサロはティータイムを楽しんでいる。鳥のさえずり声を聞きながら微笑んでいると何かを思い出したかのようにティーカップをテーブルの上に置いた。


 「そういえばジェイドさんとアレスさんから連絡がないようだけど・・・。」


 黄泉の国に向かわせたジェイド達からは何の連絡もないまま今日まで経っていたのだ。ジェイドとアレスには計画を進める上で必要な任務を与えているが報告がないことに苛立ちを隠せない。しかもピサロは自分の計画が寸分でも狂う事を嫌う。急にピサロの目が鋭くなるとアリシアの顔がひきつった。


 「アリシアさん、セシルさんを・・・いや、カイザーさんとジャスティスさんを黄泉の国へ向かうように伝えて頂戴。」


 「カッ、カイザーとジャスティスで御座いますか?」


 「計画を狂わす異分子はいらないわ。

  どちらにしても彼らは捧げられる存在なのですから。」


 そう言い残すと再びティーカップを手にその香りを楽しんでいた。そしてすぐにカイザーとジャスティスは黄泉の国へ出発した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 黄泉の国では朝早くに施設を出発していたタカヒト達は中心部のビル郡まで来ていた。最も高いランドタワーを見上げたタカヒトは口を大きく開けていた。


 「タカちゃん、口が開いてるよ。」


 「あっ・・・僕、こんなデカイ建物見た事ないから・・・つい・・・。」


 照れるタカヒトにミカは微笑んだ。これまで黄泉の国で見た建物とは全く異なっている光景に戸惑っていたのはタカヒトだけではない。リナも同様だった。ランドタワーを中心に高層ビル群がまわりに立ち並ぶ。道路は薄緑色の硬化した物質で造られ、その上を数十センチほど浮遊した乗物が忙しそうに動き回っている。この地に住む住民も忙しそうで歩く速さもかなり速い。着ている衣服もかなり奇抜な生地でタカヒト達の衣服が浮いてしまうほどだった。てんとの考えで新たに衣服を購入する事になり仕立て屋に向かう。中に入ると長いクルクルしたヒゲを生やした仕立て職人がひとりいる。


 「おやまあ、お客さん。

  えぇ、えぇ、大丈夫・・・仕立てのイメージは出来てます。」


 すると仕立て職人はミカの背中をおして鏡の前に立たせた。寸法を測りながらメモを取っていく。それからハサミを取り出すとチョキチョキと布を切っては糸で縫っていく。


 「さあ、出来ました。イメージ通りの仕上がりです。どうですか?」


 試着室から出てきたミカは短いタイトなスカートにフワッとしたジャケット、ブーツを履きこなしていた。少し恥ずかしそうな表情でタカヒトを見つめた。


 「タカちゃん、どう?」


 「・・・・」


 「タカちゃん?」


 「・・・あっ、うん・・・」


 「アラ?もしかしてミカがあまりにもかわいいから見とれてたのかしら?」


 リナの言葉にタカヒトは顔が真っ赤になった。どうやら図星のようだ。それからリナとルサンカ、タカヒトの順番で仕立てが進んでいった。仕立てが終わるとてんとが精算を済ました。


 「まいどありがとうございます。またの来店を心からお待ちしております。」


 頭を下げた職人にミカは手を振りながら店を出ていく。外に出ると都民と同化したファッションに身を包んだタカヒト達は次の行動へと移行する。


 「本当に行くのね?」


 「ああ、計画に変更はない!」


 リナの言葉にてんとは返した。今、てんと達は最も高いランドタワーを見上げている。てんとは確信していた。このランドタワーにこそジェイドとスカルマスターがいると。少しずつ歩を進めるとランドタワーに潜入していく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ