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腹切りドライブ!!

私は外の景色が好きだった

私の教室の窓から見える、校庭の景色が好きだった

変わらない景色だけど、時間帯、季節によって

変わっていく、少しだけの変化を見たかった


私の席は窓側の1番後ろの席で、誰もが羨ましいと言う、私ですらドヤ顔したいぐらいである


そんな席から見える外の景色が1番好きで、いつも眺めていた


「今日も、いい天気だなぁ」


私はそう呟きながら手をついて頬をあててぼーっと外の景色を眺めていたら


校庭の真ん中にうっすらと、誰かが居るのが見える


「あれ、今授業中なんだけどな…」


そう思いながらよく目を凝らして見てみると

上半身裸の男がなにかをしているように見えた


「あー…またか…」


私は彼のことを知っている

彼は切腹が趣味なのだ、いつも腹切り!!とかよくわからないことをいい、おもちゃの刀でお腹に刺すのだ

前に、なんでそんなことをするのか?と聞いたら


「いやー…ちょっとカマキリを増やしてしまって…」


と、意味のわからないことを言っていたので、私はそれを趣味だと思っている

クラスのみんなも特に彼の趣味には感心がないようで、あーまたあいつ切腹してんのー?ぐらいなのである

彼の切腹が終わると、いつも先生達に止められて、職員室まで連れて行かれる

それが一連の流れなのである


「あーあ、また先生に連れて行かれてるなぁ…」


そう思いながら、私は授業に集中することにした

授業が終わっても戻ってこない彼の姿が少し気になり

長い渡り廊下を歩きながら、1階にある職員室まで行くことにした

職員室から先生の怒鳴り声が聞こえる


「桜野!!お前はいつもいつもなにがしたいんだ!!」


彼が先生にまだ怒られていた


「いや…ちょっと腹切りをドライブしたいんです…」


「意味がわからん!ちゃんと授業受けんか!」


先生にどちゃくそ怒られても彼は少しも反省してないのである

そんな姿を見ながら、職員室の外で彼を待つ


「すいませんでした…」


彼は少し落ち着いたような声で、職員室から出てきて、私を見て言った


「なんだ…水谷か…なにをしてるんだ?」


「また切腹してたんでしょ?飽きないねー」


そんな話をしながらも彼の後をぬめぬめと付いていく、そんな日常が私は好きだった


2人で2階にある教室へと戻っていくと

「おー、桜野!また腹切りしたんか!」

「今日はうまく腹きれたかー?」

「腹切りドライブ!確定!!」

などなど多数の声が聞こえてくる

中には腹切りドライブの目覚まし時計(税込13.480円)(Amazon価格)を鳴らして彼を揶揄うものもいる


「今日も腹は切れなかった…俺はいつか腹を切りたい…」


そんなことを言いながら彼はクラスの揶揄いをスルーしながらも自分の席に着く

私も、彼の姿を見ながら自分の席に戻ると

「あ、来夢ちゃんお帰りー」


隣の席の青木さんが声をかけてきた


「ただいま、また切腹してたから迎えに行ってやったよ」


私はそんな会話をしながらも自分の席に座る


「来夢ちゃんも毎回大変だね、確か幼馴染なんだっけ?」


「違う、ただの飼い主とペットだよ」


「またまたーそんな事言っちゃって」


私と彼はたまたま家が近くて、たまたま小学校から一緒で、たまたまの関係なのである


「ねー来夢ちゃんはなんで桜野くんを迎えにいくの?」


「んー、なんでだろーね、ほっといてもいいんだけどね」


「もしかして…好きなの?」


「いや嫌い」


「はっきり言うね…w」


そんなたわいもない会話をしながら、授業のチャイムが鳴り、先生が入ってきた


「席につけー!」


みんなががやがやと席に座り、先生の授業が始まる

私はまた自分の席から、校庭の景色を見始める

変わらない、いつもの日々、それが好きだった


いつのまにか、授業が終わり、放課後になっていた

私は帰宅部なので、さっさと帰ろうとすると


「水谷、一緒に帰るか?」


彼がそう話しかけてきた


「まあ、近くだし、いいよ」

と返しながら、玄関まで歩き、靴を下駄箱から出して帰ろうと思った時だった


「桜野くん、ちょっと待って!」


隣の席の青木さんが彼を止めた


「ん?なんだ…?」


「あ、あの…ちょっと話したいことが…」


そんな会話をし始めたので


「私は先帰るぞーばいばーいまたねー」


青木さんが彼を止めた理由はいまいちわからないが

邪魔をしてはいけない…青春は大事だ

夢にときめけ、明日にきらめけ、胸の鼓動が私のシンフォギアなのだ


帰り道にふと胸のどこかが、ちくりと痛い気がしたが、それを気にせず、私は帰った

いつもの日常が、今日で最後とは知らずに

彼は人間じゃなかった、グールなのだ…

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