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第五話 由奈お姉ちゃんと二人でデートに

「あ、みっくん、こんにちはー」

「由奈お姉ちゃん。こんにちは」

 休み時間に廊下を歩いていると、体操服姿の由奈お姉ちゃんに会い、挨拶される。

「体育の時間だったの?」

「うん。今日はマラソンだったんで、疲れちゃったわー」

 マラソンかあ。由奈お姉ちゃん、体育は苦手だったって言ったけど、実際はどうなんだろう?

 一緒に運動したことがないから、よくわからないけど、そんなに息を切らしている様子がないので、自分で苦手と言ってるだけで得意なのかもしれない。


「ねえ、ちょっと良い、みっくん?」

「何?」

 由奈お姉ちゃんに手招きされて、近くの空き教室へ一緒に入る。


「どうしたの?」

「くす、みっくん、今日はよかったら一緒に帰らない?」

「良いよ。部活はないの?」

「今日はお休みなの。へへ、じゃあ待ってるからね。ちゅっ♡」

「っ! も、もう……」

 一緒に帰ろうと誘われたので、即座にうんと頷くと、由奈お姉ちゃんは僕の頭を撫でて、頬にキスをし、教室を後にする。

 空き教室に招かれたので、どんな大事な話があるのかと思ったら、こんなことするなんて、恥ずかしいよ……。


 放課後――

「みっくん、こっち、こっち」

 校門の前で待ち合わせすると、由奈お姉ちゃんは既に着ており、僕の姿を見るや、笑顔で手を振ってきた。

「ごめんね、遅くなって」

「ううん、私も今」来た所よ」

 掃除当番があったので、少し遅くなってしまい、由奈お姉ちゃんを待たせてしまったかと心配してしまったが、今来た所だというなら、よかった。


「それでね、この前、部活で……あ、そうだ。みっくん、ちょっとお姉ちゃんに付き合ってくれない?」

「うん。何処に?」

「へへ、ここよ、ここ」

「?」

 しばらく由奈お姉ちゃんと話しながら、お姉ちゃんがそう言い、指さした先は、ファストフード店であった。


「くす、はい、どうぞ」

「ありがとう……でも、大丈夫かな?」

 由奈お姉ちゃんが注文したフライドポテトとシェイクを持ってくるが、少し不安になってきた。

「何が?」

「その……寄り道しちゃ、ダメって先生に言われてるし……」

「大丈夫よ。ここ、駅や学校からだいぶ離れた場所にあるし」

「うん……」

 学校近くだと、先生が見回りしているらしく、帰りにファミレスやゲームセンターに寄って注意された子も居ると聞いたので、心配していたが、由奈お姉ちゃんがそう言うなら、大丈夫なのだろう。


「久しぶりねー、二人きりで、こうやって、デートするの」

「で、デートって……」

 一緒に帰ってるだけじゃないかと、思っていたが、由奈お姉ちゃんはくすっと笑い、

「デートよ。二人でこうやって、お出かけしているだけでもデートなのよ」

 と、おでこを指で突きながら、由奈お姉ちゃんはそう言うが、僕はよくわからなかった。

 だけど、二人きりと言っても、由奈お姉ちゃんと一緒だと、とてもカップルには見えないだろう。


「みっくん、あーんして」

「え? 恥ずかしいよ……」

 急に由奈お姉ちゃんが僕にフライドポテトを差し出して、あーんして食べさせようとする。

「良いじゃない、はい、あーん♡」

「うう……パク」

 恥ずかしかったので、最初は断ったが、由奈お姉ちゃんは満面の笑みで、なおも食べさせようとしたので、仕方なく応じて口を開ける。

「おいしい?」

「うん……」

「好きなだけ食べてもいいよ。育ち盛りなんだから、いっぱい食べなきゃ」

「い、いいよ……」

 フライドポテトは嫌いじゃなかったけど、Lサイズを頼んでしまったので、これ以上は食べられない。

 だが、由奈お姉ちゃんは、まだ何か考えているのか、コーラのカップを開けて、ストローを刺し、


「ねえ、これ一緒に飲もう」

「一緒にって」

「カップルがよくやってるでしょう。ジュースをストローで二人で同時に飲むやつ」

「う、うん……」

 ストローを二つ刺した、コーラのカップを僕に差し出して、一緒に飲み始める。

 ちょっと、恥ずかしい……誰も見てないか不安になるが、こんなことして何が楽しいんだろう?


「はい、良いわよ」

「うん」

 ようやく飲み終わり、由奈お姉ちゃんの合図で、ストローから口を離す。

「へへ、嬉しいなあ、まるでカップルみたい」

「カップルって……」

 由奈お姉ちゃんとカップルって、そんな事は考えた事もないので、嬉しそうに言われても困る。


「へへ、今度はここに行こう」

「え? うん。でも、大丈夫?」

「平気よ。すぐ終わるし」

 お店を出た後、今度は由奈お姉ちゃんはゲームセンターに入ろうと言い出し、二人で入る。

 制服姿で入ることに不安はあったが、先生らしき人はいないので、大丈夫と言い、由奈お姉ちゃんは僕を中に引っ張っていった。


「ここよ、ここ」

「えっと……プリクラ?」

「うん。へへ、一緒に撮ろうと思ってね」

 こんなの随分と久しぶりに入ったが、由奈お姉ちゃんは慣れた手つきで、操作し、フレームを選択する。

「はい、手をこうして」

「こ、こう」

「はい、撮るよー」

 由奈お姉ちゃんの合図で、撮影が始まり、シールが何枚か出る。


「ほら、見て、ハートマークよ」

「は、ハートマークってもう……」

 手をレンズの前に合わせて、何かの形をとっていたが、ハートマークとは……。

「じゃあ、帰ろうか」

「うん」

 恥ずかしかったが、由奈お姉ちゃんはうきうきした顔をして僕と店を出て、手を繋いで一緒に家路に着く。

 本当にカップルみたいだったが、由奈お姉ちゃんはまさか僕と……というのは考え過ぎかな


「ほらほら、見てー。今日、みっくんと一緒に撮ったの♪」

「ふ、ふーーん……二人でゲーセン寄ったんだ」

 家に帰り、由奈お姉ちゃんが僕と一緒に撮ったシールを静子お姉ちゃんに見せつける。


「カップル見たいでしょう?」

「んーー、どっちかって言うと、親子みたい。母親と息子。由奈姉、包容力あって年齢以上に大人っぽいし」

「キャハハ、確かに」

「ちょっと何よそれ!」

 静子お姉ちゃんがそうニヤ付きながら言うと、由奈お姉ちゃんは頬を膨らませて怒る。

 でも静子お姉ちゃんの言う通りかなと思ったりした。


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