私が“いた”という証明を 前編
2025年 7月14日
ふーっ...やっぱりここのカフェ...いいよね
雰囲気とか最高
私はカフェで一息つく
最近バイト忙しくて全然休めんし
ここのカフェで食べるコーヒーとケーキが私の幸せ
んーっ...!美味しいー
ともちゃんも誘えばよかったかな?
いや、どうせ、ともちゃんは彼氏とデートしてるかな
はぁーっ...いいなぁ
高校生になったら彼氏の一人や二人できるものだと思ってたのにー...
高校2年になっても先輩と全然進展しないし...
押してダメなら引いてみろ...か?うーん、私にそういうのは合わん!
恋人作りたーい!
その時、ガラス越しに一人の女性が見える
何を思ったか、私は急いで席を立ち、会計して、その後を追いかける
深く白い帽子を被り、白いワンピースを着た、その女性
その女性は私を見て、笑みをこぼした
誰...何だっけ...
でも、確かに...会ったことのある...
「覚えてない...よね?」
確か、夢を見たんだ
不思議な夢を
すぐに忘れてしまう夢で、私は忘れるのが難しいくらいの、長い夢を見た
2024年7月14日
ここは東京、日本の首都
っとと、危ない危ない
電車の中、ふらっと倒れそうになるのを耐える
最近この満員電車にも慣れてきた
はぁ...
ため息をつく
だって、学校がめんどいんだもん
「おはよー」
「んー、おはよー」
この子は親友のともちゃん
運動神経抜群の女の子
中学の頃から仲良くて、高校も同じ、そして同じ1-4というクラス
ともちゃんとは一緒にご飯食べたり、遊んだり、勉強したりしてる
「おはよー」
次に来たのが、みきちゃん
すごく失礼な言い方だけど、取り柄が少ない子
けど、何でも人並みに出来るし、上達スピードが速い
そして、ゲームがとても上手い
それで、私
私は、ゆず、白井 柚子
取り柄もやりたいことも趣味も何にもない、それが私
学校ではこの三人でよく固まっている
「でさー?そしたら流星くんなんて言ったと思う?」
今、購買で買ったパンを教室で食べている
そしてともちゃんの話を聞いてる
ともちゃんが好きな人の流星くんとの話
「んー...こうかな、『流石はともちゃん...見直したね』とか?」
「それナルシスト入ってるでしょ、流星くんはそんなんじゃありませんー」
「こうじゃない?『へえーっ...やるじゃんともこ』とかでしょ」
「もっと酷くなってるじゃん!」
「あははっ!」
「ゆずは笑わないでよー」
放課後はすぐに帰る
今日はバイトかあるから忙しい...
コンビニバイトなんだけど、やる前は結構余裕とか思ってたのに
「はい...! なるほど わかりました! レシートです 品出し? うわあああっ! すみません... あの、番号で... これ、どうするの...? 」
お家に帰って一言
「忙しいっ!」
「そんなものだよバイトは」
「そうなんだろうけどさぁ...お兄ちゃんはバイト辞めたくならない?何で続けたの...」
「夢と目標のためさ」
「...その夢と目標がただのオタク趣味、ね...」
「悪くないだろ?」
「悪くはないけど...もっとマシな趣味作ったらどうなんですかー?」
「お前には言われたくない。何でもいいから、お前も趣味を見つけろ。俺先、風呂入るねー!」
「わかってるよー...っだ」
そう言ってお兄ちゃんはお風呂に入っていった
はぁ...わかってるんだけど...見つからないもん
趣味とかわかんない、動画を見るのが趣味です! とか言えないし...動画鑑賞が趣味ってなんだよ、ってなるしね....
どうしたことやら
その日夢を見た
夢の中で目が覚めるとそこは草原だった
周りを見ても何もない、草があるだけ
空を見たら、夜だ、真っ暗
ただ、その草原の周りが一面壁で囲われていた
「夢か...」
と、言うが
あれ?意識できてるのすごくない?
「あなたは、うーん、お客さんかな? どうやってここに来たのかな?」
背後を見ると、白いワンピースのお姉さんがいた
「...あの、何ですか?これ」
「そう、知らないのね。 そうね...まあ、夢、でしょうね」
「やっぱり夢なんですか。あなたはここが夢ってわかってるんですか」
「ええ、もちろん。あなた名前は?」
「白井柚子です」
「じゃあゆずちゃんね、私は白、それだけ」
「変な名前ですね」
「そう、変な名前」
その後気まずい間が流れた
「あの、私は何でここに?」
「さぁ、夢ですし、わからない。私もあなたが何でここにいるか聞きたいくらい」
「それってどう言うこと?」
「ここはあなたたちが入れるようなところではないって事、それだけ」
「あなたたちって、それって?」
「さぁ...知っても知らなくても同じよ。
あ、時間みたいだね」
時間?あれ、なんか体が光ってる
「今日のこと、忘れてね」
ガバッと、ベッドから起き上がる
ふぁぁあ...なんか、長い夢を見た気がしたぁ
制服に着替え、リビングに行く
「あ!ゆず、あんた、昨日また机で寝てー!」
「ごめんなさーい」
「反省しなさい...まったく」
「お姉ちゃん悪いことしたらダメ!」
「...りゅーじは私みたいな人間になるなよー?」
リビングが結構賑やかだ
「いってきまーす」
気がつくと見覚えのある草原だった
たしか、今は授業中で...あ、寝ちゃった...?
「何でまたここに...」
空は黒い、夜だ
「それは同感ね、何でまたここにいるのかな?」
また後ろから声がした
どこから現れてるんだろう
「それも、第四世界では今は10時でしょう?見る限り学生さん...よね?何でここにいるのかな?」
「待って?何?第四世界って」
「...うーん、そうね、まあ、六つある世界の一つで、あなたたちが住んでいるところね」
「六つ?」
「もういいでしょ?早く起きなさい」
「起きようにも起きれなくて、それよりもあの家は何?」
色々聞かれたが、私は一つの建物に目がいっていた
「あれは私の家」
「昨日はなかったよ?いつ出来たの」
「あの後すぐに作ったの、あなた達からしたら結構な時間だけどね」
「何で作ったの?」
「質問が多いわね。...あれを作った理由はあなたがまた来るかもしれないって思ったからだよ」
「私に会いに来たって事?」
「そうとも言えるね。そして、何であなたはこの世界の記憶があるのか気になるなぁ」
「夢だし、けど、朝起きた時は何の夢見たかわかんなかったよ」
「ここは意識して、あれを潜らないと来れないはずなのに、おかしいわね」
「よくわかんないけど、それはおかしいね。私がイレギュラーだから?」
「その可能性と、もしくは...」
「...もしくは?」
「もしくは何だ?そんなに俺の授業つまんなかったか?」
あれ...ここは教室?
さっきまで...何だっけ...
えーっと...
顔を上げて先生の顔を確認する
すごく笑顔だ
その笑顔が超怖い!
「あは...あはは...」
「田中先生怖くない?」
昼の時間、三人でお話をする
田中先生は私が寝た時の先生
「あれはゆずが悪いんじゃない?」
「だからって反省文はないでしょー、どの時代の人」
「縄文?」
「その時代は神はいても、紙はないよ」
「今日もバイト入ってるのにー...そもそも作文とか書けないっての」
「ゆず、時代はAIよ」
「その手があったか!みきちゃん天才!」
「ついでに好きな男の子のおとしかたも...」
「押してダメなら引いてみろ!」
「てかー?ゆず?気になったんだけど、もしくは?ってなに?」
「え?あぁ....えーっと...私にもわかんない」
「何それ」
私の一日!
朝起きて、ご飯食べて!学校行って、ご飯食べて、バイトをして、帰って、お風呂入って、ご飯食べて、寝る
何だけど...今日その日常が崩れた
「...あー、またここか...」
目覚めたらいつもの草原
今日はしっかりベッドで寝た
「また来たの?」
またしても後ろに現れる白
「来たくて来たわけじゃないの」
「...あなた、混じったわね」
白は私の正面に座って話を続ける
「混じった?どう言う事?」
「この世界によ。となると今頃あなたの体は昏睡状態ね」
「...ん?え?なんで...」
「あなたがここに居すぎたせいね。
別世界の住人がそことは別世界に移動した際、どうにかその世界に適応すべく、その世界の神が魂を変化させてくれるのよ」
「でも、あなたの場合は少し不思議な状態、夢、という状態を使ってこっちに来ちゃった。
その結果、こっちの世界に魂を定着させようとした、だから今のあなたの本体は魂の抜けた抜け殻ってわけ」
「じゃ...じゃあ、私、どうやって帰れば...?」
「この世界で神を見つけ出し、説得させるしかないわね」
「説得って...そもそも本当に神とかいるの?
どうせすぐこの夢も目覚めるでしょ」
「そうじゃないとあなたも私も困っちゃうわ」
「私が困るのはわかるけど、あなたも困る?」
「ええ。詳しくは話せないけど、少し言うわ。
私はこの世界と別の世界を繋ぐ、この草原に門番としているの。
だけど何の許可もなく別の世界の住人をこっちに入れちゃったら怒られちゃうわ」
「へー、その許可って誰が許可すればここに入れるの?」
「そうね、簡単に言うなら王様、ね」
「今から許可取りに行ったら?」
「私はここから離れるわけにはいかないもの」
「そう考えると、ここの門番って仕事穴がありすぎない?
けど、許可取らないとあなたも怒られちゃうし、あなたがいないと私も帰れそうにないのだけれど」
「じゃあ、あなたが門番しててくれる?その間に許可取りに行くから」
「門番ってそんな簡単に出来るものなの?」
「そうね、1日に化け物が2体くらいがここに来るわ。
あ、そう言えばあなた第四世界の住人よね?魔法使の使い方は知らないよね?」
「そんなの使えるわけないじゃん、え?もしかしてあなた魔法使えるの?」
「この世界の住人はみんな魔法を使えるわ。
あなたもこの世界の住人になったし、使い方を知れば使えるようになるわ」
世界には主に三つの魔法がある
操作魔法、具現化魔法、強化魔法
操作魔法は物を動かす、具現化魔法は物を出現させる、強化魔法は物を強くさせる
しかし、世界に具現化魔法を使えるものは少ない、その魔法を使える人は確認されている中でも4人だけ
そして
「そのうちの一人が、私」
本の読み聞かせをされながら、白が途中に言った
「それってすごいの..?」
「具現化魔法を使えるのは確認されている中で四人だけなのよ? この世界の住人は大体39億人だから、すごく珍しいでしょ?」
「それはすごいかも」
そもそも、魔法とは古来より神から与えられし才能である
その昔、六人の村人は神々に贈り物を届け、その褒美として、一人一人に世界を与えていった
一つの世界には武力を
一つの世界には魔法を
一つの世界には種族を
一つの世界には知恵を
一つの世界には富を
一つの世界には希望を
そのうちの2番目が我々の住む世界だ
この世界を貰った村人は、世界の神 ピーシニア、として讃えられていったのだ
我々は、世界の神の名をかりて、この世界をそのままピーシニア、と言われるようになったのだとか
以下は魔法簡単講座
「一つ気になったんだけど、何で私この世界の文字読めるの?」
「それも、この世界の住人になったから」
「なんか、不思議な感じ、読めそうもないのに、自然と読める」
「神の力はすごいからね」
さて、っと白は立ち上がり、続けて私も立ち上がる
「門番をするために魔法の特訓をします」
「お願います」
結構ワクワクしてる。魔法使えるとかすごいじゃん
その時だった
突然地面が光だし、目を開けたら狼っぽい人間が居た
「あれは...?こっちに向かって来てますけど」
「あれは第三世界の住人ね。
この世界を支配しようとしてるのよ、全くこりないんだから。下がってて」
言われた通りに下がる
『くたばれやーっ!!』
大声で狼が叫んだけど、なんて言ったかわかんない
狼は走りながら、腰につけてある木刀を取り出す
「そんなんだから、あなた方は馬鹿にされるんですよ」
手のひらを狼に向け、黒い何かを生成し、ものすごい勢いでぶつける
「気絶しました...?」
「いいえ? 死んだと思うわ」
恐る恐る狼に近づき、近くで座る、外傷はなさそうだけど、確かに死んでる
私は立ち上がり
「あの...殺す必要は、ありましたか...?」
「ええ、もちろん。彼らを生かしたらまた侵略しに来るからね」
「圧倒的な力を見せつければ、もう来なくなるのでは...?」
「彼らは自分至上主義の者なの、どんだけ力を見せても自分が一番って信じて疑わないから、何度もここに攻めてくるのさ」
一度死体に目を向け
「この死体はどうするの?」
「元の世界に返してあげるわ」
「自然に返るわけではないの?」
「ええ」
白は小さな声で詠唱し、それを終えると死体だけが光だし、気づいたら消えていた
「...あなたがこの門から別の世界に返せるなら、私が神に会う必要は...ないんじゃ...?」
「ここは門の出口であって、入口じゃないの。
例えるなら...心臓の弁ね」
「まぁ...詳しいことは後でね。続きをやるわよ」
「...はい」
まず最初に取り掛かったのは自分に何の魔法が使えるか
「血を取らせてもらうわ」
私は二の腕を出し、白は自分で生成した注射器を使って刺して、血を取り出す
一度自分の家に帰り、持って来たのは1匹の虫が入った容器
「これは魔法虫って言って、この子に血をかけた時の反応で何の魔法が使えるかわかるのよ」
虫が死んだら操作魔法
虫が活発に動き出したら具現化魔法
虫が変色したら強化魔法
何も起こらなかったら適性無し
白は容器に血を一滴垂らし、虫にかける
「...これは、操作魔法ね」
私は操作魔法が使えるのか
白は続けて、少し特殊な、と呟いていた
そして白はまた家に帰り、虫を置いて来た
「じゃあ、始めるよ。
まずは空中に漂っている魔力を感じとって」
「...いきなり難しくない...?」
「手を貸して」
そう言われたので、手を出すと、白はその手を握りしめる
すると、見えて来た
暗い闇の中、見えて来た、光が
星のように輝いてある魔力
何千、何万もの光が宙にあるのが分かる
空中に漂っている魔力を自分の体に流しこむ
そして自分の中を魔力が流れている、その流れている魔力が、お腹を通り、足を通り、右手へと集まって来た
「じゃあ、これを浮かせて見せて」
白の手のひらにある、手のひらサイズの石
私はそれに手のひらを向け、集まった魔力を石に流し込む
「浮いた...本当に...私が浮かせた...」
と、集中を無くすと、落ちる
「始めてにしては上出来じゃない?才能ってやつかしらね」
「才能...」
何もなかった私は、別の世界で才能を見つけるなんて
その、才能という言葉と、魔法を使うのが楽しい、その二つが合わさって、私は魔法に打ち込み始めた
これは、私が不思議な夢から目覚めるまでの一つの物語
ここに定着して一週間が経った
第三世界の住人から来た奴らは通称、獣人と呼ばれている
第三世界の住人は毎日ここに来ては白に殺されて行った
「何で複数人で一気に来ないの?やっぱ馬鹿だから?」
「それもあるけど、まず別の世界に行く際、世界の門を潜らないといけなくて、その世界の門は一度に二人までしか通れないの。
しかもクールタイムがあるから、一度に攻めれないわけ」
だ、そうです
私はそんなの潜った覚えはないけどね
「まあ、多分、獣人達はここを処刑場にしてるんじゃない?」
「処刑場?」
「ここに来た獣人は大体が汚い身なりだったでしょ?だから、処刑場にして、あわよくば侵略出来ると思ったんじゃない?」
「じゃあ、綺麗な身なりの人は?」
「自らが勇者になって侵略したらチヤホヤされると思ったからきた馬鹿じゃないかな」
獣人は狼以外にも、猫、犬、リス、たぬき
地球でもよく見る動物達が人型になっていた
一回、可愛い獣人飼ってみようよ
と提案したらすぐさま却下された
危険が及ぶ行為は絶対にしちゃダメ、だそうです
白は私のお母さんか!
この一週間、私はとにかく魔法を勉強した
現世の私が見たらびっくりだね
何にも打ち込めなかった私が、一つのものに集中して、取り組んでるなんて
後で知ったんだけど、白は魔法の三種類を全て使えるって
それで今日
「あなた、もう相当強いから門番できそうね」
白の家の一室を借りて本を読んでいる時、そう言われた
「いや、そんな強くないと思う、白の何倍も弱いじゃん...」
「言うけど、私を比較対象にしない方がいいわね。
私強すぎるから」
「何それ、五条悟?」
「それは知らないけど、あなたはもう門番出来るくらい強くなったわ。
今日一日、門番やって見なさい」
「...わかった」
今日は門番の職業体験をする日になった
「門番って、家でお菓子食べていいの?」
紅茶を飲みながら白は答える
「ええ、別の世界の住人が来たら地面が光るでしょ?
それを確認してから出るだけでいいの」
「思ったより簡単、これなら本読みながらでも出来るね」
私は部屋に行き、魔法の書かれた本を持って来て、リビングで読み始める
正面では白が紅茶を飲んでいた
本を読んでから3時間が経つ頃
それは訪れる
草原が光だし、今回は牛の獣人が見えた
「来たわね、はい、行ってらっしゃい」
そう言って手を振った白に
「...行って来ます」
と返事をして家を出る
ポケットには白が作ってくれた、頑丈な石が20個
『聞いてた門番とちゃうなぁ』
何て言ったかわからないけど、牛は戦闘体制に入った
牛は両手斧をもっている
全長は3メートルはありそう
その身なりを見るに、死刑囚だろう
斧をもって牛が突進してくる
そして、大きく斧を振りかぶり、落とす
私は自分自身を操作して、その攻撃を避ける
自分を操作することができるのは精々2秒だけ
なんだけど、その2秒がありがたい
けど、「衝撃派強っ!」
煙が舞い、晴れると
牛はいない
急いで周りを見るが
『どこを見てるのかなぁ?』
その声は後ろから聞こえてきた
見えた光景は斧が頭に振り落とされる直前の光景
死に直面したとき、思い出す
〜〜〜〜〜
「そう、思い出して、あなたはアレらを操れる」
「あれら?何を操れるの」
「全て」
〜〜〜〜〜
それを思い出した時、全てがスローに見えて、何もかもが透き通って見えた
相手を...操る
私は目を開いて牛を見て、振り落とす前に牛を空中に浮かして、遠くに投げる
いつのまにか透き通って見えたものは無くなっていた
「できた...。相手を、操れた...?」
って、そんなこと言ってる場合じゃない
土埃を振り払い牛は姿を現す
その牛目掛けて、石を5つ飛ばし一つは壊れされたが、まずは4つが頭に命中
続けてもう5つを、フラフラしている両足にぶつけ倒れさせる
膝をついて倒れている牛のお腹に、鋭い棘を持った石を飛ばして、お腹を貫く
飛ばした手は、震えていた
そして倒れて動かない牛
これは...
「ええ、死んだわ」
気づけば隣にいた白に少し驚く
「でも、よくやったわ...」
私は、白に抱きつかれていた
私はそれに抵抗しなかった
「一つ聞くわね、第四世界に戻りたいのなら、ここで神を探さないといけない、と言うことは国を通る、そのために許可証が必要、私が許可証を発行してもらうまで、あなたは人を殺せる?」
「私は...」
「許可証が発行されるまでどのくらい時間がかかるかわからない、私もいない、その間殺さないといけない。
し、そもそも許可されるかわからない、それでもあなたは帰りたい?」
「...うん、帰りたい...」
「そう、わかったわ。あなたはもう門番としての力は持っている。
けど精神がまだダメね、まあ、人を殺して何も思わないのはおかしいけど...」
「...大丈夫、私がなんとかするわ」
そう言って頭を撫でてくれた
その一周間後、白は許可証を貰いにここを出て行った
家には大量の石が置いてあった
私は残された家に一人で本を読んで、過ごした
1日目
敵は獣人で、二人で来た
猫と犬、手強そうに見えたんだけど
二人でずっと喧嘩してて、横から石を放って撃退
その日は牛と戦った時に見えたあの不思議な感覚を知りたくて調べていた
2日目
敵は大男だった
おそらく第一世界の武力の世界の方から来た
その敵は
「自分より強いものを求めてここに来た。勝負を受けて欲しい」
と、この世界の言葉で喋ってくれた
私は承諾し、戦った
大男は刀を持っていた、力強い一閃に少し押されて行って苦戦したが
地面に尖った石を設置して、それを踏ませ
焦っているところに石を放って撃退
苦戦はしたが、牛戦のようにはならなかった
その日も調べていた
8日目
獣人の敵を倒して、不思議な感覚を調べていた
そして、その不思議な感覚の正体がわかった
私は時間を操作していた
白が言った、「全て」 これはあなたは時間も操れると言っていたのかな
しかし、時間を操れると認識しても操ることはできなかった
私は時間を操るために、今日も勉強する
白に褒めて欲しかったから
12日目
死体の山がどんどん増えていって匂いがキツくなって来たころ
時間は誰にでも操れるものではないとわかった
じゃあ、何で私は時間を操れるのか...そして再現方法を調べるようにした
椅子に座りながら窓の外を見る
白、遅いな...
少し涙が出てくる
「あれ...なんで...涙...が...」
よくわからない感情が私を襲った
17日目
敵がやって来た
白は毎日、こんなことをしてたんだ...
疲れながら椅子を立ち、敵に会いに行く
今日は虎だ
虎は私を見て、体勢を低くした
私はポケットに手を入れ、石を三つほど掴む
「がぁうっ!」
吠えながら四足歩行でこっちに走ってくる虎に石を放つ
いつもはこれで負傷して、焦っているところを貫くだけでいいのだけど...
横に飛んでかわした...!
正直、私の石の速度は速い、それをかわされたのは、白以外じゃ初めてだった
嘘...
どんどん近づいてくる虎
ありえないことが起こった時、人間はただ恐怖するしかなかった
吠えながら向かってくる虎に、手が震えた
急いで自分を操作しようとしたが、集中力がなく、魔力を込めることができない
なんで!...なんで!
ま、まず落ち着いて...魔力を...
息を荒くしながら心の中でそう唱える
自分の手と虎を交互に見る
距離はもう遠くない...焦っちゃダメ...
っ...!?
これは...時間が止まって...る?
虎は走っている途中で、ピタッと止まっていた
また、綺麗な光が見える
私はこの感覚が、好きだ
この感覚を忘れないように...
落ち着いて、私はポケットから丸い石を取り出し、虎にぶつける
石は虎に当たってからビクともしない
そして時は動き始める
「!?」
突然吹き飛ばされた虎は飛ばされながら困惑していた
これを操れば...私は...白に...
そして、時間を操れるなら...止める以外にも...
なんて考えていたら、土埃の中から虎が現れる
そう、今は戦闘中。...集中...焦らない
またしても吠えながら向かってくる虎に尖った石を四つ取り出し、放つ
四つが別方向に進み、逃げ場をなくなった
と思ったら、予想以上のジャンプをしてかわす
推定5メートルを飛んだだろう
虎の目がギラリと私の方を見る
けど、想定外は、想定内...!
するとどこからともなく下から尖った四つ石が飛んできて、虎を貫く
その石は、さっき放った石だ
私に集中を向け、それに気づかせなかった私の勝ち
虎が落ちて来て鈍い音がする
私も膝をついて一休み
疲れたし、怖かった
けど、収穫はあった
私はあの感覚を忘れないように記録した
24日目
今日も今日とて再現しようとしている
が、
「ダメだぁ...」
草原に倒れ込んでそう呟いた
「お疲れのようね」
「っ!?」
その言葉と声に私は立ち上がって、それを見た
「...白」
「ええ、ただいま」
途端、涙が溢れて来た。そして私は走り出し、抱きついていた
自分でも何をしているのかわからなかった
「大丈夫よ...あの山は私が何とかしておくね」
死体の山を見て白はそう言ってくれた
「うん...」
今日はすごく気分が良く眠れた
25日目
次の日私はまず聞いた
「隣の人は...?」
昨日から白の隣にいるその人に目を当てた
「彼女は夢見、明日から門番代理をしてくれる子」
「夢見...です...」
「代理? というか、私許可証、発行されたの?」
「ええ、これをあなたに」
小さいカードを取り出し、それをくれた
「あなたの血があったから、この許可証を作れたの」
「あー、あの時の...」
「そう。で、代理というのは、今から私とあなたは旅をしましょう」
・・・
「あなたは私がいないと何をしでかすかわからないもの。
それに、神を探していると王様に言ったら、お前も着いていくことが、必要条件、だって。
だから、夢見に代理として守ってもらうことにしたってわけ」
「は、はい...!白様の代わり、頑張ります...!」
「と言うことだから、支度してね?」
私はフリーズしてた
私は白がいない間に考えて、一つの結論に辿り着いた
私は白が好きなのだ、と
ちょっ...!?好きな人と、二人で!
嘘嘘!!
待って無理無理無理!
「ゆず?」
名前を呼ばれ焦ってしまう
「にゃ、にゃんですか!」
...すごく恥ずかしい
体を縮こませて、顔を真っ赤にする
しかし、私のためにここまでやってくれたのに
なのに私はこんな事を思って...
恥ずかしいぞ私!
「ありがとう...」
「? だから、早く支度してね?」
「へ、へい!」
世界旅行デート、もとい、神を探せの始まりだ!
続く