老夫婦
オカルト研究部の部員である安井智久は、京都市の公立高校の2年生である。オカルト研究部の部員は彼の唯一の女友達であり幼馴染の工藤ここねと彼の二人きりだった。
「なあなあ安井」
「何?」
「いっつも通る線路あるやん?」
「ある」
「そこで、人が、行方不明になったらしい」
いつもよりゆっくり区切って喋る工藤。安井は黙りこくってスマホを操作する。
「あ、記事になってる」
その記事にはこう書かれていた。
"京阪東福寺駅の踏切付近で女性(68)が行方不明"
「物騒やなー。誘拐とか?轢かれたわけじゃないんやろ」
「な。でもうちら普通に毎日通ってんねんで?そんな治安悪いとことちゃうやん」
「うーん・・・」
そこで工藤は安井の顔を覗き込み、こう言う。
「何かおかしくない?帰りにさ、聞き込みしてみいひん?」
安井は一瞬顔を曇らせたが、オカルト研究の機会でもあると思い渋々了承した。早速行くことになり、二人は駅に向かった。
彼らは駅の利用者のほとんどに声をかけたが、人通りの少ない駅であることもあり調査は思うように進まず、日も暮れたので今日は切り上げて帰ろうとしていた。駅を出たそのとき、ふと踏切に目をやると老人が佇んでいる。カンカンと音が鳴り踏切のバーが下りる。老人はまだ線路の中にいて、それを助けるべく工藤は走り出す。
「おじいさん!危ない!」
次の瞬間、工藤が腕を掴んだはずの老人は消えていた。
唖然とする工藤。状況が理解できなかった。
「行方・・・不明・・・」
安井は、その言葉だけを喉から絞り出した。