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第二十三話 お前は優秀な部下だ

 ブッチたちがフクロウ隊の隊長を縄で捕らえるためにやってきた。九班の皆はとってもいい満足げな顔をしてる。久々に大仕事をやったからだろうな。皆からだのあちこちにあざやひっかき傷が出来ている。多分部下とやり合った時にできた傷だ。


「どうだみたことか! 俺達九班の圧倒的勝利だッ!」


 ブッチは明らかに調子に乗っているが今日ぐらいはいいだろ。こんだけ頑張ったんだしな。


「固結びなら任せとけー。身動き一つできないようにしてやるわい」

「適当に結んでるだけでしょ~」


 ポンガの爺さんが隊長を縄で縛っている。その横でラララがポンガの爺さんにツッコんでいた。グーダはブッチの近くで両手を上げて喜んでるのか? 小さくジャンプしていた。フクロウ隊を捕えた九班とおれはどうやって戻ろうかと頭を悩ませていると、採掘・開拓担当の組頭が壁に穴をぶち開けて出てきた。


「なっ⁉ 組頭、どうしてここに」

「お前らが泥棒連中を追って開拓や設置途中のトロッコに乗ったのは分かってたからな急ピッチで本来のルートを完成させた」


 それを聞いた九班は安心して胸をなでおろした。ラララは特に安心したみたい。


「よかった~このままずっと薄暗い鉱山のままかと思ったよ~」


 組頭の後ろから別のドワーフが数人出てきた。組頭は指示を出す。


「よし、お前らはこの泥棒連中を連れていけ。そして九班はこの緊急事態に対応して泥棒から鉱石をよくぞ守ってくれた。俺は組頭としてお前らを誇りに思うぞ」


 そう言われた九班は皆照れくさそうにしていた。どうせ今までサボってばかりだったから褒められなれてないんだきっと。


「ディールもよくやってくれた。この場の責任者である俺から礼を言わせてもらう。本当にありがとう」

「そんな頭下げられるほどの事はしてないよ。九班の皆が部下を取り押さえてくれなかったらヤバかったさ」

「その話は彼らには黙っておいてくれないか。調子に乗りすぎないためにな」

「分かってる」


 ドワーフ族がフクロウ隊を運んで行った後、おれたちもその後ろについていくようにその場を引き上げる。長い間狭い通路を歩いているとようやく合流ポイントに戻ってくることが出来た。組頭はフクロウ隊の処罰を決めるために他の組頭の元へと向かうと言ってどこかへ行ってしまった。その後は鉱山で作業していたドワーフたちが一斉に集まり九班の活躍のことで大騒ぎになった。今朝まで嫌というほど浴びていた蔑む様な視線は無く、ただ今回の活躍を褒めたたえる。調子に乗ったブッチはあることないことをベラベラと永遠に喋っていて皆それを聞き入っている。ポンガの爺さんは呆れた顔でブッチを遠くから見ている。グーダは質問攻めされているが何も言わない。ラララはというと女の子にどう武勇伝を伝えようか考えているらしくワクワクソワソワしていた。


 騒ぎの熱が少し冷めた頃、ドワーフ族の群衆を抜けて九班の皆がおれの所へ集まってきた。


「どうだったディール、一週間だけのお試し採掘研修期間は」

「最初はサボってる皆にムカついたけど、今日は一番大変で楽しかった。ドワーフ族の職人の仕事がどんだけ大変な事なのか分かった気がする」

「お前はよ、ドワーフ族のために命張って仕事をこなした。もう立派な職人見習いだ。お前さえよければこれからも九班にいたっていいんだぞ。いまさら種族なんて関係ねえ、組頭だろうが族長だろうが説得してやる」


 まさかここまでブッチたちが信頼してくれているとは思わなかった。九班に誘ってくれたのは凄い嬉しかったけどおれには果たさないといけない目的がある。ここはしっかり断らないと。


「それは……すごい嬉しいんだけどさ、誘いには乗れないや」

「ハハハそうだな。お前には他にやるべきことがあったんだよな。けどな、これだけは忘れるな。お前はこれからも俺達九班のなか……いや一番使える下っ端だ!」


 そういえばフクロウ隊と戦っていたせいで時間が分からないけどもしかして今日がバライバが鉱石を買いに来る日なんじゃないのか⁉ 急いで戻らないと。


「今って何時だ?」


 おれは九班の皆に聞くとポンガの爺さんが首からかけて服の下に入れていた時計を取り出し、時間を確認して教えてくれた。


「んっと今は……なんと! もうあれから日が変わっとる。もう朝の九時じゃ」

「おれすぐに行かないといけない場所があるんだ。だからここでお別れ、また会おう!」


 おれが別れを告げてその場を去ろうとしたその時ブッチが引き留めた。


「目的地に行く前にこれを持ってけ」


 そう言ってブッチが何かを手渡ししてきた。おれの手に握られたものを見てみると、それはまるで鮮血を固めて出来たみたいな見た目の鉱石だった。これってもしかしてナボム鋼か! 数を数えると六個ある。


「どうしてこれを?」

「元々それが欲しかったんだろ。俺は班長だ。これぐらい採れて当然だ」

「これを採るために一人だけどっか行ってたのか」

「知らん。夢中になって掘ってたらいつの間にか手にいれてただけだ」

「ありがとう」

「礼なんていらない。一週間働いた報酬だと思え。採掘成果は個人の功績じゃない、班の功績だ。それと、ここから外に戻るにはここからまっすぐ行ったところの昇降機を使え」


 ナボム鋼を受け取ったあと九班の皆を見てみたら少しだけ寂しそうにしている。


「ディール君、次会う時は一緒にご飯食べ行こうね~」

「小僧よ、いつでも顔出していいからの」


「皆、今度こそサボらずに頑張れよ!」


 最後に皆が手を振って見送ってくれた。おれも手を振ってお別れをした。そして鉱石をあの店に持っていくためにその場を後にする。昇降機に乗って籠の壁についているレバーを一番上に動かす。すると昇降機は大きな音をあげながら上に移動していく。地上の階層に到着すると昇降機が停止したからおれは昇降機から降りて走ってチャグマ鉱山を出て行った。


 しばらく走ってようやくバライバがいつも鉱石を買いに来る店に到着した。おれは店に入ると店主にナボム鋼を渡す。


「これ全部ここに卸してくれ、ナボム鋼を六個!」

「あれ君はもしかして一週間前の人間の子かい?」


 おれは頷く。


「バライバってもう来たか?」

「あの子ならまだ来てないよ。でも、そろそろ来る時間じゃないかな?」

「だったら丁度いいや! 金なら後で受け取るからさ、ちょっとの間だけそこら辺の棚を裏とかに隠れて様子を見させてくれ」

「別にいいけど……変わった子だね。今日来るって決まってるわけじゃないし。買ったかどうかならまた明日とかに聞きにくればいいのに」

「それじゃ意味ないんだよ。おれは直接アイツの顔が見たいんだ」


 しばらく隠れて店の中を観察していると扉が開いて誰かが入ってきた。バライバかと思ったが違った。そのドワーフは店内で何を買おうか物色している。その客がナボム鋼を手に取った。おれは頭を抱えながら買わないでくれと祈る。ナボム鋼が手に入ったことに浮かれていて、この可能性を考えていなかった。客は数分悩んだ結果買うのをやめてナボム鋼を机の上に戻した。なんとかなったことに安心して大きく息を吐いた。客が買い物を終えて店を出て行ったので店主にバライバが来るまで隠してもらおうと思ったその時、また客がやって来た。急いで隠れて確認すると今度こそバライバだ。バライバが店の中でナボム鋼を見つけると置いてある場所へ直行した。バライバが店主と何かを話している。


「ナボム鋼が結構入ってるけど、豊作だったみてえだな」

「ふふ、そうだね。今日は珍しく多く入荷できたんだ。値段は……」


 バライバが買い物を終えて店を出て行った。おれはこっそり後をつけていく。


 そして時は墓参り直後のバライバとの会話に戻る。

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