第十四話 お姉ちゃんたちとラブラブ旅行
「というわけで、明日から旅行に行きましょうー」
夜中、夕食を食べている最中、由奈が突然そう提案し、三人が唖然とする。
「旅行って、いきなり何処行くのよ」
「ふふん、みんなで海行きましょう、海♪」
「良いね、行こうか。光毅君に泳ぎも教えてあげたいし。ねー?」
「はうう……でも、急にどうしたの?」
静子が隣に座っていた光毅に抱き付いて胸に顔を押し付けられながら、光毅が由奈に訊ねると、
「ふふん、お父さんの知り合いの旅館に招待されてねー。一泊だけだけど、みんなで遊びに行ったら、どうかって」
「何だ一泊だけかー。じゃあ、近く何でしょう」
「まあね。あんま、遠出も出来ないし」
「由奈お姉ちゃんは受験なんだから、遊んでいて良いの?」
「息抜きは大事よん♪ みっくんも良いよねー?」
「うん」
由奈の受験は心配だったが、彼女の成績なら大丈夫だろうと言い聞かせ、光毅もうなずく。
これで明日の予定が決まったのだが、
「んーー、良い景色ね」
翌日、四人で電車に乗り込み、目的地の旅館へと向かう。
電車を乗り継いで、二時間ほどの場所にあり、四人でお菓子や麦茶を口にしながら、列車での楽しむ。
「みっくーん、お菓子食べるー?」
「もう、さっきから由奈お姉ちゃん、お菓子あげてばかり。みっくん、犬じゃないんだから」
「そうそう。もうお腹いっぱいって顔してる」
「むうう……可愛いから、もっとあげたいの!」
と、妹たちに窘められて、頬を膨らませながら、お菓子をバッグの中に引っ込める由奈だが、実際光毅ももうお腹いっぱいになっていたので、安堵の息を漏らす。
「それにしても皆で海かー。いつ以来だっけ?」
「小学生の時にあった気がするわねー。あ、海見えたよ」
話をしている間に、海が見え始め、光毅も窓に張り付いて、青い海を眺める。
久しぶりの海を見て、いつもはおとなしい光毅も目を輝かせて心を躍らせていた。
「あんまり混雑してないね」
「ふふん、穴場だからねー。でも、サメが出るらしいから、気を付けないと」
「さ、サメ?」
由奈の言葉を聞いて、光毅も一瞬、青ざめる。
「この前、人食いザメの映画、テレビで観たばかりだから、光毅君も怖がってるじゃない」
「気を付けるようにって言ってるだけよ。あと、さり気なく抱き付かない」
「良いじゃない、光毅君、怖がってるんだし。ねー?」
「はうう……」
静子が光毅をぎゅっと抱き寄せて、彼の頭を胸に埋めていき、光毅も顔を真っ赤にする。
こんなスキンシップも日常茶飯事ではあったが、空いてるとは言え、人前でやっているので、光毅も恥ずかしくて、顔を赤くしていた。
「さ、着替えましょう。みっくんの着替えのお手伝いをしたいけど、男子更衣室には入れないし、ごめんね」
「もう、中学生なんだから一人で出来るにきまってるでしょ。ほら、早く行きなさい」
「うん」
由奈のおふざけを聞いて、光毅も苦笑しながら、更衣室へと向かい、水着に着替える。
海に行くのは
「きゃー、冷たいわねー。みっくん、えいっ!」
「うわっ! い、いきなりやらないでよー」
水着に着替えて海に入るや、由奈が海水を光毅にひっかけ、二人で大はしゃぎする。
海に入るのはしばらくぶりなので、四人とも舞い上がった気分になっていた。
「うーーん、白い砂浜に青い海。良いわねえ。これぞ、夏」
「何気取ってるのよ、静子お姉ちゃん」
「別に良いじゃん。光毅くーん、ちょっとこっち来て」
「何?」
ビーチにシートを敷いて、のんびりしていた静子が光毅を呼び寄せると、静子は日焼け止めの瓶を光毅に渡して、
「これ、背中に塗って。お姉ちゃん、陽射しに強いの弱くてさー」
「え……う、うん」
静子がうつ伏せになって、ビキニを外して、白く細い背中を弟の前で露にしながらそう頼むと、光毅も瓶を持って、日焼け止めを手に付ける。
「ちょっと、何でみっくんに頼むのよ」
「誰に頼んだって私の勝手ー。光毅君にやってもらいたかったから。ほら、ゆっくり塗ってねえ」
「うん」
菜月が静子に嫉妬から文句を言う物の、静子は意に介す様子も全くなく、光毅も静子の言う通りに、日焼け止めのオイルを背中に塗っていく。
菜月にやらせても良いのではないかとも光毅も内心思っていたが、断る理由もなかったので素直にいう事を聞き、日焼け止めを塗っていったのであった。
「んっ、そこ……もっと、下の方、しっかり塗って……あ、やんっ!」
「だ、大丈夫?」
「ふふん、大丈夫。ほら、もっと下よ、下。腰の方も塗って」
「え、ええ?」
静子がそう指示するが、腰の方を塗ってしまうと、どうしてもお尻も触ってしまうので、光毅もどうしようか悩む。
しかし、言われた通りにやらないと何をされるかわからないと思い、指示通り、腰のあたりを手でゆっくりと擦り、静子のお尻に思わず触れてしまった。
「あっ、ああん♪い、良いよ、もっとお」
「はい、そこまでっ! みっくんも、そんな所、触らないのっ!」
「あん、光毅君にやって欲しかったのにい」
光毅がお尻に触れてしまい、静子が甘くいやらしい声をあげた所で、菜月が止めに入り、光毅から日焼け止めを取り上げる。
「ああん、静子ちゃん、みっくんにサンオイル塗ってもらってたの?ずるいずるい、みっくん、私にもやってよー」
「う、うん。じゃあ、そこに……」
「だあああっ!二人とも、私が塗ってあげるから、もうみっくんを扱き使わないでっ!てか、みっくんもデレデレしないのっ!」
「デレデレしてないよお」
静子が光毅に日焼け止めを塗ってもらっているのを見て、由奈も海から上がって、浜に駆け付け、オイルを塗ってくれるようおねだりすると、菜月も顔を真っ赤にして、そう叫ぶ。
上の二人の姉の過剰な弟へのスキンシップに、菜月も頭を悩ませていたが、幼い光毅はなぜ、菜月がそこまで怒っているのか、まだよく理解出来ずにいた。
「うーん、浜で食べる、お弁当も最高ね。はい、みっくん、あーん」
そのご、砂浜でパラソルを立て、少し遅めの昼食を四人で摂り、静子と由奈が光穀の脇に座って、オカズをどんどん食べさせていく。
いつもとちがい、二人ともビキニ姿で肌を露出させている為、光穀も目のやり場に困ってしまい、縮こまっていた。
「むう、またみっくん、甘やかして。二人とも子供扱いしすぎよ」
「まだ光穀君は子供だもんねー。それにしてもここ海の家ないのかあ。だから人少ないんだね」
「まあ、だからこうやってみっくんとイチャイチャ出来るしー」
「い、イチャイチャって……」
静子と由奈が肌を密着させて、そう迫ると、光穀も目を回して顔を赤くする。
悪い気分はしなかったが、恥ずかしいのと、菜月が不機嫌になるので、光穀も素直には楽しめずにいたのであった




