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実姉、片親違い姉、義姉、三者三様の姉たちに囲まれて甘えられる生活  作者: beru


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第十三話 菜月お姉ちゃんとのデートだったが……

「まだかな……」

 駅前で光毅は菜月が来るのを待つ。

 今日は菜月と遊びに行く約束をしたのだが、一緒に行こうと言ったのに、なぜか先に駅前で待っててくれと言われ、光毅が一足先に駅に行って、姉の菜月を待つことになった。

「何で一緒じゃ駄目だったんだろう?」

 準備があるからと言われたが、家を一緒に出た方が良いと言ったのに、由奈や静流からも駅で待ち合わせをしろと言われてしまい、意味もわからないまま、先に駅に行って、菜月と待ち合わせをすることになったのだ。


「ごめん、待った」

「うん、どうしたの、遅くなって?」

「し、支度にちょっと手間取ったのよ。悪い?」

 二十分ほど待ってようやく菜月が来ると、照れくさそうに顔を赤くして、弟の光毅の元に駆け寄る。

 髪をサイドに良い、フリルのついたブラウスに短めのスカートを着ていた菜月は、光毅が見てもいつも以上に可愛らしく見えてしまい、誰が見てもデートに行く服装にしか見えなかった。


「何よ?」

「え、えっと……普段、見ない服だなって思って」

「お姉ちゃんたちにこれ着て行けって言われたの! 文句ある?」

「ないけど……」

 菜月も光毅の視線を感じて、恥ずかしくなってしまい、思わずそう叫んでしまう。

 なぜ、自分と出かけるのに、こんなにお洒落をしているのか、理解出来なかった光毅だが、菜月は弟の手を取り、

「ほら、行くわよ」

「うん」

 と言って、二人が街中に繰り出していく。

 二人きりで出かけるのは珍しい事ではなかったが、いつになく菜月も緊張してしまい、まともに光毅の顔を観れないほどであった。


「ねえ、何処か行きたい所ある?」

「別にみっくんの行きたい所で良いわよ」

「僕の行きたい所……よくわからないなあ」

「何よ、あんたが誘ったんじゃない」

「そうだけど……」

 菜月が楽しめそうな所を昨日も考えていた光毅であったが、自分が好きなゲームセンターなどは菜月が好きじゃないので、あまり彼も乗り気はしなかった。


「この前は二人で映画観に行ったわよねー」

「観たい映画あるの?」

「別に。子供のころも、よく二人で遊びに行ったわねー」

「そう……」

 菜月が昔の事をふと口にすると、光毅も少し寂しそうな顔をする。

 まだ幼い頃は菜月と二人のことが多く家の事情も複雑で、楽しい思い出があまりなかったからだ。


「やっぱり、ここが良いな」

「ゲーセンじゃない。まあ、少しは付き合ってあげるわ」

 ゲームセンターの前を通りかかると、二人で中に入り、クレーンゲームやエアホッケーなどで遊ぶ。

 あまりゲームが得意でなかった菜月であったが、


「んーー、エアホッケーって楽しいわねえ。つか、あんたもうちょっと手加減しなさいよ」

「そ、そんなこと言われても……」

 一時間ほど遊び、十分気晴らしになったのか、菜月が満足そうに店を出て、光毅と手を繋いでまた何処かへ歩いていく。

 日曜なので人通りが多く、知り合いも恐らく外に出ているだろうが、光毅は姉と手を繋いで歩いている事に特に気にかけている様子もなく、無垢な顔をして繁華街を歩いていったが、

「みっくんさあ。私と手を繋いで恥ずかしくないの?」

「何で?」

「何でもなにもおかしいじゃない。みっくん、もう中学生よ。姉と手を繋いで遊びに行くなんて、おかしいわよ。恋人同士じゃないんだから」

「そうなの?」

「そうよ。みっくんがいつ恥ずかしいって言うかなって思って、私の方から手を繋いだけど、何も反応しないから心配しちゃった」

 菜月は弟の手を繋ぎながら、そう注意するが、光毅はそんなに恥ずかしい物なのかと言った顔をして、キョトンとしており、首を傾げる。

 中学生にもなって、姉弟で手を繋いでいるのは一般的ではなく、菜月にもそういう認識はあったが、光毅には自覚がなかったので、少し心配になってきた。


「でも、由奈お姉ちゃんや静子お姉ちゃんは僕と手を繋ぐと嬉しいって」

「あの二人はちょっとおかしいの。お姉ちゃんたちも、甘やかせすぎなのよー。だから、みっくんがいつまで経っても成長しないんだわ」

 あきれ顔をしながら、菜月もそう言うが、光毅も二人が自分を甘やかせすぎではないかという自覚はあったようで、顔を赤くして俯く。

 だが、そんな光毅もたまらなく可愛く思えてしまったのか、菜月はぎゅっと手を繋ぎ、

「んもう、子供なんだから。ほら、行くよ。お昼食べに行こう」

「うん」

 と言って、光毅とともに昼食を食べに行く。


「えっと、ハンバーガーとナゲットのセットで良かった?」

 近くのファストフード店に入り、ハンバーガーのセットを頼んで軽く昼食を摂ることにする。

 お小遣いは貰っていたが、あまり高い所へは行けなかったので、せっかくの光毅とのお出かけにこんな所ではと菜月も申し訳なさそうに思っていたが、光毅は全く気にしている様子はなく、笑顔でハンバーガーにかぶりついていた。

「あ、ほら。ケチャップ口についてるよ」

「はうう……は、恥ずかしいよ」

「あんたがちゃんとしないから」

 菜月が小言を言いながら、紙で光毅の口元を拭くと、流石に光毅も顔をしかめる。

 まだまだ子供だなと思いながらも、菜月もどこか和んだ気持ちになりながら、光毅の頭を撫でていた。


「キイイイ、菜月ちゃん、二人でイチャついてるう!」

「イチャついてるのかなあ。見るからに、弟を世話しているお姉ちゃんって感じだけど」

「それがイチャついてるっていうの!」

 近くの席で、帽子を被りながら、菜月と光毅の様子を由奈と静子が見て、その仲睦まじい様子を見て、由奈が嫉妬して地団駄を踏む。

「でもいいなあ、光毅君と二人でデート何て」

「私もする。夏休み絶対二人で行くから」

「由奈姉、今年受験でしょう。良いの、遊んでいて?」

「良いのよ、息抜きも大事だし!」

「ふーん。ま、由奈姉は成績いいから、大丈夫か」

 コーラを飲みながら、静子がそう言うが、由奈は本気で菜月を羨んでおり、過保護で大変だなと静流も思いながらも、彼女も菜月の事が内心羨ましく思っていた。

 しかし、それ以上に弟と妹が可愛く思えてしまい、しばらく二人だけで楽しませてあげようとほほえましい目で眺めていた。


「あ、ちょっと良い?」

「うん」

 昼食を摂った後、菜月が光毅を連れて書店に入る。


「何買うの?」

「大したものじゃないんだけど、これ」

 と言って、菜月が彼に見せたのは、占いの本であった。

「菜月おねえちゃん、占いやるの?」

「最近、ちょっと興味持っただけよ。あんたと由奈お姉ちゃんの相性とか占ってあげようか?」

「え? 何で由奈お姉ちゃんの?」

「だって、由奈お姉ちゃん、みっくんにベタ惚れじゃない。将来、結婚するかもしれないわよ」

「は、はあ? そ、そんなこと……」

 突然、とんでもない事を菜月が言いだし、光毅が顔を丸くする。


 由奈の事は好きだったが、結婚なんて考えたこともなく、ましてや姉と弟で結婚なんか無理だということは彼でもわかっていたが、

「まだ彼女は早いと思うけど、由奈お姉ちゃんとならしょうがないかなあ。美人で優しいし、頭も良いからね。みっくんはどう思う?」

「ぼ、僕そんなこと……」

「ふーん。じゃあ、私ら三人選ぶならだれが良い? まあ、私とは無理なんだけど、仮に一人選ぶなら」

「え、選べないよ!」

「へえ。まさか静子お姉ちゃん? だったら、私にも……はっ! バッカみたい!」

「?」

 菜月は顔を真っ赤にして、頬をパチンと叩く。

 由奈と違い、自分は血がつながった正真正銘の姉なのに、こんな妄想許されるわけないと必死に言い聞かせていた。



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