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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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インドラの暴走

 「幕じゃぞ、どうする?今度は逃げ切れるかの?隠れる所はなさそうじゃが・・・」


 逃げ切れるわけなどないと腹をくくったてんとは球体を出現させるとベテルギウスに攻撃を仕掛ける。リナにリディーネやデュポンも総攻撃を加えるがベテルギウスに致命傷を与えることができない。「力が弱いぞ。すべてをヤツにぶつけるのだ!」とてんとが皆に激を飛ばすと一斉に最大級の攻撃を放っていく。


 「みみっちい攻撃じゃのぉ~・・・あやつらを踏み潰すのじゃ。」


 ベテルギウスはてんと達を踏み潰そうと振りあげた足を下ろした。辺りに衝撃波が伝わるが寸前のところでレインボーウォールがそれを受け止めた。


 「ミカ、援護する。緑玉中級理力 カマイタチ」


 続いて、てんとのカマイタチがベテルギウスの巨大な脚を切り付けた。更に緑玉上級理力 風撃波を浴びせるとベテルギウスはバランスを崩してしりもちをついた。


 「タカヒト、今よ!リディーネもついてきて!」


 「わかった!」


 「何よ、アタシに命令しないでくれる!」


 タカヒトとリナ、リディーネとデュポンはベテルギウスの足に飛び移るとそのまま走っていく。


 「おわわわ・・・このでくのぼうが!はやく立ちあがらんかい!」


 「遅いわ!牡丹玉オーバーエレメント リ インドラ メガラウンド」


 ベテルギウスの首元まで近づくと上空の暗雲から大きな雷神の腕が現れてその巨大な拳が振り落とされた。インドラは無傷だったがベテルギウスの顔面は陥没して黒焦げになった。


 「次はアタシ達の番よ、デュポン!」


 「はいでさぁ!」


 炎の戦士となったデュポンは燃え盛る炎の拳でベテルギウスを殴り続けた。陥没した黒焦げの顔が更に陥没して焼焦げていく。


 「仕上げよ!紅玉最大闘気 獄熱地獄」


 恐ろしく巨大な火炎輪が上空より落ちてくるとベテルギウスの顔面の皮膚はただれて視界と聴覚をさえぎるほど原形を留めていない。そんなベテルギウスの瞳に赤紫白タカヒトの姿が薄っすら映った。


 「おい、休憩してんじゃねえぞ!こちとら完全回復なんだよ、オラ!

いくぜ、赤紫白最大闘気複合技バーストテラアルティメットバスター」


 ミカにより完全回復した赤紫白タカヒトの放った赤紫白色の高濃度エネルギー粒子砲にインドラは驚愕した。迫り来る赤と紫、白の高濃度エネルギー粒子砲がインドラの瞳に映るとベテルギウスと共に三色の光に包まれていった。ベテルギウスの首は折れインドラの姿はそこには無かった。


 「やったわ、アタシ達の勝ちよ!」


 リナにリディーネ、タカヒトの最大級の攻撃を受けたベテルギウスが無傷な訳が無い!・・・そう、誰もが思った。だがその思いを打ち砕く甲高い声が辺りに響いた。


 「勝てた・・・そう思ったじゃろ?残念じゃったのぉ~~。」


 「あぁぁああああ・・・・」


 リディーネの瞳に映ったのはベテルギウスの口の中から出てきたインドラの姿であった。ただれた皮膚を引きちぎるとベテルギウスは首を左右に振り先ほどの攻撃など無意味と言わんばかりにゆっくりと立ちあがった。


 「これほどとは・・・・」


 最大級の攻撃を受けてもベテルギウスはおろかインドラすら無傷な状態では勝機など全くなかった。混沌と窮奇の背に乗ったタカヒト達がてんとのもとへ戻ってきたが皆、顔色が悪い。最大級の攻撃に力を使い果たしたこともあるがそれ以上に精神的なダメージのほうが大きかったであろう。


 「私の出番はなさそうだな。」


 この最悪の状況の中、知将レイがゆっくり近づいてきた。知将レイが手を貸す必要もないほどタカヒト達は消耗しきっていた。


 「もはやこやつ等は死んだも同然。インドラ、ケリをつけてやれ!」


 「貴様、誰に口をきいておるか?ワシはこの六道を治める王であるぞよ!」


 「気でも狂ったか、インドラ!ここはピサロ様への献上地であるぞ!」


 「・・・踏み潰すのじゃ!」


 ベテルギウスは問答無用といわんばかりに知将レイを踏み潰そうとした。間一髪回避した知将レイはインドラを睨みつけると神具 風の衣を刀に変えてベテルギウスの足元を斬りつける。


 「なめるな!我が刃に斬れぬものなど・・・なっ、何!抜けぬ?・・・ハッ!」


 手応えを感じた知将レイは刀を抜こうにも肉に食い込んで動かすことができない。その知将レイの瞳にベテルギウスの手が近づいてくるのがスローモーションのように見えた。地面に叩き付けられた知将レイは意識が朦朧として起きあがることができない。そこへ無情の一撃が知将レイを踏み潰した。ベテルギウスの全体重を乗せた足をあげると踏み潰された知将レイの姿はそこにはなかった。そこにあったのは血と肉を撒き散らした塊だけであった。目を背けるミカをタカヒトは塊が見えないようにその手で覆った。


 「インドラ、おまえ・・・仲間ではなかったのか?」


 「仲間?ワシは王であるぞ。さて、目障りな虫ドモも踏む潰せ!」


 インドラ王の配下であるベテルギウスは足を振りあげるとタカヒト達を踏み潰そうとその足を振り下ろした。タカヒト達を背に乗せた混沌と窮奇の動きは遅くベテルギウスの踏み付けから逃れるのに精一杯だった。チョロチョロと動き回る虫にイライラを積もらせたベテルギウスは拳を地面に突き刺すと大量の土石を握りしめた。それを思いっきり投げると散弾銃のように混沌と窮奇の身体中に突き刺さり失速した二匹は大木に激突した。その勢いで跳ね飛ばされたタカヒト達は枝に引っかかり命を落とすことはなかった。


 「混沌、窮奇!」


 「くそぉ~、駄目だ!羽をやられた。」


 「俺もだ。脚が言う事をきかねえ!」


 混沌と窮奇はもはや飛ぶことはおろか動くことも出来ないほど致命傷を負ってしまった。木から降りたタカヒトは混沌と窮奇を連れて行こうと動かすが重量のある二匹を動かせない。そうこうしている内にベテルギウスが木々を倒しながらこちらに向かってきた。 


 「タカヒト、逃げろ。俺達の事は気にするな。」


 「何言ってるの、皆で逃げよう!」


 「バカやろう!おまえは話合いで解決する世界を創るんだろ?

  だったら、こんなところでおまえを死なせる訳にはいかねえよ。」


 「そうだぜ、タカヒト。俺達は大臣にはなれそうにないがおまえの国なら楽しそうだな・・・行きたかったぜ、おまえの・・・」


 「混沌!窮奇!」


 タカヒトが名を呼び続けたが意識もなく二匹は冷たくなっていく。てんとがタカヒトに近づくと逃げるように促した。


 「どうして、こうなるんだろう・・・僕は戦いたくないんだ・・・

  どうして幸せな世界を皆で創れないの?」


 「・・・・」


 てんとは何も言えなかった。涙を浮かべ哀しみを堪えながらタカヒト達はベテルギウスから急いで逃げていく。逃げる最中、石につまづき転んだリディーネが泣きながらわめき散らした。


 「もう、駄目だよ。逃げ切れないよ・・・もう残っているのは絶望だけよ!」


 「姉さん・・・・」


 「諦めるな、リディーネ!逃げ切れても必ず報われるわけではない。

  だが諦めれば待っているのは確実な死だけだ!」


 「うぅぅ~~ううう・・・」


 てんとが激を飛ばすと座り込んだリディーネにミカが手を差し伸べる。涙を拭きながら立ちあがると再びタカヒト達は走りだした。最強の機械生命体から逃げ切れるわけなどない事はてんとにも分かっていた。ただそれでも足がもつれるくらい逃げれば少しは状況が変わるかもしれないという希望に賭けていた。


 「・・・こんなことって・・・・」


 希望などなかった。タカヒト達が木々の生い茂る森を抜けた先は底の見えない崖が広がっていた。戻ろうにもすでにベテルギウスが迫っていた。崖の手前で逃げることも出来ずにタカヒト達が立ちすくんでいる姿はベテルギウスの肩に乗っているインドラ王からも見つけることが出来た。


 「諦めたのじゃな?このインドラ王から逃れる術などないのじゃ。

  さあ、ベテルギウスに踏み潰されてレイのような無様な姿をさらすのじゃ!」


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