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哀しき悪役、ここに誕生。(前)

更新が遅れて申し訳ございません!ブロットがある程度溜まったので、ぼちぼち更新いたします。

 私、神宮寺ジングウジ ツバサは、蔵の掃除をしている時に起きた大地震により、この世を去った。


 私の家は苗字通り神仏習合の珍しい家系で、実家は寺でもあり神社でもあった。


 実家は雑誌やTVに取り上げられるほどそれなりに有名で、地元の人達にも町の誇りとして大切にされている。まさに、愛され観光土地。


 毎年、連休になると神社に押し寄せるほどの参拝客がやって来て、私は巫女として家の手伝いをしている。もちろんバイト代(お小遣い)は実家に請求済み。


 巫女バイトをしていたある日、神主であるじーちゃんから蔵にあるテントを取ってきて欲しいと頼まれた。


 理由を伺うと、もうすぐお盆休み&TVに紹介された事によって、例年より参拝客が多くなる可能性があるらしい。人が集まれば熱中症やケガなど予期せぬ不祥事が起こるだろう。対策として神社に医療スペースを作りたいと言われた。


 「テントは、熱中症対策の一つじゃ。ついでに扇風機もあればそれも一緒に持ってきて欲しいけん」


 なるほど。合点承知の助。にしてもさすがじーちゃん、医療スペースを作ろうと考えるだなんて慧眼だね。ん、医療スペース作るのはお前がやれって?え、ちょ、まって!マジで言ってる?重労働すぎん!?それ、巫女がやる仕事じゃねーよ!


 結局、バイト代は出しているんだからその分働けと一喝され、私はドナドナ蔵の前に立った。


 畜生あの頑固爺め。


 ぶつくさ文句を言いながら渡された鍵束で蔵の扉を開ける。

 扉を開けた瞬間、ふわっと埃が舞い思わずむせる。


 「けほ!うわぁ、汚い…」


 蔵の中にはコケが生えた本棚や、蜘蛛の巣が張られた大きな壺があった。

 ここ数年、掃除されていない事は明らかな状態だ。


 自分は潔癖症という訳ではないが、割と綺麗好きなほうである。じーちゃんに申し訳ないけどテントの取り出しは、一度蔵を掃除してから行おう。


 いそいそと掃除を始めると、大正時代に流行った本や、綺麗な勾玉、阿修羅像の彫刻などを見つけた。

 おお、何だか掃除と言う名の宝探しみたいで楽しいな。


「ん?これは?」


 棚の一番下の奥――まるで隠すように置かれた小包を見つけた。


 小包には大量のお札が貼られており、紐がこれでもかというぐらいにきつく結ばれていた。

 大量のお札のせいで、禍々しい見た目をしている。


 うっわ。こんな見るからに怪しい小包あります?なんか、エグイものでも隠しているのか?

 いや、待てよ。この開けるなと言わんばかりの見た目、実はフェイクとかだったり?

 先祖が隠した知られては恥ずかしい何かがここにあるとか?…そう例えば、エロ本とか!?

 こんな巧妙に隠すんだ。きっとむっつりスケベの先祖様が隠したに違いない。

 うっひょー、なんだか興奮してきた!昔のエロ本ってどんなだったんだろう。


 自分、神社と寺の神仏習合の家の娘なのに煩悩まっしぐらである。


 きょろきょろとあたりを見渡し、人がいない事を確認する。もし、ここにじーちゃんがいたら「馬鹿もん!札が貼られているものを開けようとするな!」と雷の渇が入るだろう。そして、そのまま二時間の座禅&説教コースを味わうに違いない。

 じーちゃんの説教の中で出てくる神の教えとかはもううんざりだ。


 自分、神社と寺の神仏習合の家の娘なのに無神論者なのである。


「うん、周りには誰もいないね。んじゃ、御開帳~!」


 きつく縛られた縄を解き、蓋を開ける。

 小包の中身は、一枚の古紙が入っていた。


「これは…円陣?」


 古紙にはまず大きく描かれた円が目に入った。

 円の中には「西遊記」に出てくる八卦炉はっけろのようなものが描かれており、中心には太極図。まるで、ファンタジー小説とかで出てくる東洋系の魔法陣みたいだ。


「もしかして、黒歴史(中二病が書いた設定本)のほうを見つけたのかな?」


 うーんでも中身が古紙一枚だけっていうのが気になるよな…。魔法陣のほうはよくできているけど…。

 思っていたのと違い少しがっかりする。エロ本期待してたのに…。

 しぶしぶ、紙を箱に戻そうとしたとき。


――ガタッ、ガタガタガタ!


 突然体が揺れ始めた。

 否、揺れたのは体ではない。目の前にある棚も窓も――この蔵全体が揺れている。

 これはまさか――


「地震!?」


 それにかなり大きいやつ!

 ひとまず頭を守らないと!ええっと、確か入口付近に作業台があったからそこに避難して――って


「何これ!?」


 私は目の前に広がっている光景に驚愕した。


 手に持っていた古紙に黒い渦のようなものが現れたからだ。

 太極図を中心とし黒い渦は回り始めて、周りには陽炎のような靄が出来ている。

 何これ。現実?こんなの漫画や小説の世界で起こるようなもんでしょ。


 いやいや、とりあえずこの事は一旦置いて、頭守らないと!私が今いるとこ棚の近くだし、上には大きい壺もあって危険だったし――ってあれ急に視界が暗くなったな。


「あ」


 ふと、親友の言葉を思い出した。

 身の危険を感じた時、余計なことを考えるのは止したほうがいいと。それは時に死亡フラグとして成り立つものであるから。

 全く、その通りだと思った。


 頭上に落ちてくる壺を目のあたりにし、私の意識は暗闇と化した。


 こうして、神宮寺ジングウジ ツバサは地震により落下した壺によって、齢16歳で死んでしまった。







「災いの封印を解いた愚か者よ。貴様には罰として試練を与える。

 お前は、試練から逃れることは出来ない。

 捻じれた運命の中、お前は正しき道を選ばなければならない。

 お前は破滅と運命共同体。

 試練を乗り越えることが出来なかったお前の未来は、ただ一つ。



 ―――最も悲惨な死のみ」



死ぬ間際に黒い渦から発せられた、謎の言葉の意味もわからぬまま。

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