クラスのよく知らない子が空に浮かんで戻ってこなくなった日から
友達が居なくなった。
誰もいない教室、風に弄ばれる白のカーテン。
まぶしくて、白い光が大きな窓から組み木の床に熱を与え続けていた。
太陽の熱。温められた木のにおいが、海風に連れられ廊下へすっと出て行く。
この学校は海っぺりに建っていて、全室オーシャン・ビューというやつなのだった。
窓枠にあのこが座っていた。危ない危ないって先生は言うけど。私は言わないよ。
あのこの肌は白くて、髪は黒い。照らされたその色は、空の青とよく組み合わさって、
あのこは空へ浮かんだ。風船のようにぷかりと浮かび、そのまま天高く消えて行きそうだ。
「待ってよ」
「やばいって、戻ってきなよ」
わたしはロッカーの上に放置されていたロープを握った。
「ねえ、わたしがこのまま戻ってこなかったら、寂しい?」
「…」
「わたしとあなたの間には、無限の距離があって、それは青く遠くて、もし悲しいと思うならそれは愛でしょ」
「愛するものだけが、離れ離れになるの。」
あのこはふよふよ浮きながらそう言って、小さい頃手を離してしまった風船みたいに、飛んでった。青へ。
それが一ヶ月前の話。わたしはあの教室の、窓際の席で授業を聞く。
今日は海も空も青い。