昔話
――それは遥か昔の、建国王の神話。
かつてこの世界には、人間と神が住んでいた。
神々は大地を支配し、人間は神を崇拝した。それによって秩序は保たれていた。
だが、神々は同族同士で大戦を始めた。被害は神界だけで収まらず、ついには平穏を願っていた人間界にも被害をもたらす。
やがて、大戦は収束した。けれど、神界は崩壊し、人間界も荒廃していた。
生き残った神は少なかった。また人間もいわずもがな。
そうして神界は失われ、神々は地上へ降り、人間と共に生きることを選んだ。
人間界は不毛の地と化していた。
わずかな緑があれば、それを奪い合い、争った。人間界でもまた、諍いが絶えなかったのだ。
地上に降りた神々はすでに神格を失っており、なす術なく人間にまぎれて生きた。
そんな腐りきった世界を救ったのは、この国の建国王だった。
彼は地上へ降りた女神の力を借り、諍いを抑え、その手腕により秩序を取り戻した。
生まれ変わった大地は人々の心を潤した。
平和へと導いた彼を人々は奉った。
そして彼は、国を建て、王となる。
彼は生涯賢王であったという。
しかし、彼の傍らにいた女神は、建国後、姿を消した。
代わりに、一人の聖女が彼の隣で、王を支え続けた。
神であったものたちは、”魔女”と呼ばれ、それでも人として人生を送り、子をなして死んでいった。時間とともに彼らの子孫の多くは、自らが神の血をひくことを忘れ、また知るものも、大地を混沌へと貶めた罪を隠すためにその血筋を心に留めた。
基本、ほのぼのうだうだした話となっています。
魔女が登場するくせに、魔法はほぼ皆無。また、劇的な展開(作者的に)はない予定です。視点も中心がコロコロかわります。ご了承くださいませ。
主人公の恋同様、亀更新(不定期)ですが、よろしくお願いします。