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第四話 静子お姉ちゃんが一夜だけのメイドに

「むうう……」

「ほら、いい加減に機嫌直す。良いじゃない、光穀君と一緒に寝たって」

「良くないし! 光穀だって、もう中学生なんだから、一緒に寝るの変でしょ!」

 僕と静子お姉ちゃんが一緒に寝ていたのが、そんなに気に入らなかったのか、ずっと不機嫌な顔をしていた。


「みっくんもみっくんよ! もう中学生なんだから、静子お姉ちゃんと一緒に寝るのおかしいって、思わなきゃ駄目!」 

「ごめんなさい……」

「ハイハイ、そこまで。早く朝御飯食べて支度しないと、学校に遅れるわよ」

 菜月お姉ちゃんに叱られている僕を見て、由奈お姉ちゃんがパンパンと手を叩いて、割って入る。

 やっぱり、中学生にもなって、お姉ちゃんと一緒に寝るなんて恥ずかしいよね……ちゃんと、拒否できなかった自分が恥ずかしく思えてしまい、俯きながら、ご飯を食べていった。


「くす」

「え? 何、静子お姉ちゃん?」

「何でもない。昨夜はありがとう」

「うん……」

 ご飯を食べ終わった後、静子お姉ちゃんが頭を撫でながら、僕に微笑みかけて、昨日のお礼を言う。

 そんなに僕と一緒に寝たのが嬉しかったのかな……静子お姉ちゃんも恥ずかしくなかったのかと首を傾げていたが、お姉ちゃんの真意はわからないままであった。


「ごちそうさま。あ、私、今日バイトあるんで、遅くなるから」

「うん」

 朝食を食べ終わった後、静子お姉ちゃんは僕にそう告げ、いったん、二階の自分の部屋に戻る。

 静子お姉ちゃんは、近くのファミレスでバイトしており、今日は一緒に帰れないようであった。


「静子ちゃん、今日はバイトかあ」

「ふふ、ねえ、二人とも」

「何?」

「今夜は久しぶりに外食にしない? 明日は休みだし、ちょうど良いじゃない」

「そうね。良いけど、何処に食べに行くの? 静子ちゃん、今夜はバイトだから、待っていたら遅くなっちゃうわ」

 菜月お姉ちゃんが、今夜は外食にしようと、由奈お姉ちゃんと僕に提案したが、静子お姉ちゃんがバイトでいないのに、三人だけで食べに行くのはちょっとどうかと思っていると、菜月お姉ちゃんはイタズラっぽい笑みを浮かべ、

「だから、そこよ、そこ」

「ん?」


 夜になり――

「いらっしゃいませー」

「ヤッホー、静子お姉ちゃん」

「えっ? 三人とも、どうしたの?」

 由奈お姉ちゃんと菜月お姉ちゃんの三人で、静子お姉ちゃんがバイトするファミレスに入ると、ちょうど静子お姉ちゃんがメイド服のようなウェイトレス姿で僕たちを出迎えた。

「たまには、外食も良いかなって思ってさー」

「えー、別に構わないけど、私の夕飯はー?」

「静子ちゃんには、好きなものをテイクアウトで、頼んであげるから。それで、許してくれる?」

「むうう……じゃあ、フライドチキンのセットでお願い。あ、光毅くんにはサービスしてあげるから、何でも好きな物頼んでね」

「えー、私には?」

「どうせ、菜月ちゃんが言い出したんでしょ。ほら、案内するから、こっちへ来て」

 混んでいたので、あんまり長話しても、迷惑になると思い、静子お姉ちゃんに案内された席へ、三人で向かう。


「ご注文は以上ですか? ドリンクバーはあちらになるので、少々お待ちください」

 近くの席で注文を取り、テキパキと働いている静子お姉ちゃんを見て、いつもと違うお姉ちゃんの姿に感心してしまう。

 たぶん、僕たちがいきなり店にやってきて、良い気分はしてないんだろうが、それでも嫌な顔を一つ出さずに、働いているのは凄いと思った。


「へへ、何頼む、みっくん?」

「えっと……ハンバーグステーキ……」

「はいはい、お子様ねえ、相変わらず」

「な、何で?」

 特に食べたい物がなかったので、無難にハンバーグのセットを頼むと、菜月お姉ちゃんは僕の頭をポンと撫でながらそう言うが、そんなに子供っぽいのかな……。


「子供っぽくなんかないわよ、普通じゃない。何なら、私も同じの頼むわ」

「いや、由奈お姉ちゃんまでそこまでしなくても……私は、カルボナーラとサラダね。あと、ドリンクバー三つで良いかしら。すみませーん」

「はーい」

 注文の品を決めて、菜月お姉ちゃんが店員を呼ぶと、静子お姉ちゃんではない別のウェイトレスさんが、やってきた。

 やっぱり、忙しそうだな、静子お姉ちゃん……バイトは確か九時に終わるらしいので、今夜はどっちにしろ、一緒に夕飯は食べられなかったのだろうけど、何だか悪い気もしたと同時に、静子お姉ちゃんの働いてる姿を見て、何だか新鮮な気分にもなっていた。


 トントン。

「はーい」

「光毅くん、まだ起きてるー?」

「し、静子お姉ちゃん。どうしたの?」

 夜も十時半を過ぎた頃になり、バイトから帰ってきた静子お姉ちゃんが、僕の部屋に入ってくると、なんとアルバイト先のウェイトレス姿で現れた。


「ふふん、ちょっと借りたんだあ。どう、似合うでしょう、ご主人様?」

「か、借りたって……」

 フリルの付いたメイド服みたいな制服を身にまとい、スカートをちょっと上げて、僕に挨拶するその姿は本当のメイドさんみたいであった。


「あそこの店、制服が可愛いって評判なのよねー。だから、いつか光毅くんにも見せたかったんだけど、まさか今日来るとは思わなくて」

「ごめんね、菜月お姉ちゃんが……」

「良いのよ、どうせ、そんな事だろうと思ったし。光毅君が来てくれて嬉しかったなあ。お礼に、何でも言う事聞くよ。何なりとお申し付けください、ご主人様♡」

「え? で、でも……」

 僕の後ろに抱き着き、静子お姉ちゃんがそう言ってきたが、いきなりこんなことを言われても困ってしまう。


「遠慮しないで、何でも言ってほしいなあ。お姉ちゃん、光毅君の為なら、何でもしてあげたいのい」

「そ、そんなこと言われても……」

「んー、また今夜も一緒に寝る? 何なら、お風呂に入ってお背中流そうか? 久しぶりに、光毅くんと入りたいなあ」

「はうう……」

 僕の耳元で色っぽい声で、囁き、胸がドキドキと高鳴ってしまう。

 静子お姉ちゃんは胸を背中に押し付け、擦っていたので、余計にいやらしく感じてしまい、流石に冗談が過ぎると思っていると、


「本当は嬉しかったんだ。みんながお店に来てくれたの」

「え?」

「何でもない。ほら、早く言って、命令」

「うう……」

「もう、静子お姉ちゃん、またっ! てか、なんて格好してるのよ!」

「あ、まだ起きてたんだ」

 困っていた所で、菜月お姉ちゃんが僕の部屋に入ってくる。

「また一緒に寝ていやらしいことをしようとしたわね。そうはいかないんだから」

「ちぇ、片親違いの弟との禁断の愛を楽しみたかったのになあ。ま、また今度の機会にね。ご主人様」

 と僕の頬を指で軽く突いた後、静子お姉ちゃんが僕の部屋を去る。

 片親違い……改めて聞くと複雑な関係だけど、僕にとっては何の関係もない。

 けど、静子お姉ちゃんは本当の所、僕のことをどう思っているのか、少し不安に思いながら一夜を過ごしていった




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