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魂色ファンタジア~語られざる異端者の冒険譚~  作者: ガホウ
~呪われし骸と真の炎~
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第十四話 騒がしい密猟者

 密猟者たちを発見したおれたちは武器を構えて飛び出す準備をする。


「以前よりも数が増えていますね。これだと勝てるか……」

「心配しないでくださいアシュオンさん。戦うことに関しては僕らは慣れているので」


 レイが安心させるようにアシュオンに声をかける。


「まあ荒事は俺らの得意分野だからよ。手前はとりあえずそこで見てろや。行くぜ!」


 バライバが先に飛び出していき、ハンマーで敵を吹っ飛ばし始めた。それについていくようにおれとレイも飛び出す。密猟者たちはいきなりの襲撃に遭って戸惑っている。


 おれは最初に数をざっと確認する。見た感じだと大体二十人前後ってところか。一人をまずは斬り倒すと、次に大きく振りかぶって斬りかかって来た奴の手元を剣先で叩いて武器を弾き落とす。そして後ろから迫って来た奴を蹴り飛ばした。


 あっという間に三人を倒した後は、周囲を確認して今度は指示を出している統率者のような存在がいないか探した。頭を叩いた方が早いからな。しかし、見当たらない。それから二人を同時に相手していると、逃げようとしている奴を見つけた。おれは遠くにいるエルに指示を出す。


「エル! 向こうに逃げようとしている奴がいる。そいつを逃がしちゃダメだ」


 一人でも逃がしたら仲間に報告される可能性がある。エルはすぐに姿を捉えて矢で腹を射抜いた。しかし、奴は倒れることなく森の奥へと逃げていく。それをアシュオンが追跡した。おれもすぐに追いかけたかったが、目の前にいる敵を何とかしないといけない。


「まさか森を守っている奴が一人じゃないとは。新しく雇われたか? どうだ俺たちにつけばもっと儲けられるぞ」

「くだらねえな、おれは金なんかじゃ動かねえよ。アンタらのやってることが許せないって親友が言うから戦ってるだけだ」

「なんだと⁉ 俺たちに逆らうとはいい度胸じゃねえか。死ねや!」


 奴らは攻勢を強めてきたが、これまで戦ってきた強敵と比べれば手こずることはない。おれは一人の顔を殴ってから、もう片方の奴の攻撃を躱して一撃を決める。顔を殴られてよろけていた方もすぐに斬り伏せた。


 どうやら周りの奴らは全員倒せたみたいだ。おれたちは一旦集まって、レイが捕らえた奴から話を聞くことにした。


「アンタらは誰だ? それにアンタらだけじゃないな? 他の仲間はどこにいるんだ」

「はは……お前らはおしまいだぜ。俺たちヘンベル盗賊団に手を出したんだからよ」


 ヘンベル盗賊団……また奴らなのかよ。おれたちは一斉にため息を吐いた。また奴らに巻き込まれるのか。


「お前らなんでため息なんか吐きやがるんだ! 俺たちはあのヘンベル盗賊団だぞ!」

「手前らのことなんか嫌でも知ってるつーの。つーかそっちこそ俺らの事を知らねえみてえだな」


 レイがおれの方を指さして話し始めた。


「”蒼炎の剣獄”……知らないわけないよね?」

「なんだ……って……確かに上から聞いたことが……数々の部隊を壊滅に追い込んだ。いわば天敵のようなガキがいると……まさか……聞いていた特徴と一致して」


 なんだよ蒼炎の剣獄って、変なあだ名みたいなのつけやがって。誰だよ勝手につけた奴は。というかおれってそんな風に呼ばれてたのかよ。しかし、そのあだ名は敵にとっては効き目があったみたいでさっきまでの威勢は消え去り、恐怖一色に染まった。


「なんでも話すんで。勘弁してください。お願いしますよ」

「だったらさっきおれが聞いたことをさっさと答えてくれ」


 それから敵はあらいざらい全てを話してくれた。まず今回の敵は新設されたばかりのスネーク隊で人数は約七十人ほどいるということ。いきなりヘンベル盗賊団が大きくなったのは協力者が手を貸しているからということ。最後に今回の目的は珍しい生物の一斉捕獲だということを吐いた。


 聞きたいことを聞いたあとはそいつを気絶させる。アシュオンの後を追おうとしたが、手掛かりがないとどうすることもできず困っていた。すると、上空から白い小鳥がやってきて、嘴で袖を引っ張りながらどこかへ連れて行こうとする。


「まさか、アシュオンの居場所が分かるのか」


 白い小鳥は袖を引っ張るのをやめて、飛んで行った。おれたちは見失わないようにエルを先頭にして森を突き進んでいく。道中、血痕のようなものがあった。多分エルが射抜いた敵のものだろう。おれたちは白い小鳥の導きによって、アシュオンがいる場所へとでてきたが、そこにはボロボロになった状態のアシュオンが敵に掴まっている姿があった。

 

 おれたちはさっきのように飛び出していき、不意打ちでヘンベル盗賊団を倒していく。エルがアシュオンを救出するとアシュオンが声を振り絞る。


「敵はあともう一部隊います。誰かそちらの方を頼みます」


 確かに倒した奴らとここにいる奴らの数を合わせても、聞いていた数より少ない。二十人規模の部隊がもう一つどこかにいる。しかし、探すといっても今度こそ手がかりがないぞ。おれが三人同時に倒したタイミングでどこかから焦げるような臭いがしてきた。


「誰かが火をつけたみたいだ!」


 レイが指差す方向を見ると、木々に火がついて燃え盛っていた。どうなってんだこれは……まさか、ヘンベル盗賊団の奴がやったのか。


「作戦のプランⅡだ! 襲撃された以上は強行策、森を焼き払って動物どもが逃げ出したところを狩ってやるぜ!」


 油の詰まった瓶を投げ、松明をつかってそこら中の木々に火をつけて回っている奴が何人かいる。エルとレイが優先的に倒しているが、火の勢いは強まっていくばかり。そこら中から動物たちの悲鳴に似た鳴き声が聞こえてくる。何よりもマズいのが敵がおれたちを無視しながら動物を片っ端から攻撃している。


 弓矢に投げナイフ、トマホークと遠距離でも攻撃できる武器を使っている。こっちも飛んでくるのを弾きながら近づくが、すぐに距離を取られてしまう。おれは飛んでくる投げナイフを弾きながらポケットの中のバサンに頼みごとをする。


「バサン、聞こえてるか。ここら辺の火を全部食べられるか試してくれ!」

「ピ⁉ ピピ!」


 バサンは小さい身体で頑張って火を吸い込んでいるが、あの速さだと木々が燃え尽きる方が早いかもしれない。敵の数が数人まで減ってきた所でおれは他の皆に声をかける。


「レイ、おれと一緒に来てくれ。もう一つの部隊を探しに行く。エルとバライバはここで敵を倒した後に火を消してくれ」

「分かった。行こう、ディール」


 おれはレイと一緒にこの場をエルたちに任せて、もう一つの部隊を探しに行く。当然、火を食べて腹がいっぱいになっていたバサンも途中で拾いあげる。他に敵がいるとしたらどっちの方向にいるんだ? おれたちが闇雲に捜索していると、動物を追いかけている奴を一人見つけた。そいつをすぐに制圧してうつぶせの状態で喉元に剣を沿わせ情報を吐かせる。


「おい、放してくれや! 冗談キツイぜ」

「黙れ! もう一つの部隊は……スネーク隊の隊長がいるのはどこだ」

「へっ⁉ 隊長なら……確か、臨時拠点にいますぜ。あっちの一際でっかい樹木があるとこです。ね、もう教えたんだから放してくれよ」


 剣の柄頭の部分で後頭部を殴りつけると、敵は気絶する。おれたちは今手に入れた情報を元に隊長がいるとされる場所へと向かった。今日だけでいったいこの森をどんだけ歩き回ったんだ? 実際自分が今どこにいるのかもよく分からない。


 情報通りに進んでいると、デカい木が見えてきた。おれたちは一旦茂みに隠れて様子を確認すると、何やら臨時の幕舎があり、そこに偉そうに座っている奴が一人いる。緑の四白眼の瞳に、脚がやたらと長いのか椅子に座っているのにガニ股のようになっている。


 奴がスネーク隊の隊長に違いない。

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