第13章
毎晩、りんは明彦の腕枕で色々な話をした。
中学を卒業しラブホテルに就職した時は薄給の中から毎月2、3万円を家に送金した。風俗で稼ぐようになってからは、妹達を高校に行かせたかったので、その学費もあって多い時には30万円も送金した。ホストと付き合っていた時もむしり取られないよう隠して、なんとか10万円は送った。
もう妹達は二人とも高校を卒業して働いているので、今は母の生活費の5万円だけ送金している。残りは入れ墨を消す手術代や将来のために貯金しているとのことだった。
妹のことを話す時は目を細めて、いつも楽しそうに話した。
上の妹は会社に勤めていて彼氏もいて、もうすぐ結婚するかもしれない。下の妹は看護科を出て、立派に看護師として働いていると誇らしげに語った。
りんは自分や家族のことだけでなく、風俗店での様々な話もした。
客の話や同僚の女の子の話、また風俗店の裏話をした。
未知の世界のそんな話は刺激的で興味深くもあり、彼は時には爆笑し、時には苦笑し、時には驚きながら聞いていた。
そういう話題の時は、話し終わると、彼女はいつも「面白かった?」と尋ねた。
「うん。面白かった」と答えると、
「そう。良かった」と言い、満足そうな顔をして目を閉じ、いつも光彦より先に眠りに落ちた。
りんはいつも笑顔であっけらかんとした口調で話すので、聞いている時に悲愴感はなく、面白い話という感じだ。
しかし、彼女が寝た後、彼女の話を反芻すると、変態的な性癖のある客の話の時などは、客にいきなりお尻に指を入れられそうになったとか、首輪をつけられて犬の格好をさせられたとか、首を絞められたとか、内容はどぎつくて非道なものが多かった。
屈託のない満ち足りた寝顔を見ながら、光彦は彼女のこれまでの人生に思いを巡らせた。二十歳も歳下なのに、彼女は自分よりもはるかに苛烈な人生を送っている。
これまで、どれだけ多くの苦労をし、どれだけ多くの辛い思いをし、どれだけ多くの恥辱を受けてきたのだろうか?
挫けたり、自暴自棄になったことも一度や二度ではなかったはずだ。
自分には想像もつかない辛苦を乗り越えてきた逞しい心が、この可愛い寝顔の内側にあることが信じ難かった。
光彦はそっと彼女の髪を撫でた。
自分は彼女を肉体的に愛することは出来ない。
しかし、傷ついた鳥が羽を休める止まり木のように、彼女に安らぎと休息を与えられる、そんな存在になりたいと思った。




