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第六十四話 伝説の金属と天才鍛冶師の共演

 寄り道をしなかったおかげで究幻迷宮脱出から一週間程度でカータナーの街まで帰ってくることが出来た。街へ入ると最初に来た時と何も変わっていないようで安心した。今日もどこかで金属を打つ音が聞こえる。


 道中、バライバが足を止めた。


「悪いんだけどよ、俺はちっと寄る場所があるから族長への合流は後にしてくれ」

「ん? どこ行くんだ?」

「そんなのは俺の勝手だろ」

「まあいいけどさ。忘れるなよ」


 バライバがどこかへ走り去っていき、おれも一旦レイたちと別れて、ドゴへ報告するために工房へと移動した。工房ではドゴが弟子たちに厳しく指導をしている最中だった。おれは邪魔をしないように一区切りつくまで待つ。


「コラ! 力の入れ方が違うって何度言ったら分かんだ! やり直せ」

「すみません!」


 今日のドゴは随分と熱が入った指導をしてる。怒鳴り声が耳に入るだけで思わず背筋が伸びる。ドゴがその場を離れたのでおれは近寄っていき声をかける。


「帰って来たぞドゴ」

「おお! 小僧じゃねえか。無事……ってわけじゃねえが元気そうだな」


 ドゴは怪我を心配しながらもおれが帰ってきたことを喜んでくれた。


「それで帰って来たってことは、見つけたんだな」

「ああ! デュラクシウムさえあればなんとかなるはずだ」

「バライバの言う通りならいいんだけどよ」


 それから集合の時間になるまでおれはドゴの近くで武器の手入れをしながら作業を観察していた。ルジの弟のバッジも汗水たらしながら頑張っている。毎日これだけの修行をしていればそりゃあれだけのものが作れるようになって当然だ。そういえば九班の皆はサボってないだろうな?


 居住区の近くで再び合流したおれたちはデュラクシウムを手に族長の元へと向かった。


「コイツがあれば族長もきっと……」


 バライバがそう呟いたのが聞こえてきた。しばらく歩き続けて最奥にある族長の部屋までやって来た。扉を開くと、中にはただジッと壁を眺めているだけの族長の姿があった。相変わらず暗いというか生気が感じられない。


「おいジジイ! コイツを見やがれ」


 バライバの声に反応するそぶりすら見せない。声聞こえていないんじゃないか? バライバは大きく深呼吸をしてから族長の近くへと歩いて無理矢理振り向かせる。族長はそれでも表情を変えなかったが一言だけ喋った。


「もう終いじゃい。何もかもな……盟約を破ったせいで」

「その盟約だのなんだのはコイツがあればなんとかなんじゃねえのか?」


 そう言ってバライバがデュラクシウムを族長に見せつけた。すると族長の目に光が戻った気がする。


「それは……まさか」

「そのまさかだぜジジイ。デュラクシウムだ」

「どうやってそれを」


 バライバは片方の手で族長の胸ぐらをつかむ。その様子をおれたちはただ見ていることしかできない。

 

「そんなことは今はどうでもいいんだよ! 手前はコレで前のように鉄を打てんのか! やる気を取り戻せんのか!」

「過ちが許されるのであれば……この老いぼれはまた何度でも鉄を打とうじゃないか!」

「それでこそジジイだぜ。早速だけどよ、最初の仕事が待ってんぞ」


 おれたちは二人の近くに行き、事情を説明する。予言にある敵を打ち倒すためには聖剣ミレニアムを各種族の力で強くするということ。すると族長が頭を下げてから話をした。


「まずはバライバとともにこのデュラクシウムを手に入れてくれて感謝する。おそらくあなた方が予言の……盟約の相手だったのだな。それを間違えて貴重なデュラクシウムを使ったのはおろかその武器すらも別の者に渡してしまうとは一生の不覚だ」

「バルキス族長。気に病むのはやめてください。過ちを犯したのエルフも同じです。それに、力を貸すことは今でも出来るはずです」

「おしゃべり姫の息女か。確かに、そうだな。用件を窺おう」


 おれは聖剣ミレニアムをまた見せる。しかし今回は前と違い、隅々まで観察をして何かを考えこんでいる。


「盟約が正しければこのデュラクシウムで剣を作ることだと思っておったが……この剣がある以上はどうすればいいものか…………何か勘違いをしているのかわしは……すまないがディール殿、この剣をしばらくの間預けてもらえないか」

「おれは別に構いませんけど」

「ありがとう。エルフですら仕事をこなしたのだ。わしらドワーフも威厳をみせなければならん」


 バライバは部屋に残り、おれたちは宿屋へと向かう。


「よかったわね。バルキス族長が元気になって」

「最初に会った時はあんなよぼよぼの爺さんが凄腕なんて嘘だと思ってたけど、あの目は信頼できそうだ。なっレイ?」


「えっ! あ……そうだね」


 究幻迷宮を出てきてからなんだかレイの様子が変だ。おれに対してどっかよそよそしいというか。


「元気ないな? 腹でも減ったのか?」

「そういう訳じゃないよ。大丈夫大丈夫、気にしないで」


 剣を貸してからもう三日が経過した。おれはその間、ドゴから借りた剣を使って修行をしていた。


「バサン、もう一回頼む」

「ピピ!」


 おれはドゴに作ってもらった特別な重りを身に纏い、バサンが周囲を飛びながら放ってくる炎の攻撃を全て躱すという修行をしていた。何発か当たってしまったが、バサンは手加減をしているので多少の火傷だけで済んだ。


 修行はバサンの炎が無くなるまで続き、その後は剣の素振りが続いた。修行開始から何時間か経った頃、ドゴの弟子のベイゴが呼びに来た。


「よかった~ここにいましたか」

「どうしたんだ?」

「族長が工房までやって来て、そのすぐ後に師匠がディールさんを呼んでこいって」


 やっとできたのか⁉ おれは道具をしっかり片付けてから工房まで向かった。おれが工房に着く頃には既にレイたちやバライバ、族長にバッジの姿まであった。


「よし全員揃ったみたいだな。では今回辿り着いた結論についてお話ししよう」


 バルキス族長が何の加工もされていないデュラクシウムと謎の紙を取り出して机の上に置いた。その後に今度は聖剣ミレニアムを机に置く。まだデュラクシウムは使われていないのか。


「わしはデュラクシウムを使った武器を作ることを考えていたが、今のわしの腕だけではこの剣を越えることは出来ん」

「はぁ⁉ じゃあどうすんだよ」


 バライバが声を荒げたが、バルキス族長はそれを一旦注意してから話を続ける。


「黙らんかバライバよ。まだ話の途中じゃい。よいか? わしはこの聖剣ミレニアムを見ながら三日三晩考えた。わしにできる仕事は何かを……この剣を作った者の真の意図をな。そして気がついた。この剣はこれで完成とする」


 どういう意味だ? それじゃ聖剣ミレニアムの力を引き出すのは無理って意味か?


「しかし、案ずるな。ドワーフ族としての仕事はする。ここからがわしの計画じゃ。その名も”ナンバーズ計画”! ドゴ、設計図を広げてくれ」

「おう」


 ドゴが謎の紙を開くとそこには武器っぽい絵が描かれていた。


「まだ設計図が完成したわけではないが、これはわしとドゴ、そしてバッジの三人で考案したものじゃ。内容は聖剣ミレニアム以外に超希少金属を使用した別の武器を複数作る。そして……最終的にはその武器を全て合体させ、一つの究極の武器にする。これがわしの計画じゃ」

「武器を合体させるって、そんなことが可能なのか?」


 おれがそう聞くとドゴが答えた。


「前例はハッキリ言って……ない。だが、試す価値はあると思っている。聖剣ミレニアムを越えるにはそれしか方法がない」

「そういうわけじゃ。じゃからこそディール殿たちに頼みがある」


「また超希少金属を集めて来いって事か?」

「いやそうではない。超希少金属集め自体はわしらドワーフ族が請け負う。代わりにディール殿たちには”龍の火種”を持ってきてほしいのです。龍の火種は龍族が持つものでそれがないと超希少金属を鍛えることが出来ません。わしが持っていたものは既に使ってしまったのでな」

「頼み事は理解した。それがあればミレニアムはより強くなるんだな」

「ドワーフの誇りにかけて必ず」


 今の話から考えると、龍族に借りる力はその火の力っぽいな。ということは次の目的地は龍に会いに行くってことになりそう。


 おれは一旦聖剣ミレニアムを返してもらい、計画の事を改めて頼んだ。それから工房を離れて出発の準備を進める。

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