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第十話 蘇るは古の悪魔

 おれたちは盗賊団を打ち破ってからエルたちの後を追っていると獄冥会の連中と戦闘しているエルを見つけた。レイは一目散にエルの所へ急いで助けに入る。おれも少し遅れて二人の所に駆け寄る。おれたちの姿に気づいたエルは安心したような表情を見せる。


「大丈夫? エル」

「レイ! それにディールも無事だったのね」


 おれはサティラの姿を探すが見当たらない。一緒にいたはずのエルに聞く。


「サティラはどこに行ったんだ⁉」

「彼女ったらどんどん先に進んで行っちゃって。私も追いかけようとしたんだけどこいつらの相手で手間取っていたから」


 サティラは何をそんなに焦っているんだ? 確かに悪魔が復活とかは物騒だけどその焦りようは心配だ。


「おれはサティラを追う。二人はここを頼む」

「任せてよ」


 おれはその場を二人に任せてサティラを追いかけるために前をふさぐ獄冥会の連中に斬り込んでいった。


「どけぇぇッ!」


 邪魔をする黒ローブの獄冥会の連中をなぎ倒す。どうやらこいつらは魔導士みたいだ。さっきから魔法をバンバンと飛ばしてくる。電撃やら火、水の魔法が飛んでくる。だが圧倒的な威力ではない。多分、灰の魂色だろう。灰色の人口はフォルワで二番目に多いと言われている。灰の魂色の適正魔法は人物によって異なる属性の魔法が扱えるらしい。しかし、威力が大したことないのが欠点だし、扱える属性の数も人によってまばら。いわゆる器用貧乏ってやつだ。このことは全部レイが教えてくれた。


 おれは飛んでくる魔法を剣で払いのけたりグリンドで相殺したりして懐に潜り込んで剣の面で思い切り叩いて気絶させる。もう八人は倒したはずだ、なのにまだいやがる。獄冥会の連中はどれだけ大人数なんだ。もう五、六人倒したところでようやくサティラの姿が見えてきた。


 サティラは刀身の細い剣で戦っていた。あれはレイピアか。おれはサティラの元に駆けつけて彼女の背後を取っていた獄冥会の奴を倒す。


「大丈夫か、サティラ」

「助かりました。ありがとうディール」

「気にするな。それよりも牙はどこに?」

「あそこです」


 サティラが指差す方をを見てみると牙を丁寧に抱えている獄冥会の男がいてその前にいる部下らしき連中が地面に何かをしている。目を凝らしてよく見てみると奴らはローブをまくって腕にナイフで傷をつける。傷口から川のように流れ出る鮮血を手にべっとりと付けて地面に魔法陣を描いていた。


 おれとサティラは獄冥会の牙持ちを止めるために前に出るが当然邪魔が入る。隣でサティラが次々と敵を倒していく、ハッキリ言って強い。おれの頭の中に疑問が浮かんだ。なぜこんなに強いのに野盗に襲われていたのか、だけど今は獄冥会を止めるのに集中しないといけない。おれは一旦考えるのをやめた。


 邪魔に入ってきた奴らを倒しきると牙持ちの近くまで走る。


「獄冥会! もうアンタらの仲間は倒したぞ。諦めて牙を返せ」


 牙持ちは不敵な笑みを浮かべたと思ったら大きな声を上げて笑いながら叫ぶ。


「諦めるだと? 諦めが悪いのが我々獄冥会のいい所でね。正直な話、我らが神の一部を全て集めてからにしようと思っていたが……貴様らのような下賤な者に奪われるぐらいなら今ここで賭けをしてやろうではないか‼ 共に使命を果たさんとする同志よ……”魂”と”臓腑”を捧げよ!」


 牙持ちが牙を魔法陣の中央に置いてからその外に出ると今度は魔法陣を描いていた連中がその内側に入って何やらブツブツと唱えている。嫌な予感がしたおれは止めるために魔法陣に近づいたが僅かに遅かったみたいだ。魔法陣から黒い霧のようなものが噴き出したと思ったら更に光り出してその風圧と眩さで前に進めない。


 まだ霧でどうなったか見えないが異様な空気がこの場全体を包んでいるのが分かる。全身を悪寒が駆け巡り鳥肌が止まらない。この威圧感は四年前に戦った鳥野郎や猿野郎に近い気もするが別物だ。こっちの方が圧倒的にヤバイ。おれは後退りしてサティラの近くまで移動する。


 緊張で呼吸が乱れている。二人とも無駄口を叩けるような状況じゃない。次第に霧が晴れていく。そこにはもう貧血でぶっ倒れかけていた獄冥会の下っ端はおらず、異形で醜悪そのもの、これが魔物じゃなくて悪魔だっていうのが一発で分かる。闇のように深い黒色の体躯にギロッとした宝玉のように輝く赤い瞳、ガリガリなのかあばらや背骨が浮き出ている。腕は地に着きそうなぐらい長く、爪も伸びきっている。極めつけは関節部分に鋭く反った棘が生えており、涎を垂らしている口元には鉄板を貫通しそうな程に尖った牙が無数に生えている。あれが……悪魔なのか。


 唯一、供物として捧げられなかった元牙持ちは悪魔の元に跪いた。


「おお! 我らが神がこの現世においでになられた。あなた様は冥王か獄帝か」


 元牙持ちの声を聞いた悪魔は汚泥のようにドロッとした低い声で背中を掻きながら答える。


「ワ……ワレハ、ダレだ?…………ソウかワレハ、ワケラレタ存在、冥王の一部”カウリオ”か。冥王ノ力と記憶ヲ持ツガ独立した意志も持ツ。アノ時の敗北デ消エ去ランタメに、再ビ蘇ルタメに。……キサマはダレだ?」

「わたくしめはあなた様をこの世に蘇らせるために儀式を行った者でございます。かつて冥王アウロデュ様と獄帝ゼ・ロルテ様と共に戦った獄冥会です」

「ソウか……獄冥会はアノ敗北の後ドウナッタ」

「件の戦から千年は経過しております。現在、獄冥会は数を減らしはしましたがあなた様達の言いつけ通りに世界に散った御身体の一部を着々と集めております。当然悪魔狩りも英雄アステルも既に亡き者です」


 英雄アステルだって⁉ どういうことだ、ここでもアステルの名前が出てきた。意味が分からないまま会話は続いていく。


「ソレデヨイ。全テヲ集メタ時、ワレと獄帝は此ノ世に再ビ顕現スルダロウ。ソレにアノ忌々しき者ドモがイナイノハ好都合ダ。モウ一度此ノ世ヲ恐怖ト絶望デ満タソウ」

「カウリオ様。目覚めて早々ではございますがあそこにいるガキどもが悪魔の復活を阻止せんと邪魔をしておりまして」

「フム、此の身体ヲ試シタイと思ってイタ所ダ。小僧ヨ、ワレに出会ったとイウ不幸ヲ呪うのダナ」


 悪魔がこっちを睨みつける。どうやら戦うしかないみたいだ。

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