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第六話 日曜に菜月お姉ちゃんとお出かけ

「ねえねえ、今度お姉ちゃんとまた遊びに行こうよー」

「あ、次は私とー。由奈姉ばっかりずるいよ」

「はうう……」

 夜中になり、リビングでテレビを見ていると、いつものように由奈お姉ちゃんと静子お姉ちゃんが僕の両隣に座って、腕に絡みつき、しつこいくらいに頬を撫でて甘やかしてくる。

 いつもの事とは言え、ちょっとこれは暑苦しい……静子お姉ちゃんは、からかっているだけのように見えるけど、由奈お姉ちゃんは何か本気で甘やかしているみたいで、ちょっと恥ずかしい。


「はいはい、もうその辺にする。みっくん、恥ずかしがってるじゃない」

「むう、菜月ちゃん、また邪魔して」

 お風呂から出てきた菜月お姉ちゃんが見兼ねたのか、パンパンと手を叩きながら、二人から離れるように言い、由奈お姉ちゃんも静子お姉ちゃんも頬を膨らませながら、文句を言う。


「菜月ちゃんも、光毅くんを独占したいんだよねー。うんうん、後で番をあげるから、今は私たちに譲ってよ」

「そ、そんな訳ないし。だいたい、二人とも高校生にもなって、みっくんを甘やかしすぎよ。もう中学生なんだし、もっと男らしく育てないと」

「うーーん、みっくんが男らしくかあ。何か似合わないんだよねえ」

「そうそう光毅君は、ぬいぐるみや小動物みたいに可愛いのが、魅力的なんだから、ちゅっ♡」

「ぬ、ぬいぐるみって……」

 静子お姉ちゃん、僕のことをぬいぐるみみたいに思っているの?

 悪い意味で言ってるんじゃないんだろうけど、それはちょっと複雑な気分がするというか……。


「ああ、もう。みっくんもデレデレしないで、しっかりする。ほら、来なさい。まだ、宿題終わってないんでしょ!」

「え? う、うん……」

「あん、もう、菜月ちゃんに取られちゃったわあ」

 強引に僕の手を握って、菜月お姉ちゃんがリビングから連れ出し、二階にある部屋に連れ戻す。

 宿題はもう終わっているんだけど、まあ二人から逃れる良い機会だったと思おう。


「むうう……みっくん、毎日、注意してるじゃない。いい加減、お姉ちゃんたちに甘えるのはダメだって」

「ごめん……でも、二人とも凄く優しくしてくれるし……」

「優しいことは確かだけど、玩具みたいに甘やかされているの! 後、二人にデレデレしすぎ。いくら、綺麗なお姉ちゃんだからって、中学生なんだから、ああいうのはおかしいのっ!」

 僕の部屋に連れ込むや、菜月お姉ちゃんは、頬を膨らませて、由奈お姉ちゃんたちに甘えすぎるなと注意するが、僕も一応、断っているけど、あまり強引に拒否は出来なかった。

 正直、悪い気分はしないし、二人と一緒に居ると何となく安心もするので、二人の肌に身を預けるのは落ち着くのだ。


「はあ……口で言ってもわからないのかしらねえ……静子お姉ちゃんも由奈お姉ちゃんも困ったものだわ。静子お姉ちゃんは昔は、あそこまでじゃなかったのに」

 と、頭を抱えながら、菜月お姉ちゃんがそんなことをつぶやくが確かに、静子お姉ちゃんは一緒に住み始めた当初は僕をあそこまで可愛がってはくれなかった。

 お母さんが違うって事情があったため、何となく暗い感じがしたし、僕にも菜月お姉ちゃんにもあまり心を開いていない雰囲気があったのだ。

 今みたいになったのは何がきっかけだっただろうか……。


「ふふん、菜月ちゃーん、ちょっと」

「何よ。今、大事なお話をしているの」

「私らも大事な話があるのよね。ほら、早く」

 なんてことを考え、ちょっと沈んだ気分になると、由奈お姉ちゃんと静子お姉ちゃんが菜月お姉ちゃんを手招きして、呼び寄せる。

 何の話をしているんだろう……ちょっと嫌な予感がするけど……。


「ええーー、何で私が……」

「良いじゃない。嫌なら、私が連れていくけどー」

「う……わ、わかったわよ」


 なんてやり取りが聞こえた後、菜月お姉ちゃんが戻ってきて、

「み、みっくん……今度の日曜、暇?」

「うん」

「だ、だったら、私と付き合いなさい。買い物で荷物持ちさせるから」

「え? うん、良いよ」

 顔を真っ赤にして、僕を買い物に誘い、二つ返事でオッケーするが、菜月お姉ちゃんが誘うなんて珍しい。

 何処か様子がおかしかったが、とにかく今度の日曜日、菜月お姉ちゃんと出かける事になったのであった。


 日曜日――

「ま、待った?」

「うん」

「じゃあ、行くよ」

 着替え終わった菜月お姉ちゃんが僕の手を引いて、家を出て、買い物に出かける。

 気のせいか、いつもよりおめかししている気がするけど、どうしたんだろう?


「ね、ねえ、みっくん。映画観に行かない?」

「え? うん」

 突然、菜月お姉ちゃんがそう誘い、頷くと、菜月お姉ちゃんもホッとした顔をし、

「そう。ちょうど、チケット貰ってね。あんたも、見たがっていた映画よ」

 と言って、チケットを二枚見せると、それは僕の好きなアニメの劇場版の割引チケットであった。

 いつの間にこんなのを貰ったのかと思ったが、とにかく二人で映画を観に行くことになり、最近できたシネコンに二人で向かうことになった。


「…………」

 菜月お姉ちゃんと二人で並んで座り、じっとスクリーンに見入る。

 何となく恥ずかしかったが、映画は面白く夢中になって見てしまっていた。


(え?)

 一時間近く経った後、急に菜月お姉ちゃんに手を握られ、ふと顔を見ると、凄く恥ずかしそうな顔をしており、菜月お姉ちゃんも俯いていた。

 どうしたんだろう?

 今のバトルシーンが怖かったのだろうか? そんなことを思いながら、菜月お姉ちゃんとずっと手を握り続け、気が付いたら映画が終わったのであった。


「あーー、面白かったわね」

「うん。あの」

「何?」

 映画館を出ると、菜月お姉ちゃんと近くのファミレスに向かい、そこで軽食を取ることにした。

「えっと……買い物は……」

「ああ、ちょっとほしい服があるのよ。映画はそのついで。悪い? 私の奢りなんだから良いじゃない」

「う、うん。ありがとう」

 ドリンクバーのコーラを飲みながら、菜月お姉ちゃんがそっぽを向いてそう言うが、何で映画館で手を握ったかは聞きそびれてしまった。

 カップルみたいでドキドキしてしまったが、それ以降は、いつもの菜月お姉ちゃんで、食べ終わったあとは、洋服屋に行き、言われたとおりに荷物持ちをして終わってしまったのであった。


「フフ、菜月ちゃーん♪ みっくんとのデートはどうだった?」

「は、はあ? デートってただ買い物に行っただけだし!」

「うんうん、ついでに映画に行ったり、お昼食べたりしたけど、ただの買い物だよね。最近、私達が光穀君のことかまってるから、ふたりきりになれる機会をお姉ちゃん達が作ったんだよ。感謝しなさい」

「だから、デートじゃないって! お姉ちゃん達がチケット余ったからって言うから!」


 家に帰ると、由奈お姉ちゃんと静子お姉ちゃんがニヤ付きながら、菜月お姉ちゃんをからかうが、二人が映画の割引チケットくれたんだ。

 でも、何故か菜月お姉ちゃんは終始顔を真っ赤にしており、二人にからかわれて、ムキになるばかりであった。

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