第九話 結局、お姉ちゃん三人とプールでデートに
「さあ、今度はウォータースライダー、一緒に滑ろうか」
「う、うん」
静子お姉ちゃんにそう言われて、ウォータースライダーの所へと向かう。
高い所、苦手なんだけど、それ以上に静子お姉ちゃんと一緒ってのが恥ずかしい……。
誰か知り合いに見られてないか、いつもビクビクしており、正直、気が休まらなかった。
「さ、光毅君。お姉ちゃんの膝の上に乗って」
「え? で、でも」
スタート地点に座り、静子お姉ちゃんが、太腿の上を指さして僕に座るよう促す。
「いいでしょう。光毅君、一人だと不安だし」
「大丈夫だよ、一人でも」
「お姉ちゃんが心配なの。さ、座りなさい。命令」
「うん……」
周りの目もあったので、とても出来ないと首を横に振ったが、静子姉ちゃんに促されて、仕方なく膝の上に乗り、静子お姉ちゃんに抱かれながら、滑り出す。
(うう、背中におっぱいがくっついて……)
「じゃあ、行くよー。えい♪」
「うわあっ!」
静子お姉ちゃんの胸が背中に密着するのを感じながら、一緒にスライダーを滑り出し、あっという間に下のプールに着水する。
「ぷはあっ! はあ、はあ……凄かったねー、光毅君」
「う、うん……大丈夫だった、静子お姉ちゃん?」
「平気、平気。光毅君こそ、大丈夫だった?」
着水した瞬間、水を飲んでしまい、咽せてしまったが、静子お姉ちゃんは本当に楽しかったのか、いつになく爽やかな笑顔を見せて、僕の手を取り、一緒にプールから上がる。
絶叫マシーンなんかも平気な静子お姉ちゃんなので、このウォータースライダーも心底楽しかったのだろう。
「もう一度、やろうか、ね?」
「ええ? い、良いよ、もう……」
「どうしてー、お姉ちゃん、光毅君とまた一緒に滑りたいなあ」
と、上目遣いでそうおねだりされて、ドキっとしてしまい、どうしようか悩む。
正直、ちょっと怖かったので、あんまり乗りたくないのだが、静子お姉ちゃんが言うなら、どうしようかと悩んでいると、
「ん?」
「どうしたの?」
「何でもない。お腹空いちゃったね。やっぱり、お昼食べに行こうか」
「うん」
やっぱり、思い直したのか、静子お姉ちゃんは僕の手を引いて、屋内にあるフードコートに連れていく。
やけにあっさり引き下がったので、どうしたのかと思ったが、とにかく諦めてくれたのなら、良かったとホッとし、一緒にお昼を食べることにしたのであった。
「んもう、バレる所だったじゃない!」
「だってー、静子ちゃん、あんまりイチャつきすぎなんだもん」
静子ちゃんが、みっくんにイチャ付いているのを見て、思わず飛び出しそうになると、菜月ちゃんに咄嗟に制止される。
「つか、もうバレてると思うわよー。静子ちゃん、鋭いし」
「う……そうでも、今日は邪魔しない約束じゃ……」
「そんな約束した覚えないしー。あ、フードコートに行ったみたいね、行こうか」
菜月ちゃんが呆れた顔をして、そう言うが、あんまり話し込んでいると、二人を見失ってしまうと思い、後をつけることにした。
見てなさいよー、静子ちゃんの思い通りになんかさせないんだから。
「ラーメンだけで良いの?」
「うん、大盛りだし」
フードコートに行き、大盛りの味噌ラーメンを注文し、静子お姉ちゃんはホットドックとフライドポテト、コーラを注文して、一緒に座る。
「いただきます」
「くす、いただきます」
味噌ラーメンを食べ始めると、静子お姉ちゃんは本当に優し気な眼差しで、僕を見つめながら、ホットドックを食べていく。
何か気が散って、食べにくい……。
「光毅君、はい、あーんして」
「え? な、何で?」
「食べさせたいから。あーん……」
「あ、あーん……」
ふと、静子お姉ちゃんがフライドポテトを差し出して、僕にあーんして食べさせようとしたので、僕も釣られてフライドポテトを食べる。
「美味しい?」
「うん……」
「あ、食べかす、付いてるよー。ちゅっ♡」
「っ! も、もうっ、こんな所で……」
「へへ、良いじゃない。大丈夫、誰も見てないから」
いきなり、静子お姉ちゃんが頬にキスしてきたので、ビックリしてしまい、顔を真っ赤にして周囲をうかがうが、こんな所でキスしてくるなんて……。
「くす、それじゃあ、食べたら次は何処に……」
「おうおう、何イチャ付いてるの、こんな所でっ!」
「え? ゆ、由奈お姉ちゃんに菜月お姉ちゃんっ!」
急に誰かに声をかけられたので、何事かと思って顔を上げると、由奈お姉ちゃんと菜月お姉ちゃんが僕らを睨んで仁王立ちしていた。
「あれー、二人ともいたんだ」
「白々しい、とっくに気付いていたくせに」
「何の事やら、さっぱりー。てか、邪魔しないでよ。今日は私とみっくんのデートなんだから」
「で、デートって、はしたないっ! お、弟と一緒にあんなことをするなんて……」
「事実だしー。てか、二人ともあっち行ってよ。これから、まだまだ光毅君と一緒にプールで楽しむんだから」
「キイイ、見せつけちゃってっ!」
まさか、二人が着ているとは思わなかったので、ビックリしてしまったが、静子お姉ちゃんはとっくに気付いていたらしく、うろたえもしないで、冷静に二人をあしらっていく。
うわああ、二人ともまさか来ていたなんて……ということは、今の静子お姉ちゃんのキスも全部、見られていたってこと?
「静子お姉ちゃんも人前であんな事するなんて、はしたないわよ!」
「良いじゃない、どうせ二人しか見てないんだし」
「てか、私らに見せつけるためにやったでしょう! わざとイチャ付いたりしてえーーっ!」
「家でもやってるんだから、良いじゃない。悔しかったら、今度は二人に譲るわよ。だから、今日は私と二人きりにさせてよ、ねー、行こうか、光毅君」
「こら、待ちなさいっ! お姉ちゃん、みっくんと静子ちゃんの不純異性交遊を許すわけにはいかないんだからねっ!」
静子お姉ちゃんが僕の手を引いて、連れて行こうとすると、由奈お姉ちゃんが僕の前に立ちはだかって、阻止する。
「あのさー、みんな見てるんだから、止めようよー。そんなに光毅君と一緒にウォータースライダー滑りたいの?」
「当然。私ならもっと優しく抱きしめて滑るんだから」
「意味わかんないし。わかったわ。じゃあ、それだけ二人に付き合ってあげても、良い、光毅君?」
「う、うん」
「ヤッター、じゃあ、由奈お姉ちゃんと一緒に行こうね、みっくん」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
三人で勝手に話を進めてしまい、いつの間にか由奈お姉ちゃんと菜月お姉ちゃんも乱入してきて、結局、四人で遊ぶことになってしまった。
「さあ、行くよ。お姉ちゃんにしっかり捕まってねー」
「え、ちょっ、由奈お姉ちゃん……う、うわああっ!」
由奈お姉ちゃんと一緒に滑り台に乗ると、由奈お姉ちゃんは僕の背中に胸を思いっきり押し付けて、一気にスライダーを滑っていく。
「ほ、ほら次は私よ」
「ふええ……な、菜月お姉ちゃんとも?」
「二人とやって、私と出来ない理由があるの? ほら、立って」
由奈お姉ちゃんと一緒に着水すると、即座に菜月お姉ちゃんに手を引かれて、また菜月お姉ちゃんに抱かれて一緒に滑る。
その後も何度も二人に付き合わされ、気が付いたらヘトヘトになっていったのであった。