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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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雷神(インドラ)

 「ジジイ、俺たちの邪魔をするとはいい度胸だな!」


 「七鬼楽と知っての無礼か?」


 饕餮とうてつ檮机とうこつは雷神インドラと偶然出遭ってしまった。七鬼楽の暴れん坊二匹に魔物兵五千匹が相手では流石に分が悪くインドラも杖をついてフラフラしている。数千年生きたその身体から衰え以外の言葉は当てはまらず最強とはほど遠いかもしれない。


 「饕餮とうてつ、身体が羊、曲がった角、トラの牙に人の顔・・・・。檮机とうこつは虎の身体に人の頭、猪の長い牙に長い尻尾・・・まだ、生きておったか・・・神の創りし、いや、いたずらで作られし失敗作よ。」


 「ジジイ・・・殺してほしいらしいな。」


 「フォ、フォ、フォ・・・失敗作が図に乗るでないぞよ。」


 「ジジイ!」


 饕餮とうてつは念力を使うとインドラの身体は曲がらない方向にグニャリと曲がった。背骨が粉々に砕かれるとそこに檮机とうこつの鋭い牙がインドラの頭部に突き刺さる。刺した牙に血が滴ると痛みを堪えきれないインドラは悲鳴をあげた。頭部を噛み砕いた檮机とうこつはインドラを放り投げた。地面に叩き付けられたインドラは立ちあがれない。 


 「七鬼楽を舐めるな!」


 饕餮とうてつは確かに神々によって創られツギハギだらけの身体を持っている。だがそれと引き換えに得たものが念力という強大な力だ。饕餮とうてつの念力はインドラの関節を粉々に砕くと同調して悲鳴も激しいものとなっていく。立つ事もままならないインドラはボロ雑巾のようになっていた。 念力を使った饕餮とうてつも疲労は隠せずその場に膝をついている。


 「ハァハァハァ・・・馬鹿にするヤツは許さん!」


 「馬鹿になどしておらん。真実を語ったまでよ。」


 饕餮とうてつ檮机とうこつもいや、その場にいたすべての者が一斉に倒れているインドラを見つめた。七鬼楽の攻撃を受けてボロ雑巾のようになっているはずのインドラが無傷のまま立っていたのだ。


 「なっ、何故・・・・」


 「ふう~・・・ワシには念力は効かぬよ。」


 雷そのものであるインドラには念力や直接攻撃といった類は一切受け付けない。ため息をついたインドラは左腕を天に向けると雷雲が上空を包み込んだ。その左腕を振り下げると同時に無数の雷が地上に落ち五千匹の魔物兵は一瞬にして黒焦げになった。饕餮とうてつの目に黒焦げになった檮机とうこつの姿が映った。


 「・・・・・きっ・・・さま・・・ぐうぅ・・・・・」


 頬に汗が流れるのを感じながら饕餮とうてつは念力を使うがそれも限界に近づいていた。頭を押さえ苦しみだす饕餮とうてつに雷神インドラは笑みを浮かべ眺めている。


 「だから失敗作と言ったであろう。貴様の念力には限界があるのじゃ・・・その昔、神々の護衛の為にある人造生物計画が持ちあがった。実験体第五号、それが貴様の名じゃ。廃棄したはずじゃが生きておったとはのぉ~。貴様を造り廃棄したのはこのワシじゃ・・・さて、お喋りがすぎたかの?失敗作はワシ自ら処分せねばの!」


 「ちっ・・・くしょう・・・」


 雷撃が饕餮とうてつに降り注ぐと黒焦げの彫刻が出来あがった。その彫刻をインドラは軽く押すと地面に叩きつけられて灰となり消えていく。用事を済ませたインドラは再び上空に浮遊するとある目的の為にその場から飛び去った。


 「リナ、驚異的な力を感じる・・・部隊を展開させるぞ。」


 アスラの一言で五千の魔物兵が一斉に分散していく。リナもてんともその驚異的な力を感じていて木々の下に隠れるとしばらくしてからインドラが飛来してきた。てんと達の存在に気づいていないインドラは飛び去っていった。ケインと最強の名を二分するインドラとの遭遇を回避することが出来たアスラは胸をホッと撫で下ろした。だが向かっていった方向に驚愕した。


 「てんと、リナ。ヤツを、インドラを追うぞ!」


 「何故?インドラとは遭遇したくなかったんじゃないの?」


 「私の読みが確かならヤツの狙いはベテルギウスだ!」


 「ベテルギウス?」


 ベテルギウスがどのようなモノなのか?てんともリナも全く分からなかったがアスラが動揺を隠せないところを考えるとただ事ではなさそうだ。アスラは五千の魔物兵に本陣への進軍を命令した。アスラの背中から鳥のような翼が現れるとリナを連れて、てんとと共に雷神インドラを追っていく。アスラの飛行速度にてんとは着いて行くのがやっとであったがそのおかげで前方を飛行しているインドラを発見することが出来た。アスラの指示を受けるとリナは牡丹玉ハイエレメント インドラをインドラに浴びせた。ほとばしる雷撃が直撃したインドラは背中に違和感を感じた。


 「なんじゃ?背中がかゆいのぉ~。

  んっ?あやつは・・・アスラじゃな。何か用かな?」


 「インドラ!貴様の目的はべテルギウスだな!」


 「はぁ~~ん、何のことかのぉ~?」


 とぼけるインドラにてんとは球体攻撃を仕掛ける。ハエを追い払うようにインドラは嫌がって地上に降りていくとアスラ達も追っていく。


 「ふぅ~、ひつこいのぉ~。」


 地上に降り立ったインドラは杖をついて長い白ヒゲを撫でている。余裕の表情を浮かべるインドラにリナは雷撃を浴びせるがダメージをあたえることが出来ない。


 「無駄じゃよ、雷獣のお譲ちゃん!

  ワシは雷神であるぞ。雷の類は一切効かぬのだよ。」


 雷神インドラの言った事は確かなことであった。雷の神を相手に雷撃が通用するはずはなくアスラとてんとの攻撃だけがインドラ打破への活路である。アスラはスピアを手にするとてんとも緑色の輝きを放つと球体が現われた。


 「コレコレ、年長者に暴力はいかんぞな。」


 「普通の年長者なら敬意を払い丁重にもてなすが・・・貴様は違うだろ?」


 アスラは持っているスピアをいきなりインドラに投げつけた。スピアは突き刺さる寸前、黒焦げになるとインドラはニヤリと笑った。てんとはアスラの行動に少し困惑した。自らの武器を投げつけてインドラに黒焦げにされてしまったからだ。不可解な行動に疑問を感じながらも攻撃手段を失ったアスラに代わりてんとが攻撃を仕掛けようと前に出た。


 「てんと、インドラを倒すのは私だ。」


 てんとはアスラの言葉に疑問を感じているがいままでの事を考えるとアスラは理に適っていない行動はしていない。アスラを信じてリナとてんとは少し距離を取る様に後退した。背中の翼が小さくなると完全にアスラの背中からそれは消えた。次にアスラは懐に手を入れると数十枚のカードを取り出した。手に収まるくらいのカードをアスラは器用にきっていくと伏せられた五枚のカードを空中に浮遊させた。


 「何が出てくるか、楽しみだわい。」


 インドラは白ヒゲを撫でながらアスラを見つめていた。アスラがすべてのカードをひっくり返すとスペード二枚とハート二枚それにクローバー一枚が現れた。


 「スーペアの攻撃」


 インドラに小さな石ころが数個当たった。頭をおさえてはいるが大したダメージは与えられないようだ。再びカードをきり直していると今度はインドラが右手を上げた。


 「つまらん遊びだわい。もう少しまともなものは出んのか。」


 インドラが雷撃を繰り出していくとアスラは素早いステップでそれらをかわしていく。そしてまた五枚のカードを空中に浮遊させた。そんなつまらない遊びに嫌気をさしたインドラは頭上に雷雲を発生させるとニヤリと笑みを浮かべる。


 「おまえの遊びなど付き合っておれんでの。これで終いじゃ!」


 雷雲からおびただしい数の雷が打ち落とされていくがアスラは微動だにしない。球体がアスラを守るべく飛んでいくがそれも間に合わない。直撃は避けられないと誰もが思った。だがアスラの頭上に雷撃が落ちる瞬間、雷撃が何かに当たって跳ね返った。そしてそれはインドラに戻り直撃した。


 「ぬぐっ・・・・ぐおぉ~・・・」


 雷撃の直撃を受けたインドラは胸を押さえ苦悶の表情を浮かべている。


 「今度はうまくいったか。

  私のカードはフルハウス。変換跳ね返し技の味はどうかな?」


 アスラは再びカードをきり直していくとまた五枚のカードを並べた。インドラの表情が険しいものに変わると空中に浮遊しながら雷の塊を頭上に創りだす。雷の塊を投げつけると辺りの木々を巻き込みながらアスラに近づいていく。しかし、アスラは冷静にカードをひっくり返すと笑みを浮かべた。


 「!・・・ストレートフラッシュが出るとは運がいい。」


 アスラはカードを懐にしまうとゆっくりインドラに歩み寄っていく。雷の塊にアスラが当たることはない。何故ならアスラ以外のすべての者が動くことも出来ずに止まっているからだ。アスラは止まったまま動かないインドラを雷の塊の前に運ぶと再びアスラはてんと達のいる位置に歩いていった。次の瞬間、再び時が流れていくとインドラは目の前の雷の塊に驚愕した。


 「うげげげ、おげっ、がぼぼぼ!」


 属性が同じ雷撃にはダメージを受けることはないが雷の塊に巻き込まれた木々がインドラの身体を切り裂いていく。自ら創り上げた雷撃を受けて困惑の表情を浮かべている。


 「このワシが・・・ここは退却せねば!」


 木々により身体中の皮が剥がれて肉が削ぎ落とされた。大量の血を流しながらも逃げようとするがアスラとてんと、リナがそれを阻止すべく取り囲んだ。額から汗が流れ落ちたインドラは小さな雷の玉を創り目の前に放るとそれは激しく閃光した。


 「うわあっ!」


 アスラ達が眩しさに手で目を覆い隠す。そして閃光が消えたその時までインドラが消えたことには誰も気がつかなかった。


 「ヤツの目的は分かっている。後を追うぞ!」


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