第23章
嫉妬のあまり冷静さを失い、またも愚かなことを口走ってしまったことを後悔した。
以前、あれほど悔いたのに、再び同じ過ちを犯してしまった。
失ったものの大きさを、無くしたものの尊さを痛いほどに感じた。もう彼女は二度と戻って来ないだろう。
それも全て自分の愚かさが招いたことで、受け入れざるを得ない結果だとは思った。
しかし、光彦にはどうしてもりんに見せたいものがあった。彼女の誕生日が11月20日だと知った時からずっと準備して来たものだった。
一週間ほど経ったある日、アパートに帰ると、りんからの手紙が郵便受けに入っていた。
思いも寄らなかったことに光彦は吃驚し、興奮で震える手で慌てて封を切った。中にはピンクの紙が入っていて、びっしりと文字が書いてあった。
「今日、この町から出ます。初めて会った時に酔っ払いから助けてくれましたよね。
今まで私の周りにいたのは、いきがってすぐに喧嘩を始める男ばかりだったので、あの夜の鈴木さんの対応にはびっくりしました。
あんな風にあっさり謝る人は初めて見ました。
大人だなあ、えらいなあ、素敵だなあ、紳士とはこんな人のことを言うのかなあと思いました。
それで、話しているうちに、鈴木さんが一人住まいだと知り、もうしばらく一緒にいたいと思ったのです。
鈴木さんみたいなタイプの人とは初めて出会ったので、どんな人か知りたいという好奇心からだったと思います。
でも、翌日の朝ごはんを作った時、ああ、こんな生活いいなあ、会社員を旦那さんに待つ奥さんの生活はこんなのかあとすごく幸せを感じました。
ホテル代を浮かすとか寮が汚いとかは全部嘘です。そんな生活に憧れていたので、一度は味わってみたかったのです。それで、鈴木さんを利用したのです。
自己満足のただのおままごとですよね。
しかし、それが鈴木さんを苦しめることになるとは夢にも思いませんでした。本当にごめんなさい。私なんかと知り合わなければ、苦しむなんてことなかったのに。
あと、この前はごめんなさい。せっかく会いに来てくれたのに追い出してしまって。
わざわざ会いに来てくれたのが嬉しかった反面、あんな仕事の格好を見られたくはなかったです。それが顔から火が出るくらいすごく恥ずかしく、なんか複雑な気持ちでした。
それに、あの日鈴木さんは嫌味ばかり言うので、ついかっとなってしまって。
あとで、冷静になった時に、鈴木さんがお客さんに嫉妬したと言っていたのを思い出しました。こんな私にやきもち焼いてくれるなんて。とても嬉しかったです。
最後に、江ノ島旅行ありがとうございます。とっても楽しかったです。大仏の前で一緒に取った写真もクラゲの写真も大事な思い出として一生大切にします」




