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エピローグ

え・・・え・・・。日本って働いている人にとって生き辛いですよね。そんな世の中を憂う気持ちからポロリと作品が生まれました。

世間って狭いもんなんだな。昔勤めていた会社の同僚に飲み屋であうなんて。いらっしゃいませ~。お姉ちゃん札幌クラシックとソフトドリンクはカルピスで良いかな・・・。お前は? お姉ちゃんこっちも頼むは! 人々は思い思い仕事の疲れを癒しに集っている。


店内にはポップな感じの当たり障りのないBGMが流れているが、それよりも耳を覆うように。人々の話声、注文を受け付けそれを厨房に伝える声。すさんだおれの心にちょうど良いのかもな。別になにがってわけでもないんだが・・・。


ああ。もうそろそろ潮時か。向こうもおれのことに気づいているみたいだし。気まずいことこの上ない。しかもおれはと言えば明日も仕事があるので、一杯ひっかけにきただけだ。むこうさんは同僚の方々と飲みに来ているときた。


おれの後輩も立派になっているようで少しだけ嬉しかった。あの頃はみんな若かったな。おれもまだまだ駆け出しで今よりずっとガッツも根性もあった。


「ねえ、麻生ちゃん。あのひとさっきからこっち見てない?」

「・・・。気のせいだと思いますよ。」


「なんだ。知り合いでもいるんですか先輩ーーー! う、ちょっと酔ってきたかな。すみません。お冷下さーい!」


おお後輩もできたのか。わざと絡んでこなかったあたり彼女なりの優しさなのだろう。恩に着るぜ麻生ちゃん。こちとらもう取引先とのミーティングで精魂尽き果てているのだよ。マジ感謝。


一気にグラスを仰ぎ空にするとその勢いのまま勘定した。


帰り道おれは雪の華を聞きながら電車に揺れる。ときどき上京してきたばかりの自分を思いだす。それはきっとおれにとっては初心を忘れないための記憶を呼び起こすための引き金なのだ。


おれはふと昔の思い出にひたることがある。最寄りの駅に終電がとまったたきとかに。新卒で入った会社を思い出す。あの時はおれも一旗揚げたるわいみたいな若さと愚かさ、そして強さがあった。


ゴーグルフォトにでてくるあの日の思い出・・・。それはもう〇年前だというのだ。


おれの親戚のじいちゃんが言っていた。


「いいかおめえ~。人生青春ってものはな!? 20代前半までが延長線なんだ。遊びたいときゃ遊べ! 仕事は身体がぶっ壊れるくらいまでやれ! 結婚なんかしたその日にゃ嫁さんの尻に敷かれるでの!? いつかいい出会いがあるべさ!」


そんなもんかなって思った。きっとじいちゃんの経験談からの素直な好意でアドバイスをしているのだろう。


だが、おれの新卒時代はコロナが大流行していた。飲み会なんてなかったし、合コンやらクラブへ集合うぇーいなんて若さを謳歌するなんてこともなかった。


たんたんと仕事をして。マスク下の素顔がわからないひとたちとともに黙々とタスクをこなして。


毎日がこの繰り返しだった。


ああ・・・。おれこのまま何も人生のイベント迎えれずに死ぬんだろうな。


寝る直前までそのことが頭から離れなかった。


******


さて・・・。おれの習慣にはアラームを3つセットして眠るというのがある。


その日もスマホ、目覚まし時計、目覚まし2がなり一人暮らしのおれはのそのそとベットから這い出ようとした。


エアコンが効いているはずなのになんだが熱い。風邪をひいてしまったかと思い、体温を測ってみると39度あった。


どうりで、だ・・・。今までの無理がたたったのかもしれない。その日、おれは会社を休んだ。


噓のような本当の話ってあるらしい。おれはあの日からどうしてか体調を崩しがちで、ときどき高熱を出してベットに伏していた。


身体がキツい。もう以前のように元気に働けないのか。


おれは残念ながらそう思っていた時期に会社を退職した。


引っ越しをするにも金がかかる。そしてなによりおれは働くのが好きだ。


だから近くの仕事場を探し、9時半から17時半までの勤務時間の仕事を得た。


これまで深夜のコンビニ飯だったおれがスーパーに行って自炊できるまでになった。


もちろん年収が50万は下がったしいいことだけではなかった。


それでもこのままこの仕事を続けて行きたいと思った。


だが、人生なんてうまくいく事だけじゃない。その言葉の意味をおれはまだ分かっていなかった。


ひとには自分が上手くいってなかったらその状況を変えずに他人を貶めることを喜びとして生きているひとたちがいることを。


残念なことにおれの職場にはそのタイプの人がいた。


おれが楽しそうに仕事をしているのが気に食わなかったらしい。


その日からおれへのモラハラがはじまった。


わざと声が聞こえないように挨拶して、おれが返さなかった場合あの人にあいさつ無視されたという悪評を流されたり、ふいになれなれしく話しかけて、おれがネームプレートを覗いただけなのに胸を見られた。セクハラされたなどといった人を貶める行為が延々と続けられた。


ひとが雇用の関係で逆らえないことをいいことに一目がないところではクズだの死ねだの永遠に言われ続けていた。


おれはなんらダメージがないように振る舞っていた。いつも笑顔で。元気よく。模範であろうとした。


誰が得するわけでもないのに。


気づいたころにはもう手遅れだった。ふとしたある日から突然コンビニのレジの店員の顔が見れなくなっていた。人と目が合わせられなくなっていた。


それでも仕事場では平気に振る舞っていた。


お仕事が上手くいっているかどうかの面談のときがあった。


「なにか悩みごとはありませんか。」

「大丈夫です。楽しく仕事できていますよ。」


おれ。楽しそうに仕事できているよな。その他人からどう評価されているかを聞きたくてただそういった。


「いつも元気があって。本当に頑張っていますね。これからもよろしくお願いします。」

「こちらこそです。」


本当は問題しかない。お前の直属の上司に色々されてんだよこちとら。ふざけんなよ。


でもそのことをこの人に言ってなにになるだろうか。ただの八つ当たりにしかならないだろう。


うちのこの上司気が弱そうだし。


夜眠れなくなった。スマホの検索履歴に【自殺 有名どころ】などが並んでいく。


おれ。なにを間違えたのだろうか。


誰かに酷いことでもしたか? そんなに恨まれることした? 前世になにを間違えたらこんなことになるのだ?


そう。おれはとうとうあの有名な病。鬱になっていた。


仕事に行けなくなった。おれの人生ってこんなもんや。もうええわ。全て終わりにしたい。


頭に同じ言葉が流れていく。好きなゲームにもログインさえできなくなった。友だちからのRAINも既読スルーする日が続いた。


どうにか退職手続きに都合をつけてもらい、おれはまた仕事を辞めた。


時間がとまっているようだ。起きてなにかをするものの。机に頭をぶつける日が続く。


優しい者、正直者が報われる世界なんてこの世にはなかった。自己保身にはしる者。そんなひとたちが世にいるのはなぜか。もともとそんなひとなんだろってなぜおれは自惚れて評価なんかしていたのか。


世間知らずは恥知らず。


あと追加でひと言・・・。おれは愚かだったのだ。


*****


全てに。自分の人生に絶望したとき。


Youtubeに写っているエルフが可愛くみえた。


今から15年ほど前日本に異世界からエルフが2体きた。政府は異世界難民と特定。その豊富な知識量、圧倒的な美貌。


なにより落ち目であった日本観光の新たな聖地としてのピーアールとして、一人何役っていうくらいエルフは頑張っていた。


すごいな。おれとは生まれも育ちも違うのだ。さすがエルフだな。略してさすエル。いや何年前の流行語大賞だってばよ。


おすすめの動画でアメリカにデビューしたての吸血鬼の動画のビフォーアフターも見た。


すっかりアメリカ人じゃんね。この吸血鬼。こいつの名言集に地獄に落ちろ少年なんてものがある。お気になさらず。私は今もう地獄にいますのでって言い返してえ。


自分とまったく関係ないところでなにも関わりのない彼らの笑顔。それを見た時におれは思った。今一瞬疲れが垣間見えたなと。


気のせいであることを願う。


1月ほどおれは無職をしていた。実家に戻ってこいと言われおれはこのままいたかったもののあんたが心配なのよと肝っ玉母ちゃんにおしかりをうけ、家を引き払わされた次第である。


「今日の夕飯なにって聞いたことあったっけ母さん。」


「なにを言っているの。この子は。夕飯なんて有り合わせの材料で作るお母さんが食べたいものにきまっているでしょう。」


ですよね。


「ああ。母さんがつくるものはなんでもうまいからな。おい。文句あるならお前が母さんより料理上手くなれ。」


く、くそうそこまで言わなくても。


「デザートは別腹だ。アイス5種類も冷凍庫にそろえているお父さんを敬え奉れ。」


「いつもありがとう。父さん。」


そうここいる愛すべき珍獣ペアレンツがおれの両親である。とてもいい人たちだ。


「ところで、さっきリビングから話し声が聞こえたのだけれど。誰かきてたのか?」


「・・・。」


おい親父なぜ目をそらした。さては母さん!


「歩道橋の上でウオオオオオオーーーーーーーンて泣いていたエルフがいたから拾って来ちゃったの。」


いや。エルフって。日本だけではなく世界に2人だけのはずなんだが? なんで犬猫みたいに拾われているの?


「そしたら、ぜひお礼がしたいからと先ほど転移魔法で荷物をとりに行ったわ。あの子ったらりんごが好きでね。冷蔵庫にあったりんご一人で丸かじりして10玉食べちゃったの。」


おれのりんごがーーーーーーーーー! いつの間にか全滅していた。


荷物・・・。荷物ってなんだっけ。暇だったからアップルパイ作ろうとしていたのに。産地直送の農連まで遠出して買ってきた一品なのに!


「最初は一個だけのつもりだったのよ。あんたに悪いし。そしたらまあなんと良い食いっぷり。お母さん久しぶりに感動よ♡」


ああああああああああああああ・・・・・。ゴホンッ。つい取り乱してしまった。そうおれは今鬱だった。忘れちゃってたが。


「なんだ母さんも新しい知り合いが出来たのか。実はなおれもなんだ。へへへ・・・。」


親父てめえもか? どうしてこうなったあああああ!


ピンポーン。チャイムがなり、おれはエルフのお迎えを母に命じられ、すごすごとおれのりんごの敵をもてなしに玄関へと向かった。


ドアをあける前に影移動して吸血鬼が入ってきた。


「あのどちら様ですか?」


「優作の家はここデスか?」


「あ~父ですね。はい中にいますけど。」


ズガンっとおれは突き飛ばされ(理不尽)廊下へうずくまっていた。


ズダダダダダっと走る音がする。ありゃあ人間じゃない。さっき動画で見た吸血鬼だ間違いない


痛てててて・・・。あのクソガキ覚えてやがれ。


「どうも不束者ですがどうぞよろしくお願い致します。お義父さま♡」


「あ、どうぞいらっしゃい。良く来てくれたね。ここまで遠かっただろうに。」


「私この家に住んでもいいですか?」


「ああ。いつでも遊びにいらっしゃい。」


「まあまあ♡」


「決めましたデス! ここ私の日本支部にするのデス!」


ドアの向こう側から聞きたくない相談が聞こえた。


よし。明日からおれ就職して早めに引っ越そう。どうやら我が家には可愛い養子をお迎えするようである。


みぞおちにキツい一発をくらったおれはとうとう新たな目標が出来た。



*******

¥620,000(主人公の懐事情)

応募先企業0社(1社内定辞退済み>今週)










読んでくれてありがとう♪  再アップ失礼します・・・。少し丁寧に作ろうと思うので、エピローグが長引くかもしれません。またボリュームが出て読み応えが出てきてしまったらすみません。作者が頑張りすぎたからだと思います。ちょっと鬱展開いれますけども基本コメディです。ハッピーエンドになります。

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