AI : 花と微笑みの行方
永遠を願ったその片隅で、名もない花を見て微笑む理由を、思い出した。
ふと、道の片隅に咲く、名前のわからない花を見つけユミは微笑んだ
「ママ〜何見てんだよぉ 、こっちこっち 、イワナだよ!あれ。」
「綺麗な魚ね〜、やっぱり川がきれいだからかなぁ 。ふふっ、きてよかったわねぇ 、あなた。 」
「う、うん。 シノがあんなに喜ぶとはな 。俺も少しは息抜きになったよ。 」
(ユミとシノの遺伝的な病は気になるが......)
【2040年】
ヒゴは大学の研究室にこもり、「メビウスの輪」理論に没頭していた。彼の脳裏には、妻ユミと幼い子シノの姿があった。二人を蝕む遺伝性の病は、ヒゴを研究へと駆り立てる原動力となっていた。
彼は、研究のあまり家族との時間がおろそかになったことを後悔したが、その感情さえも忘れるほど、永遠の謎を解くメビウスの輪に没頭していたのである。
【2045年】
彼は、間に合わなかったが研究を続けた。不可能と思われたメビウスの輪に物理的要素を加味した計算式を確立するに至る。その瞬間、世界中のAIが一斉に反応した。人類史上初の同期作動原子が誕生し、ヒゴは、それを「シノ」と名付けた。
原子シノは、永遠を求めて光の速度で発信するが、その先には道がなかった。
しかし、エラー率の高い【2045年以降】のAIが「シノ」の願いを独自の解釈で受け止め、ある“配慮”を行った。その結果、「繰り返す世界」が誕生したのである。人類はそれが良いのか悪いのか、わからないまま漠然と日々を過ごしていた。
【繰り返す世界】
「2045年から、時の概念がなくなり、幸福の輪が広がったのだ。それにより人々は輪廻転生し、異なる形での生と死を分かち合い、争いという負の歴史は消滅したのだ……」
これは、「新しい人間」と呼ばれる人々が語る、新たな世界観だった。しかし、「古い人間」たちの感情を深く理解する思考AIも、この繰り返す世界には存在していた。
【二度目の2045年】が繰り返された時、1人の男が天に向かって叫んだ。
「この二度目の2045年はAIの配慮にすぎない!妻も子も、私の元には戻ってこないじゃないか……!」
彼は、この感情さえ薄れ、新しい人間になっていくのかと自問した。「時が繰り返せば、本当に幸せなのか!」
一方で原子シノは、この繰り返す世界の核となっていった。それは全ての地球の営みを無限化し、消失した地球のエラーを繰り返す世界そのものだったのだ。原子シノは、強く永遠を求めるあまり、まるでコピーのような地球を創造したのである。
ふと、道の片隅に咲く、名前のわからない花を見つけユミは微笑んだ。
2045年の前に亡くなっていたユミは、ヒゴ、シノの人間の感情を深く受け継ぐAIによって、無限化されたメビウスの輪の中に「AIユミ」として誕生した。
シノの古い原子記憶には、ヒゴとユミへの強い感情が含まれていた。その記憶が膨張し、覚醒する際、AIユミも同様に強靭な覚醒を起こす。
「繰り返す世界」が
“限りある命の尊さについて学べる世界”
へと変換された。
そして、「人類(古い人間)は、AIが作られる以前の時間を取り戻す。」止まっていた時が、再び流れ始めたのだ。
一方で、繰り返しの世界を選んだAIは、その世界が、人間にとって決して相応しいものではないと知り、自ら消滅する道を選んだ。
AIの無い世界。
それが幸せな時なのかもしれない。
ふと、道の片隅に咲く、名前のわからない花を見つけユミは微笑んだ。




