第6話 中田有希side
私の名前は中田有紀、生徒会役員をしている高校2年生。
そんな私にはとても気になっている…いや、気にならざるを得ない生徒がいる。その生徒が鈴木隼人だ。彼はなんだか不思議だ。ある日を境に態度が変わった。いつも彼は影でひっそりとしていて何を考えているのか分からなかった。だがある日から彼は堂々とするようになった。気後れしなくなった。自分の行動に自信を持っていた。そんな彼のことが気になっていた。
なので私は彼を尾行?…まあついていくことにした。少し撒かれてしまったが急いで階段を登っていたが着いた先は屋上、確か屋上は鍵が壊れていて誰でも入ることができる状態だ。そんな訳無いと思って入ってみると彼はそこにいた。
(何でそこに鈴木くんが?)
私は疑問で仕方なかった。昼休み、弁当を食べるなら教室でいいし、友達と話したりすれば良い。一人になりたいなら…一人?
そんなとき、私はとある考えにたどり着いた。その時自然に口が開いていた。
「鈴木さんが屋上にいるとは思わなかったです、何をしていたのです?」
いつの間にか質問をしていた。
…まあ自分はそう思っていたので質問を間違えているわけではない。
「ちょっと涼まりに来ただけです」
涼まる?屋上で?嫌な予感しかしない。もう私の予感は当たっているかもしれない。
「早まらないでくださいね」
もうとっさに答えていた。
「涼まるなんて絶対嘘、やめたほうが良いわよ」
もちろんこれもとっさの一言、余裕がなかった。もう人生を諦めている人を止めることに精一杯だったのだ。
「そんな訳無いでしょう」
彼は否定している。顔を見るにかなり余裕がある。もう死ぬから?自分はもう終わるから?駄目だ、私の前で死ぬのはやめてほしい。
「あ!先生!」
そう言われてつい後ろを振り向いた。もちろん先生はいない。前を見る。
何と隼人がいなかった。
もう飛び降りてしまった?嘘でしょ?私が…私がちゃんと…
先生に報告しようと急いで階段を降りたらそこに隼人がいた。
「じゃあね中田さん、また後で」
軽い口調でそう言うと走り抜けて何処かへ言ってしまった。その後私は安心したと同時に彼のことがもっと気になった。
帰宅途中、繁華街に寄っていた。どうしてかと言うとここが一番効率の良い帰り道だからだ。
…まあ繁華街なのでそれなりに治安は悪いけど。
少し近道をしようと裏道を使用する。けれどこの判断が間違いだったことはすぐに分かった。なぜならガラの悪そうな男5人組に絡まれたからだ。
「姉ちゃん〜、ちょっと俺達と遊びに行かね?」
「…すみません、私は予定があるので」
「つれねぇなぁ、まあ少しだけでいいからさ」
男がそう言うと私の腕を掴んできた。
「やめてください!手を離してください!」
「そう言わずによぉ」
私が男ともみくちゃになって何とか抵抗していると一人の人影を見つけた。
「大丈夫!?」
「鈴木…くん?」
そう、隼人がやってきたのだ。
「へ、大人かと思ったらただのガキじゃねぇか」
援軍が来たとは言え高校生一人、もちろん舐められている。
「へぇ〜、中田さん、ちょっと目と耳塞いでもらっていいですか?」
「え?何で?」
私はよく分からなかった。たとえここから逃げるにも方法がなさすぎる。八方塞がりだと思ったからだ。
「良いから、安心して」
「わ、分かったわ…」
けれどもこの劣勢の状態でも私を落ち着かせようと優しく話しかけてくる隼人を見て私は安心した。その声を聞いて本当に大丈夫だと思えたから。
あの後目を開けると5人組は倒れていて、警察もやってきた。わたしたちは事情聴取を受けたが被害者として片付けてくれた。その後隼人からは「今日のことは秘密にしてください、お願いします」と言われてしまったのでこのことを黙っているつもりだ。
あのとき助けてくれた隼人の事を考えると胸が熱くなってくる。気づけば私は隼人から逃げるように帰っていた。
(…何よこの気持ち!)
私は初めて感じたこの気持ちが何なのか分からなかった。何故か隼人のことを考えると心臓が熱くなってくる。忘れようとすればするほど頭の中が隼人のことでいっぱいになった。
少し気持ちが落ち着いたところで一つの結論にたどり着いた。
(…これが、恋?)
私は、隼人に恋をした