シリアスなプロローグ
初めて投稿します。どうぞ温かい目で見守って下さい
昔々、あるところに女神の歌声を持つ美しい少女がおりました。
少女の名は【アテナ】。
彼女は山奥にある村の牧師の娘で、人々に愛されて育ちました。
アテナの歌声は人々を魅了し、やがて【山奥に住んでいる女神の歌を聞いたものは祝福が訪れる】と噂されるほどに有名になりました。
ある日、アテナの噂を嗅ぎ付けて、一人の騎士が村を訪れました。
彼は国一番の騎士として有名で、アテナが住む村の人たちにも名が知れ渡っていました。
滅多にお客様が来ない事もあり、村は騎士を歓迎し酒場で大きな宴を開きました。
「こんな偏狭な村に国一番の騎士様が訪れるなんて!さぁさぁ、今夜は宴だ!来客者に乾杯だ!」
「女神の歌声を持つ少女を探している?んだ、それはアテナだべ!」
「あら、騎士様もやっぱりアテナちゃん目当てなのね!そういえば、前に来たお客様も早々に『ここに女神がいると聞いた!』って興奮して喋ってたわねー。うふふ、でもわかるわぁアテナちゃんすごい美人だし、歌も上手だし、性格は…まぁ、負けん気が強くて口説くの大変そうだけどいい子よ」
「野郎ども、楽器のの準備は出来るなぁ!おーい、アテナ、お客さんだ!一曲歌ってくれぃ!」
村の人がアテナの名を口にすると、ステージに一人の少女が現れました。
「もう、そんなに大きな声を出さなくても聞こえているわよ!」
茶髪のウェーブヘアに、陶器のように白く美しい肌。ツリ目で燃えるように紅いルビーの瞳は、彼女の勝気な性格を表しているようだ。
アテナと呼ばれた少女は、溢れる自信と眩しい笑顔を浮かべてステージに立ち、騎士に挨拶をしました。
「初めまして騎士様!私はアテナ。何もないところだけど楽しんでいってね!」
アテナが歌い始めると一瞬で場の空気が変わりました。
騎士は彼女の歌声に衝撃を受け、瞬きを忘れるぐらいに歌うアテナの姿に見惚れています。
村の人たちは楽器を取り出し演奏する者もいれば、アテナと一緒に歌いだす人もいました。子供たちは無邪気にはしゃぎあって、ステージに上り楽しく踊り始めます。
♪
今日は国一番の騎士さんが訪れた。
ここは何もないところだが、みんなあなたを歓迎する。
宴を開くぞ、いつもの酒場にさぁ集まれ。あそこの女将さんの料理は絶品さ!
酒は?(あるぞ!)
飯は(任せな!)
騎士様の来客を祝って(さぁ乾杯!)
歌って踊って、みな騒げ!ここはとても素敵な場所。
女神の声を持つ歌姫が現れたら、あなたはとても幸せ者
♪
歌と笑顔が酒場全体に包み込み、騎士はこんなに楽しくて華やかな宴は一生忘れられないだろうと感動し、その日一日を楽しく過ごしました。
騎士は王国に戻ってすぐさま村の出来事を王様に話しました。
騎士の話を聞いた王様はアテナの存在が気になり、彼女を王宮の舞踏会に招待します。
舞踏会当日。
美しく華やかな衣装を纏ったアテナは舞踏会に現れ、王様は彼女に自慢の歌を披露するように命じます。
人々がアテナを注目している最中、アテナは恐れることなく堂々と歌を披露します。
圧倒的な自信を持つアテナの姿に王様は心を奪われました。
歌い終わった後、王様はアテナに求婚を申し込みます。
「なんと美しい歌声だ。朕の妃になってはくれないか」
しかし、アテナは王の求婚を断りました。
実はアテナには相思相愛の恋人がおり、村でアテナの帰りを待っているからです。
求婚を断られた王様は怒り狂い、アテナを『鳥籠』と呼ばれる塔に閉じ込めました。
『鳥籠』に幽閉させられたアテナは、村や恋人の事を憂い何度も王様に頭を下げ懇願します。
「お願いです、私を村に返してください」
「ならば、朕の結婚を受け入れよ」
「それは出来ません、私には既に愛し合った人がいます」
「ならば、貴様が帰る故郷を燃やしてやる」
王様は騎士にアテナの故郷に火をつけるように命じ、一夜にしてアテナは全てを失いました。
ショックでアテナは日に日に弱くなっていき、生きる希望を失いかけていました。
その時です。
彼女の体にある変化が訪れます。
味覚の変化、突然の吐き気、そして徐々に膨らみ始める腹。
ある可能性が脳裏に浮かんだアテナは、すぐさま医者を呼ぶように王に願います。
医者の判断で可能性は確信に変わり、アテナはある覚悟を決めました。
瞳に希望を宿した彼女は、王様にとある取引を持ち掛けます。
「王様、あなたの言う通りにします。あなたのものになります、だから」
「どうかお腹の子だけでも鳥籠から出だして、自由に生きられるようにしてください」