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未来のきみへ   作者: 安弘
黄泉の国編
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再会

 「うわあぁぁぁ~~~!」


 タカヒトの胸部に宝珠のリングをつけたアレスの腕がドンドン入り込んでいく。痛みこそないが迫り来る恐怖にタカヒトは混乱している。

 

 「タカヒトさん!」


 ヨシカが這い蹲りながら苦しんでいるタカヒトに走っていく。タカヒトの胸から離そうとアレスの腕を掴み懸命に引き抜こうとした。


 「邪魔だてするな!」


 「はあぁ、うっ・・・・」


 アレスはヨシカの首を力いっぱい握り絞めるとヨシカは意識を失いうずくまるように倒れた。邪魔をする者がいなくなった事を確認するとアレスはゆっくりとそれを捜していく。


 「くそっ、見つからん!何処にあるんだ?・・・・・んっ?」


 アレスの眼に映ったのは三つの影だった。それらはゆっくりと近づいてくると目前で立ち止まった。


 「貴様等は何者だ?」


 「悪者はいつも同じ事を言うのよね。いくわよ!ハッ!」


 「ワイはイタ太郎ぉ~~」


 「ミイはイタロスぅ~~」


 「私はギガイーター。三人揃って正義の味方、サンギガトン!」


 ポーズをとるサンギガトンにアレスとジェイドは何も言わずに沈黙している。ギガイーターはまわりを見渡すとスオウとヨシカは気を失っていた。目前ではタカヒトがアレスに苦しめられている。


 「やはり、どう見ても悪者しか見えないわね。イタロス、イタ太郎、そうでしょ?」


 「御意!」


 「おのれら、覚悟しいや!」


 「ふぅ~・・・やれやれだな。アレス、お前はそのまま作業を続けろ。こいつ等の相手は俺がやっておく。」


 ジェイドはイタカの子を掴んだままサンギガトンに歩いていく。ギガイーターは両腕を液状化させると鞭打を繰り出した。イタロスも同様に右腕を液状化させると槍のように鋭い刃で突きを繰り出す。イタ太郎は両手を激しく連打すると液状化で伸び縮みを繰り返す連続張り手を放った。サンギガトンの液状化による三匹同時連続攻撃にジェイドは捕まえているイタカの子の首を絞めた。恐怖に脅えたイタカの子は無数の真空刃を周囲にいきなり放った。


 「ぎゃああああ・・・」


 悲鳴が響くと液状化したギガイーターの右腕が地面にポトリと落ちた。激痛に顔を歪めるギガイーターは両膝を地面につく。苦悶の表情を浮かべながらも振り返るとイタロスは両足を切断されイタ太郎は両腕を斬られて悶絶していた。左手で流れる体液を押さえながらギガイーターはジェイドを睨みつけている。


 「おっ、おのれぇ~・・・」


 「力を過信していたね・・・でも、まだ終わりじゃない。」


 ジェイドは片腕を瀕死のサンギガトンに向けると開いていた手を握り絞めた。するとギガイーターとイタロスそれにイタ太郎の身体はジェイドの念力により押し付け潰される様にぶつかりあっていく。互いの身体が押し付けあう事で呼吸も出来なくなりサンギガトンは意識を失った。


 「ギガイーターさん・・・みんな!」


 苦悶の表情を浮かべながらもサンギガトンの姿はタカヒトの目にも映った。タカヒトは身動きの取れない状況で恐怖に支配されているとアレスは何かを見つけた。


 「くあぁぁぁ~~・・・ああぁ!」


 アレスはタカヒトの胸部から腕を取り出すとその手には黒色の玉と藍色の玉、それに瑠璃色玉が握られていた。三つの色玉を手に笑みを浮かべるアレスであったがジェイドは険しい表情をして一点を見つめている。アレスが振り返ると遠くの方から馬車が近づいてくるのが見えた。てんと達の乗っている馬車だ。


 「ふん、返り討ちにしてやる!」


 「やめておけ。ほしい物は手に入れた。今、戦うのは時期早々というものだ。」


 ジェイドはイタカの子をその場に捨てるとアレスと共にその場から消え去った。馬車を動かすルサンカが倒れている者達に気づいた。ルサンカの呼びかけにミカが馬車を降りていくとそこには見覚えのある人物が倒れていた。


 「タカちゃん!」


 ミカは急ぎ走るとタカヒトに近づいていく。意識のないタカヒトをミカは涙を流しながら抱き締めている。てんとが辺りを見渡すとそこが部落である事に気づいた。ほかに倒れている者達を確認すると馬車に乗せて部落の屋敷へと向かっていった。てんとが事情を話すと村長はタカヒト達を医務室に連れていくように命じた。


 「気がついたか・・・まあ、なんにせよ無事で良かった。」


 「・・・村長・・・ここは・・・」


 「タカちゃん!良かった、気がついて。」


 「君は・・・誰?」


 「えっ?」


 呆然とするミカ。タカヒトは辺りを見渡すがそこにヨシカの姿はなかった。


 「村長、ヨシカちゃんは?」


 その言葉に愕然としたのはミカだった。村長は「ヨシカは別の部屋で休んでいる」と伝えるとタカヒトは安心したように笑みを浮かべる。その表情が更にミカを追い詰めていった。いたたまれなくなったミカはその場を去るように出ていく。独り部屋にいるミカのところにリナと村長が入ってきた。そしてタカヒトについて説明を始めた。


 「えっ?・・・記憶がない?」


 ミカは驚愕したが確かにそうなのかもしれないとすぐに悟った。タカヒトが自分の事を忘れるわけがなく記憶を失ったのならすべてが理解できる。それでもミカは少し淋しい気持ちになった。


 「・・・今のタカちゃんには私の入る心の隙間はないのかな。」


 「あら、いつになく弱気ね。私の知っているミカならタカヒトの事を誰よりも知っていると自負していたわ。そして誰よりもタカヒトの面倒を見るはずだけど・・・私の勘違いだったのかしら?」


 ミカはリナに言われてハッとした。そうなのである。たとえ記憶を失っていたとしてもタカヒトとミカの時間が消えたわけではない。ミカはリナの顔を見つめると決意をしたように立ち上がった。そしてミカはタカヒトの部屋へと走っていった。


 「・・・波乱が起きそうな気配がするの。」


 「そうかしら?」


 「まあ、よい。お主、暇なら茶でもどうじゃな?」


 村長はリナに飲ませる茶の準備をする為に茶室に向かっていった。その頃、ルサンカはイタ太郎とイタロスの看病をして、てんとはギガイーターと同じ部屋で話をしていた。


 「まさか、こんな場所で会うとはな。傷の具合はどうなんだ?」


 「そうね、これも神様のお導きってやつかしらね。まあ、アタシ達は回復力がかなり早いから心配は無用よ!」


 痛めた表情を見せずにギガイーターは笑顔を見せた。しかしサンギガトンとはいえダメージは深刻なもので回復にはかなりの時間が必要となるだろう。てんとはタカヒトの回復と情報収集の為にこの地にしばらく滞在することにした。


 「君は・・・たしかミカさんだよね?」


 「うん、そうだよ。」


 「どうして僕の看病をするの?僕の事を知っているの?」


 「知ってるよ。ずっと前からね。いままでタカちゃんの面倒は私が見ていたんだよ。だからこれからもずっと私が看病も面倒も見るんだからね。」


 笑顔のミカはタカヒトの額の汗を手拭で拭った。タカヒトの不安そうな表情にはすぐに気づいた。タカヒトにしてみればまったく知らない人から看病を受けているのだから仕方がないといえばそうかもしれない。そのタカヒトの心模様が分かるだけに尚更ミカは辛かった。それでも一生懸命にミカはタカヒトの看病をいままでと同じ様に行われた。


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