第12章
翌日、会社帰りに光彦はコンビニに行って、精力剤のサプリを買った。パッケージには「漢、ギンギンに立ち上がれ!」と書いてあり、いかにも効きそうだったので、りんに内緒で、こっそり飲んでみた。しかし、ギンギンどころか、まったく立ち上がらなかった。
その翌日はドラッグストアに行き、スッポンの錠剤を買った。翌々日からはネットで調べた効果があると書いている薬品やサプリを毎日次々と買って帰った。
また、通販でマムシドリンクを30本も購入した。
もう内緒にはしなかった。りんは最初は苦笑して呆れていたが、次第に光彦が何を買ってくるか、興味を持ち始め、楽しみにするようになってきた。
彼が帰宅すると、「今日は何?」と問い、効能書きを熱心に読み、「これ、勃起効果10倍と書いていますよ」とキャハハと笑ったり、「へー、これ、眼精疲労にも効果があるんですね」「お肌にもいいんだ」と感心したよう唸ったりした。
ベッドがシングルなので狭くて、それも上手くいかない原因かと思い、ダブルベッドを買うことにした。
それを言うと、りんは顔を崩し、両手を突き上げてバンザイした。
「え?いいのですか?やったー!うれしい!今よりももっといちゃいちゃ出来ますね」
休日に家具店に行き、ベッドを見て回った。
光彦は店員に二人の関係をどう思われているのか気になって仕方なかったが、りんはなんの頓着もせず、腕を絡ませてきた。どきりとしながらも、ポーカーフェイスを装っている彼の顔を覗き込んで、「新婚さんみたいですね」と目を細め、鼻に皺を寄せて微笑んだ。
しかし、ベッドも精力剤も効果がなかった。不甲斐なさは増すばかりで、自尊心はぼろぼろに崩れ、次第に諦めの気持ちになってきた。
ある日、何も買わずに帰ると、りんは一瞬黙り、戸惑ったような表情をしたが、すぐに「焦らなくてもいつか出来ます。でも、精力剤は元気になるみたいだから、せっかく買って来たものは飲んでくださいね。よかったら、私も飲みたいものがあるので、ください」
微笑みながら、優しく言った。