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実姉、片親違い姉、義姉、三者三様の姉たちに囲まれて甘えられる生活  作者: beru


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第二十五話 四人はずっと一緒

「へへ、光毅君、ゴメンね。何か強引に誘っちゃって」

「あ、えっと……」

 クラスの女子に腕を引かれて、後夜祭を見て回る。

 本当なら菜月と一緒に行きたかったのに、少し残念に思っていた光毅であったが、後夜祭のバンドを見るのはかなり新鮮で楽しかったので、良い経験にはなったと思っていた。


「ねえ、光毅君」

「ん?」

「えっと、その……今、付き合っている女子とか居るの?」

「え? い、居ないけど……」

「そ、そうっ! だったら、その……わ、私と付き合ってみないっ!?」

「…………え?」

 急に告白されてしまい、ビックリして声を張り上げる光毅。


 彼女とは少し話をしている程度で、特に親しくしていた覚えはなかったので、光毅も余計に驚いてしまい、真っすぐな目で自分を見て、告白してきた彼女を見て、動揺して、言葉が出なかった。

「あ、あはは……ゴメン、急に変な事を言っちゃって……あの、光毅君の事、前から気になっていて……そ、その……良かったらでいいけど、私と……」

 初めての告白だったらしく、彼女も上手く言葉が出てこなかったようで、たどたどしい口調で光毅にそう告げる。

「え、えっと、その……」

 光毅も突然の事で、どう返事をしたらいいのか悩む。


「――っ!」

(あ、あれは……菜月お姉ちゃん?)

 急に視線を感じたので、振り向くと、菜月が物陰から覗いており、光毅と目が合った瞬間、走って逃げ去ってしまった。

(菜月お姉ちゃん……)

 変な所を見られてしまったと、ちょっと気まずい気分になってしまったが、

「あの、それでどうかな?」

「あ……え、えっと……」

 菜月の事は気になったが、とにかく返事をしないといけないと思い、彼女と向き合う。


「ただいま……」

「あ、おかえりー、みっくん。遅かったじゃない」

「うん、後夜祭見てて……」

 その後、帰宅した光毅は、由奈と静子に出迎えられ、家に入る。

「あの、菜月おねえちゃんは?」

「菜月ちゃん? 部屋に居るけど?」

「あ、ありがとう」

 早速、菜月の部屋へと向かい、彼女と話をすることにした。


 トントン。

「何?」

「菜月お姉ちゃん。ちょっと良い?」

「何よ?」

 部屋に入ると、菜月は机に向かって、宿題に取り掛かっているようであったが、光毅はそのまま部屋に入る。

「えっと、後夜祭の時の事なんだけど……」

「ああ……よかったじゃない。可愛い子に誘われて。楽しかったでしょう」

「あ、えっと……楽しかったけど、その……何か誤解してないかなって思って」

「誤解? 何がよ? 光毅が、女の子と一緒に後夜祭を見たのは事実でしょう」

「そ、そうじゃなくて……」


 告白された所を見ていただろうと言いたかったが、中々言葉が出ず、どう切り出して良いのか悩んでしまった。

「その……あの子はただのクラスメイトで、別に彼女とかじゃないんだ」

「はあ? そんなの私に何で言うのよ?」

「だ、だから……見ていたんでしょう、後夜祭でその……」

 彼女に告白された所をと言いかけたが、もしかして聞こえてなかったのではと思い、一瞬、言葉を引っ込める。


「あのさ、光毅。別に光毅が誰と付き合おうが、光毅の勝手で、私には関係ないの。告白されたってなら、ちゃんと自分で返事を決めなさい。私が言えることはそれだけだから」

「ち、違う。もう、告白は断ったんだよ」

「え?」

 さっさと出て行けと言わんばかりの突き放すような言い方をして、少しムっとした光毅であったが、咄嗟に彼女にそう告げる。


「断ったって……何でよ?」

「それは……あの子の事は嫌いじゃないけど、付き合いたいって思うほどじゃなかったって言うか……何より、僕は……」

 菜月を始め、姉たちの事が凄く気になっており、他の女子と付き合う事は考えられなかった。

 こんな事はもちろん、誰にも言えなかったが、それが正直な気持ちだったので、

「はあ……光毅も、子供じゃないんだし、彼女の一人でも作れば……」

「で、でも……僕はお姉ちゃんたちに彼氏が出来るの、あんまりいい気分しないっていうか……嫌だし」

「嫌って……」

 流石に口にするのは恥ずかしかったが、自分の気持ちを菜月に告げる。


 三人の姉たちに、彼氏が出来たらどう思うか想像してみたが、やっぱり嫌な気持ちしかなく、彼女達も同じ気持ちに違いないと思うと、とても自分も彼女を作る気はなかった。

 こんなのシスコンでおかしいとは思っていたが、それが正直な気持ちだったので、

「くす、何それ……姉離れ出来てないって事?」

「うん」

「は、ハッキリ言わないでよ、恥ずかしいわね」

「きゃー、本当に? 今の言葉、めっちゃ嬉しいんだけど」

「え? ゆ、由奈お姉ちゃんに静子お姉ちゃん」

 そう答えると、部屋の外で盗み聞きしていた、由奈や静子が部屋の中に乱入して、光毅に抱き付いてきた。


「ちょっと、二人とも何やっているのよ?」

「何って、光毅君と菜月ちゃんの事が心配で、盗み聞きしていたのー。えへへ、光毅君、私達の事、そんなに好きなんだ」

「は、はうう……う、うん」

「きゃー、本当に? やっぱり、今まで可愛がった甲斐があったわね。お姉ちゃんたちもねー、みっくんの事、大好きよ。もう、あなた以外の男は考えられないって位」

 由奈と静子が光毅に抱きつき、恥ずかしいと思いながらも、彼女達に身を委ねる。


 相変わらず弟を溺愛してくる上の姉達を見て、菜月も溜息を付いていたが、光毅も嫌がる素振りを見せず、由奈や静子の胸に顔を埋めていた。

「ほら、菜月ちゃんも来なさいよ」

「ふ……来るわけないでしょう。私は、もうみっく……いえ、光毅を甘やかすことはしないって決めたの。光毅ー。これからはちゃんと一人前の男子として接するから、そのつもりでいなさい」

「え? 一人前って……」

 光毅の頭を撫でながら、菜月はそう言うと、部屋を出る。


「そのまんまの意味よ。じゃあ、お風呂入ってくるからさ」

「あ、うん……」

 と、今まで見せたことないような穏やかな笑みで菜月は光毅に告げる。

 一人前の男子として接する……それは、どういう意味かと首を傾げていると、

「ふふ、菜月ちゃんも吹っ切れたみたいね」

「そうねー。れっつ、禁断の近親エンドまっしぐらかしら?」

「え、えっと……」

「そういう意味じゃないわよっ! んもう、しょうがないわね、三人とも」


 その後――

「ほら、光毅。起きなさい」

「う……おはよう、菜月お姉ちゃん」

 菜月に叩き起こされ、光毅も目を擦りながら起き上がる。

「朝御飯出来てるわよ。お姉ちゃんたちも起きているから、さっさと行く。遅刻しちゃうわよ」

「はーい」

 菜月に言われて、台所に行き、朝御飯を食べに行く。


「はーい、みっくん、おはよー」

「おはよう」

「おはよう、由奈お姉ちゃんに静子お姉ちゃん」

 二人とも、既に制服に着替えて、朝食を食べていたので、二人に挨拶する。

 いつもと同じ朝……三人の姉たちとの一日がまたいつものように始まる。

 こんな一時がいつまで続くか――出来れば、ずっと続けば良いと思いながら、光毅はテーブルに着いたのであった。


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