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翌日の昼頃に、父に呼ばれ昨日のメンバーで集まる事となった。

アイザック曰く「元々、あの国には間者を放っていて、市井は勿論、王宮にも潜んでいるから」との事。

ただ、間者もギリギリまでこの求婚の話は掴めていなかったらしい。

国王に近いごく一部の人間しか関わっていないようだとの事だった。


そして、求婚の裏側・・・・報告書を読んで、ただただ絶句する。

「・・・・これって、為政者として、どうなのかしら・・・」

「国王が知らない間に替わっていても、自分達の生活に支障をきたさなければ、国民っていうのはどうでもいいものなのよ」

言っておくが、国王が替わったわけではない。

だが、報告書を読んでの素直な疑問に、母の答えは妙に的を射ているものだった。

「正直、何も変わらなければ誰がこの国を動かしていても、誰も気づかないわよ」

確かに・・・と、思う。

戦争か何かで目に見える形で国王が替わるのであれば不安にもなるが、知らぬ間に替わっていたが、自分達の生活は何も変わらなかった。

ならば、誰でもいいではないか。

国を運営してるのが国王であろうが、国王以外の誰かが指示してようが。

自分達の生活を守ってくれるのであれば、誰でもいいのだ。

所詮、国の頭なんてそんなものだ。

血筋だの家柄だのと言っているが、この国を支えている国民からすれば、些細な事なのである。



諜報から得た情報は、正直耳を疑う内容だった。

アルンゼン国王ダリウス・アルンゼンの側近中の側近でもあり宰相も務める、アルフ・サットン。全ては彼の単独行動だと言うのだから。

思わず「そんな事あり得るの?」と驚くと共に、国王が何も知らないなんてと不思議でならない。

私への求婚は国王の意思による事は間違いないらしい。

だが、それを良く思わないのがアルフ・サットン。

国王、彼、彼の妹は幼馴染という間柄で、妹であるカレン・サットンが国王を好きらしいのだ。

アルフはカレンを王妃にと国王ダリウスに薦めていたようだが、生まれた時より身体が弱かったカレンは貴族としての務めすらろくに果たせていないようで、王妃などと重圧のかかる立場は無理だ


と言われていた。

それはダリウスもそう思っていたし、手のかかる妹位にしか思っていなかった事も大きい。

アルフは病弱な妹を溺愛しており、何とか願いを叶えようとしていた。

そんな時に私と結婚したいと言われれば、全力で阻止しようと動くのは彼にとっては当然の事なのだろう。


たった一日で大まかな内容ではあるが、かなり核心に迫った報告は幸いだった。

何の情報もなく国を渡るのは危険極まりない。ましてや私は次期女王(・・・・)なのだから。



「求婚を断った場合、本当に攻め込んでくるかしら」

「国境線にはアルンゼン国の兵士が続々集まっているようです」

アイザックの報告に、室内がピリッとした。

それほどまでに戦争がしたいのかと問うたところで、王女を迎えに来たと言えばそれまでだ。

「当然、我が国の兵士も配置済みです。それと、帝国からも・・・・」



行動早っ!

しかもやっぱり来るのね。公爵家からじゃなくて、皇家から・・・



母は「当然よね!」と笑い、父は溜息を吐きながら母の手を撫でた。

「ところで、求婚はどうする?内情が分かった時点で、これを受ける理由もない。恐らく嫁げば地獄のような日々が待っているぞ」

父の言う通りだろう。

主犯は分かったが、一国の王女に対し何処までの事をしてくるのか・・・

国王に内緒で戦争をちらつかせる男だ。暗殺されるかも・・・・位は考えておかなければならないかもしれない。

間者が掴めていないだけで、何らかの目的を持って国王も一枚噛んでいる可能性だってある。誰も信用はできないだろう。

「婚姻しても、きっと直ぐには公表はしないでしょう」

アイザックの言葉に皆が頷いた。

アルフ・サットンの最終目的は、妹カレンを国王の妻にする事。

嫁ぐ事に対し何ら瑕疵があってはならないのだ。彼女が王妃の座を奪ったなどと、そんな噂が流れては困る。あくまでも相思相愛で結婚した事にしなければならないのだから。

「結婚を公表されると、あちらも自由に動けないし困るでしょうからね。―――何かさ、考えれば考えるほど、腹が立ってくるんだけど」


正直、何故自分が選ばれたのかは分からないが、巻き込まないで欲しい。

しかも、国家間の争いにまで発展しそうなのだから。


「このまま、うちと帝国でアルンゼン国を潰しても、何の得もない気がするんだけど」

「確かに。我が国も帝国も別に戦争をしたいわけではないのだからな」

「何がしたいんだろうね」

という私の呟きに「ベアトリス様との結婚ですよ」と冷静に返してくれるアイザック。

「何で私なのかなぁ。ムカつくなぁ」

婚姻を拒否して、アルンゼン国がどうなろうと知った事ではない。

だが、ムカつくし腹立たしい。戦争となった場合、いらない労力を我が国と帝国が使わないといけないのだから。


どうせ潰すなら、もっと効率的に正確にけっちょんけっちょんに、肉体的ではなく精神的に潰したい・・・

そして、私も手を下したい!だって当事者なんだもの。

さて、どうしようか・・・・

求婚を受けるか受けないか。二択しかないのだが、よりどちらが私の憂さを晴らせるのか・・・


「もし結婚を選んでも、アルンゼン国では条件を満たせば半年で離縁が成立します」

「え?本当?」

アイザックの言葉に驚き、二択しかない選択肢の中で婚姻を選択した場合の、その先の選択が広がった瞬間だった。

「結婚したら一年以上は離縁できないと思ってたわ」

「アルンゼンは他国と違い、白い結婚という条件は付くけれど、半年で離縁できるんですよ」

「そう・・・半年もあれば、準備やら根回しはできるかしらね・・・」

「我々も御供します。アルンゼンには部下もいますから」

アイザックの言葉に、私の気持ちが決まる。


「お父様、私この婚姻を受けるわ。万が一戦争になれば犠牲者が出る可能性があるし、こんなくだらない事で命を無駄にさせたくないもの」

「うぅむ・・・」

「それに・・・戦争って武器を持って殺し合うだけじゃないと思うのよ」

「・・・・内側から、崩すのか?」

「えぇ。そのためにはアイザックとミラを連れて行くわ。婚姻の条件にそれを入れて。それを拒否するのであれば、致し方ないわね・・・武力行使を選択するわ」


アルンゼン国からはすぐに了承の返事が来た。

そして私は、アイザックとミラを連れて、アルンゼン国王の元へと嫁いだのだ。


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