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第19章
翌朝、りんは機嫌良く、いつもと変わらぬ様子だったので、光彦は安堵した。
しかし、夜、仕事から戻ると、りんの姿はなく荷物もなくなっていた。
ダイニングテーブルの上に手紙が置かれていた。
「ごめんなさい。今日から寮に泊まることにします。私のせいで苦しめてしまって、本当に本当にごめんなさい。
これまで一緒に暮らさせてくれてありがとうございます。料理を作らせてくれて家事をさせてくれて、本当に楽しかったです。
時々は様子を見に来ますね。栄養が心配だから、時々食事は作らせてください。今日は鈴木さんの好きな肉じゃがを作っておいたので、チンして食べてくださいね」
目の前が暗くなるという表現があるが、その言葉通り視界が急速に狭まっていった。人はあまりに落胆した時にこういうふうになるのかと思った。
大切にしていたものを自分の無神経な言葉で手放してしまった。いくら悔いても悔いきれなかった。
全身から力が抜けてゆき、彼はテーブルの前の椅子にへたり込んだ。