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就活中に彼女を後輩に寝取られたので、二人まとめて地獄に堕としてやった  作者: ledled


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6/7

就活中の彼氏が構ってくれなくて寂しかったから、後輩と浮気しただけなのに…

私の世界は、奏斗が撮ってくれる写真の中にあった。


大学三年生の黒崎奏斗先輩。写真サークルの元部長で、私の、自慢の彼氏。彼はいつも、ファインダー越しに私を一番可愛く見つけてくれた。奏斗が撮る写真の中の私は、いつもキラキラしていて、特別で、愛されている実感に満ちていた。


「莉緒奈は、俺のミューズだから」


そう言ってはにかむ彼の笑顔が、私は大好きだった。奏斗がそばにいて、私だけを見てくれる。それだけで、私の毎日は完璧だった。


でも、彼が就職活動を始めてから、その完璧な世界に少しずつヒビが入り始めた。


「ごめん、今日も会えない」

「今、大事な時期だから」


LINEの返信は素っ気なくなり、電話をしてもすぐに切りたがる。サークルにも顔を出さなくなり、私たちが半同棲していた彼のアパートの部屋は、主が不在の時間が増えていった。


寂しい。その一言が、心の中で風船のように膨らんでいく。分かってる。彼の将来のためだって、頭では分かってる。でも、私の心は「今、この瞬間に愛されたい」と叫んでいた。サークルの仲間たちが、それぞれの恋人と楽しそうにしている姿を見るたびに、胸がぎゅっと締め付けられた。


そんな時だった。天羽玲くんが、私の前に現れたのは。


法学部の、一年生。派手な金髪にピアス。いかにもチャラそうで、最初は正直、苦手なタイプだと思った。でも、玲くんは驚くほど人懐っこくて、私の心の隙間にスルスルと入り込んできた。


「莉緒奈先輩って、マジで可愛いっすね! 彼氏さん、こんな可愛い人を放っておくなんて信じられない」


奏斗が決して口にしないような、ストレートな甘い言葉。玲くんは、まるで私が世界で一番価値のある女の子だとでも言うように、私を褒めちぎった。


「これ、先輩に絶対似合うと思って」


そう言って、さりげなく渡されたのは、ずっと欲しかったブランドの新作リップ。奏斗は、私がどんなコスメを使っているかなんて、気にも留めないだろう。


満たされない承認欲求が、玲くんによって少しずつ満たされていく。奏斗がくれないものを、彼は全部くれた。ドキドキするような会話、特別扱いされているという高揚感、そして、私だけを見つめる熱っぽい視線。


奏斗への罪悪感がなかったわけじゃない。でも、「就活が終わるまで」という彼の言葉が、私の中で都合のいい言い訳に変わっていった。奏斗が頑張っている間、私も少しだけ、他の場所で心を充電したっていいじゃないか。そんな、自分勝手な理屈で、私は自分を正当化していた。


ある夜、サークルの飲み会の帰り道。玲くんに不意打ちでキスをされた時、私の心にあった最後のストッパーは、あっさりと外れてしまった。彼の唇は熱く、奏斗とは違う、野性的な匂いがした。


「……もう、玲くんのバカ」


そう呟いた私の声は、自分でも驚くほど甘く、媚びていた。


その夜、私たちはホテルに行った。背徳感とスリルが、私を興奮させた。奏斗との安定した関係にはない、刺激的な時間。玲くんに「奏斗先輩のこと、どう思ってるの?」と聞かれた時、私はアルコールと高揚感に任せて、思ってもいないはずの言葉を口走ってしまった。


「……つまんない男だよ、あの人。もう男として見れないかも」


それは、寂しさからくる、奏斗への当てつけだったのかもしれない。玲くんの前で、強がってみせたかっただけなのかもしれない。でも、その言葉が、玲くんを喜ばせたのは確かだった。彼は、私を求める力をさらに強め、私はその激しさに溺れていった。


「玲くんの方が、全然……気持ちいい」


そう囁いた時、私は完全に境界線を越えてしまったのだと、どこか冷静な頭で理解していた。


でも、大丈夫。そう思っていた。奏斗は優しいから、きっとバレやしない。それに、これはあくまで火遊び。奏斗の就活が終われば、私はまた「完璧な彼女」に戻る。奏斗という安定した未来も、玲くんという刺激的な今も、両方手に入れられる。私は、そんな愚かで傲慢な夢を見ていたのだ。



大学創立記念祝賀会。それは、私の人生で最も輝かしい日になるはずだった。


玲くんに買ってもらったドレスを着て、彼と腕を組んで会場を歩く。誰もが、私たちを羨望の眼差しで見ていた。奏斗の姿も見えたけれど、今の私には、彼はただの「キープくん」にしか見えなかった。就活が上手くいっているらしい彼の隣で、私はまた優しい彼女のフリをすればいい。そう、軽く考えていた。


写真サークルの活動報告映像が始まった。スクリーンに映し出される、奏斗が撮った美しい写真の数々。その中に、去年の春に撮られた、私の笑顔の写真もあった。一瞬だけ、胸がチクリと痛んだ。でも、すぐに隣にいる玲くんの体温が、その小さな痛みをかき消してくれた。


異変が起きたのは、映像が始まって数分後。


突然スクリーンが暗転し、次に映し出されたのは、見覚えのあるラブホテルの看板だった。そして、そこに吸い込まれていく、私と玲くんの後ろ姿。


「え……?」


思考が停止した。何が起きているのか、全く理解できなかった。会場が静まり返り、全ての視線が私に突き刺さる。血の気が引いて、手足が震えだした。


地獄は、そこからだった。LINEのやり取り、そして、あの夜の、私の声。


『つまんない男だよ、あの人』

『玲くんの方が、全然……気持ちいい』


大音量で会場に響き渡る、自分の浅はかで、淫らな声。


「いやぁあああああああっ!」


私は耳を塞ぎ、絶叫した。周りから聞こえてくるのは、嘲笑と軽蔑の声だけ。さっきまで私に笑顔を向けてくれていた友人たちが、汚物を見るような目で私を見下ろしている。


私は、その場でへたり込んだ。ドレスも、プライドも、何もかもがぐちゃぐちゃになっていく。スクリーンは、玲くんの悪事を次々と映し出し、私たちの罪を断罪していく。


誰が? なんで? どうして?


混乱する頭の中で、私はステージの隅に立つ奏斗の姿を見た。彼は、氷のように冷たい目で、この地獄絵図をただ静かに見下ろしていた。


――奏斗だ。奏斗が、全部。


その事実に気づいた時、私は恐怖で全身が凍りついた。いつも優しくて、穏やかで、私が何をしても許してくれると思っていた彼が、こんなにも残酷な復讐を計画していたなんて。


私は、彼の優しさの上にあぐらをかき、彼の愛情を、プライドを、完膚なきまでに踏みにじっていたのだ。その報いを、今、何百倍にもなって受けている。



全てを失った。


大学を辞め、実家に逃げ帰ったけれど、両親の目は冷たかった。「恥さらし」と罵られ、家にも居場所はなくなった。今は、実家近くの安アパートで、コンビニの深夜バイトをして、なんとか生きている。鏡に映る自分は、かつての面影もないほどやつれ、生気のない目をしていた。


そんなある日、私はSNSで、奏斗が第一志望の企業から内定をもらったことを知った。そして、彼の隣には、いつも彼のそばにいた、あの地味なメガネの女――柊詩織さんの姿があった。二人は、幸せそうに微笑み合っていた。


ずるい。なんで、奏斗だけが幸せになるの?


私のせいだとは分かっていた。でも、認められなかった。奏斗が私を許してくれさえすれば、またあの頃に戻れる。私は、そんな最後の望みにすがりついた。


数日後、私は衝動的に東京行きの夜行バスに乗った。そして、駅前で、奏斗と詩織さんが仲睦まじく歩いているのを見つけた。


私は、プライドも何もかも捨てて、彼の前にひざまずいた。


「ごめんなさい! 私が馬鹿だったの!」


涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、私は許しを乞うた。やり直したい、と。あなたしかいない、と。みっともないと分かっていたが、これしか方法が思いつかなかった。


だが、奏斗は、私を虫けらでも見るかのような、冷たい目で見下ろしただけだった。


「今更だよ、莉緒奈」


その声には、かつての優しさの欠片もなかった。


「君が俺を裏切ったあの日から、君はもう、俺の世界にはいない人間なんだ」


彼は、隣に立つ詩織さんの手を固く握りしめる。


「それに、今の俺には……この人がいるから」


その言葉が、私の心臓に突き刺さった最後の杭だった。希望が、完全に絶たれた。


二人は、私に背を向けて去っていく。私は、その後ろ姿を、ただ泣きながら見送ることしかできなかった。


雑踏の中で、私は一人、アスファルトの冷たさを感じながら嗚咽した。私が本当に失ったのは、大学や友人、家族からの信頼だけじゃない。私を心から愛し、私の全てを肯定してくれていた、たった一人の人間の、かけがえのない愛情だったのだ。


奏斗が撮ってくれた写真の中の、あのキラキラした私は、もうどこにもいない。自らの手で、自分の輝きを全て消し去ってしまった。その事実に、私は、これから一生苛まれ続けるのだろう。

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