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第二十一話 最近よく会う奴ら

 まさかとは思うけど奴らここで爆弾を使う気か⁉ 冗談じゃないぞ、こんな洞窟で爆弾が爆発したらこっちは生き埋めだ。しかし、奴らは完全の頭に血が上って冷静な判断が出来ないみたいだ。


「隊長! 爆弾で追手を吹き飛ばそうと思ってます」

「その案…………採用なり。奴らを吹き飛ばすのだ!」


 下っ端らしき一人がどんぐり帽子に許可を取っている。あのどんぐり帽子が隊長なんだ。窃盗集団は火打石を打ち金で叩いて布っぽいものに火をつけて火種をつくると爆弾の導火線に火をつけてニヤニヤしながらこっちを見ている。


「落ち着けよ、アンタらも生き埋めになるぞ」

「うるさい! 我々、ヘンベル盗賊団フクロウ隊は『やられたら徹底的にやり返す』がモットーなのだ‼」


 ヘンベル盗賊団だって⁉ どっかで聞いたことあるような…………そうだ! 獄冥会を手伝ってた連中だ。ここら辺は奴らの活動範囲なのか。それよりもおれが奴らの事を思い出している間に下っ端の一人がこっちに向かって爆弾を投げてきた。九班の皆は取り乱している。


「ディール君なんとかして! 爆発四散で九班解散! なんて笑えないよ」


 ラララの言葉にあの無口で無気力なグーダが笑いだす。

 

「ハハハハハ!」

「グーダよ、笑っとる場合か」


 ポンガの爺さんが怯えながら注意するとブッチが叫んだ。


「どう考えても気が狂ったんだろうが! ガキ、こっちは班長からの命令だ。爆弾を何とかしろ」

「んなこと言われてもどうしろって…………あああ、どうにでもなれ‼」


 おれは剣を持ち替えて剣の腹の部分で飛んでくる爆弾を打った。打ち返された爆弾は後方でとんでもない爆音と共に豪快に爆発した。おれを含めて九班の皆が口を大きく開いて唖然としていた。全員が口に出さなくてもあれが直撃したら一巻の終わりというのを理解した。しかし、対策を考えている暇もなく敵は次から次に爆弾を投げてくる。


「全部打ち返してやる‼」


 流石に青の適正魔法……もとい別名魂色魔法である炎を使ったら大爆発待ったなしだ。おれはグリンドと剣を使ってトロッコに直撃しないように気をつけながら飛んでくるすべての爆弾を打ち返す。後ろでは爆発音が鳴りやまない。わざわざ振り向かなくても後ろが大惨事になっていることぐらい容易に分かる。このまま奴らの爆弾が底をついてくれれば良かったのだが、不運なことに爆弾の一つがおれたちを乗せたトロッコのレールの先に落ちてしまいどうすることもできないまま爆弾が爆発し、トロッコは宙に浮いた。このままだと地面に叩きつけられておしまいだ。おれは咄嗟に身体を捻ってトロッコにグリンドを直撃させてフクロウ隊が使っているレールがある方向へ吹き飛ばす。後は運任せだったが幸い宙に浮いたトロッコは何とかレールの上に着地した。


「何とか命拾いしたな。奴らめ、許さァァァァッん‼ ラララ、グーダ限界まで速度を上げろ。全力で泥棒どもを追うぞ」

「「了解!」」

「ホッホッホ、あの世への扉が一瞬開きおったわい」


 九班の皆は無事みたいだ。奴らが爆弾を投げてこないところを見るとストックが底を尽いたみたいだ。近づくなら今しかない。九班のトロッコはもう一度フクロウ隊の乗っているトロッコに接近した。奴らはおれたちが生きていたことに驚いているみたいだ。そりゃ誰だって爆弾が直撃すれば死んだと思うだろう。


「隊長、追手が我々のすぐ後方にいます」

「なんだと! 敵は相当の手練れかも知れん、用心してかかるのだ」


 おれはトロッコの先頭まで歩いていきフクロウ隊のトロッコに乗り込むために出来るだけ距離を縮めてもらう。おれが飛び出す前にブッチが命令を出す。


「ガキ…………いや、ディールよ班長命令だ。泥棒どもをひっ捕らえろ!」

「ようやく班長らしくなってきたじゃん」


 おれはトロッコ同士が限界まで近づいたタイミングで奴らのトロッコに飛び乗った。フクロウ隊の一人が片刃の曲刀を取り出した。爆弾が完全になくなったとは言えないこの状況じゃ魂色魔法も安易に使えないから物理攻撃でかつレールの限界が来るまでに倒してトロッコを止めるしかない。


「どうもフクロウ隊の皆さん。アンタらヘンベル盗賊団とはよく会うな。キツネ隊やコング隊の面々は元気にしてるか?」

「何⁉ その二隊はつい最近壊滅したという報告が…………まさかお前みたいなガキが、そんなバカな」

「ガキだからって舐めない方がいいぞ。今日ヘンベル盗賊団から消える部隊が一つ増えるのだけは確実だな」

「その生意気な口、叩き切ってやる」


 敵が曲刀を上から振り下ろすように斬りかかってきた。おれは剣で交差する形で受ける。力の限り弾いた後に敵が体勢を崩したのを見逃さず下から上半身を斬り上げた。まずは一人。おれは次の台に移動すると二人がかりで襲ってきた。こうやってならず者と戦っているとロオの街での修行の日々を思い出すな。あの時は力が無い分あちこち動き回ったり、頭を目いっぱい働かせて小狡い策を考えて戦ったっけ。こんな狭くて足場がふらつくこの特殊な状況こそ、おれの戦い方が輝くはずだ。


 おれは二人の攻撃を躱したり剣で弾きながら反撃の瞬間を窺う。片方の攻撃を弾いて剣を手放させた後にもう一人が大きく剣を振り上げた。おれはその間に剣を持っている敵の背中に回り込んで斬り伏せる。間髪入れずに武器を持っていない奴に近づいて顎に手をついてグリンドを直撃させると敵は白目をむいて気絶した。後は……三人か。そう思った時、先頭の一人が叫んだ。


「隊長、もう道が無いです!」

「何と⁉ 各員落下の衝撃に備えるのだ」


 もう時間が来たのかよ⁉ おれは急いで後ろの九班の皆に知らせる。


「もう限界だ。ブレーキをかけて止まってくれ」

「なんだって? よく聞こえないぞディール」


 おれの声は届かず、二台のトロッコは空中に放り出された。おれはそのまま地面に叩きつけられるように落下した。思っていたよりも高さが無かったおかげで擦り傷程度で済んだ。九班の皆は……いた。よろよろとしながらも立ち上がっている所を見る限り大きな怪我はなさそうだ。おれはフクロウ隊の残りの三人を探す。奴らはおれが倒した仲間を担いでその場を離れようとしている。


「逃がさないぞ、アンタら全員」

「どうやらキサマをここで倒さなければ帰らせてくれないようだな。お前ら、行くのだ」


 残りの二人の下っ端をけしかけてきたが、おれの所に来る前に九班の皆がそれぞれタックルして取り押さえてくれた。


「皆! 大丈夫なのかよ」

「後輩のお前だけにいい格好はさせないぞ。これは九班全員でかかる大仕事だからな‼ グーダ、タコ殴りにしちまえ」

「ディール君、大変そうなのは任せたよ~」


 おれは皆が下っ端を抑えてくれている間にフクロウ隊の隊長との一騎打ちに挑む。コング隊の時はレイと一緒だったから勝てたが今回は一人でやらなきゃならない。あの時の奴と同じかそれ以上の迫力はある。一筋縄じゃ行かないな。


「我のかわいい部下を倒してしまうとは、これは我に対する挑戦状と受け取っていいのだな?」

「こっからは全力でアンタをぶっ倒す‼」


 おれは飛びかかるようにして斬りかかるが難なく防がれてしまう。ぎらついた目からは余裕を感じられる。爆弾が無い以上魂色魔法を使える。だけど奴の魂色は何だ? 色によっては苦戦するかもしれない。そうなる前に早めに決着をつけてやる。


「”ガンド・ゼレイム”【蒼炎連弾】」


 手のひらほどの大きさの無数の蒼い炎の弾を隊長に向かって放つ。隊長は走って次々と躱していく。


「今のは……蒼い炎だと⁉ 何色の魂色魔法なのだ」

「アンタに答える義理はないね」

「フハハ、生意気な小僧だ」


 躱されこそしたがフレイムガンよりも威力と速さがある。これまでは頭にパッと出てきた魔法を使っていたが、今のはおれ自身が自分で考えて作った魔法だ。今までのはエル曰く、赤の……炎の魂色魔法だったらしいがこっちの方が断然扱いやすい。九班の皆が頑張ってんだ! おれもいい所を見せてやる。

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