第20章
りんは帰って来るどころか、連絡もなかった。そのうえ、メールアドレスも携帯番号も変えたようで、光彦からは連絡のしようがなかった。
毎晩、バス停からの帰途で、アパートの部屋の灯りが点いていないことを確認すると、彼は溜息をついた。
家に入ると、すぐにキッチンに行き、それから、脱衣所、風呂に向かった。自分がいない昼間にもしかして彼女が来ていなかっただろうか?そんなことはあり得ないと思いながらも確かめずにはいられなかった。が、彼女が戻ってきた形跡は一切なかった。
毎日が味気なく、何事に関してもやる気がなくなった。
鏡に映った顔を見ると、何歳も老けたように思われた。
また、些細なことに腹を立てるようになった。
ある時、会社帰りにコンビニに晩飯の弁当を買いに行った時、いかにも柄の悪そうな若い夫婦がいて、その子供二人がふざけて走り回り騒いでいた。それにイラつき、キレそうになっている自分に気づいて、光彦は驚いた。どちらかというと穏やかな性格の自分が、こんなことで苛立っていることに気づいて、愕然とした。
じりじりと焼かれるような気分のまま10日程経った時、りんが戻って来ないのなら、こちらから会いに行けばよいのではないかという考えがふと浮かんだ。
ネットで地元の風俗店を片端から調べてゆくと、あるファションヘルスでりんの写真を見つけた。
リナという名前になっていて、片手で目と鼻は隠しているが、髪型や口元の様子から彼女であることは間違いなかった。
光彦と暮らしていた時は平日の昼しか出勤していなかったのだが、今は土日も出ていた。
彼は迷った。
彼女の気持ちを戻すにはじっと連絡を待つ方が得策かとも思った。
しかし、今の状態がこれ以上続くのには耐えられなかった。吉と出るか凶と出るかは分からないが、とにかく決着をつけたい。
次の土曜の昼に会いに行くことに決めた。




