第十二話 菜月お姉ちゃんの嫉妬?
「じゃあ、この前やったテスト返すよー」
光毅の担任がそう言うと、一人ひとり、答案を返却していく。
「はあ……六十点かあ……」
答案を受け取った光毅が、溜息を付きながら、自分の席でそう呟いて肩を落とす。
平均点とほぼ同じのイマイチな点数だったので、光毅も落胆してしまい、親に知れたら怒られるのではないかと不安になっていた。
「みっくんー、ちょっと良い? あれ、お勉強してたんだ」
夜中になり、光毅がテスト勉強をしている最中、由奈が部屋に入ってくる。
「もうテスト終わったんじゃないの?」
「うん……でも、あんまり良くなかったから……」
「そんなに良くなかったの? もしかして、夏休み、補習とか?」
「そこまでじゃないけど」
「ふーん。くす、偉いわね、みっくん。絵に描いたような優等生じゃない」
「も、もう……」
由奈が頭を撫でながらそう告げると、何だか嫌味を言われたみたいな気分になってしまい、光毅も少し顔をしかめる。
元々、光毅は成績はそこまで悪くなかったので、由奈もまさかと思ったが、彼の顔色を見て、おそらく平均点前後の点数位なのだろうと、すぐに察した。
「まあ、勉強中なら邪魔はしないけど、何かわからない事ある? お姉ちゃんに何でも言ってごらんなさい」
「えっと、それじゃあ、この問題なんだけど……」
「どれどれ」
光毅が由奈に対して、わからない問題を質問すると、由奈も丁寧に答えていく。
彼女は成績も良かったし、教え方も上手なので、とてもわかりやすく、光毅も自分の姉のことながら、感心してしまう程であった。
「というわけなの。わかった?」
「うん。ありがとう」
「えへへ、よかった。みっくん、良い子、良い子」
「ちょ、ちょっと……」
お礼を言った時の顔があまりにも可愛らしかったので、由奈も光毅の頭を思わず撫でると、光毅も恥ずかしくて顔を赤くしてしまい、俯いてしまう。
いつもの事ではあるが、なんだか子ども扱いされているみたいであり、由奈の微笑ましく自分を見つめる顔が眩しすぎて、逆に見てられなくなったいた。
「みっくん、ちょっと良い? って、二人とも何してるのよ」
「何って、勉強よ。菜月ちゃんも、一緒にやる?」
「ふーん、勉強ね。みっくんにしては真面目じゃない」
「そ、そんな事はないと思うけど……」
菜月が光毅の部屋に入ってくると、由奈と光毅が密着して勉強しているのを見て、少し嫉妬してしまい、頬を膨らませてそう口にする。
「菜月ちゃん、この前のテストどうだったの?」
「どうって、いつも通りよ。平均はちょっと超えたかなって位で……」
「なら、安心ね。菜月ちゃんも頭は悪くないんだから、自信持たないと」
「んもう、恥ずかしいよお……」
由奈は菜月の頭も、光穀と同じ様に優しく撫でながらそう言い、菜月も弟と同じ様に顔を赤くして俯く。
菜月と光穀は血の繋がった実の姉弟なので、やっぱり似ているなあと由奈は思いつつ、二人とは血が繋がってない事に寂しさも少し感じていた。
「それで、みっくんに何か用なの?」
「あ、別に……大した用事じゃないんだけど、明日の放課後、予定あるかなって……」
「あら、デートのお誘い? 菜月ちゃんも随分、積極的になったじゃない」
「違うし! みっくんに力仕事頼みたいだけ! 学校に置いてある教材、家に持ち帰るの手伝って欲しいの」
夏休みも間近になり、菜月も学校に置きぱなっしだった教材が溜まってしまい、それを今の内に家に持ち帰っておきたかったのだ。
「んで、明日空いてる?」
「うん、良いよ」
「よかった。じゃあ、お願いね。てか、二人ともくっつきすぎ。暑苦しいじゃない」
「ええー? 良いじゃない、こうした方が教えやすいしい。くす、どう、みっくん? まだわからないことある?」
「だ、大丈夫だよ……」
菜月が注意すると、由奈は逆に菜月に見せつける様に、光穀に体を密着させ、胸を腕に押し付けていく。
「キイイイ! そういう事しないでって言ってるの! もうわかった! 私も一緒に勉強見るから!」
「えっ!? うわあ!」
由奈の煽りにあっさり乗ってしまった菜月が、光毅の隣に座って、強引に教科書と問題集を開き、問題を解かせる。
「ふふん、菜月ちゃんも結構、嫉妬深いわねえ。あ、みっくん、ここわかるー? ちゃんと正解出来たら、お姉ちゃんがお礼にちゅーしてあげるからね♡」
「だから、そういう事しないのっ! みっくんもデレデレしないで、ちゃんと真面目に勉強に集中する!」
「し、してないよー……いたた」
由奈がそう言うと、菜月も更に顔を真っ赤にさせて、光毅の耳を引っ張り、彼の腕を組んで二人が光毅を巡って引っ張り合いをする。
当然、こんな状況で勉強に集中など出来る筈もなく、結局、ロクに復習できないまま、一日が過ぎてしまったのであった。
翌日――
「ほら、みっくん。入って」
「失礼します……」
放課後になり、菜月との約束通り、彼女の教室に行き、恐る恐る光毅が入る。
姉のクラスとは言え、三年生の教室に入るのはやっぱり緊張してしまい、光毅も誰もいないのに畏まってしまった。
「そんなに緊張しなくてもいいのに。えっと、これとこれと……あと、これはこのバッグに入れておこうと」
教室に入るや、菜月はまず自分のロッカーの中に入っていた教材を持ち運び、自身の机の上に置く。
教科書以外にも問題集や資料、授業に使うタブレットなどがかなりあり、全部一度に持とうとすると、流石に骨が折れるので、普通は数日に分けて持ち帰るのだが、
「みっくんも溜まらない内に、家に持って帰りなさい。小学生の時も、終業式の時に溜めちゃって、大変な思いしてたでしょ」
「うん……これ、ここに入れれば良い?」
「ええ。んしょっと……やっぱり、重いわねえ……」
菜月の机の上に積まれた教材を自分のバッグの中に入れていき、いっぱいになった所でしょい始めるが、かなり重くて、仰け反りそうになってしまった。
「大丈夫、持てる?」
「平気だよ。あの、菜月おねえちゃん」
「何?」
教室から出た所で、
「えっと、菜月お姉ちゃん、夏休みは……」
「ああ、特に予定ないけど。三年なら、普通なら受験なんだろうけど、ウチはエスカレーターだからね。でも、由奈お姉ちゃんは受験あるしなあ」
「そうだよね……」
由奈は高三なので、今年は受験があり、本当なら忙しいはずであった。
しかし、由奈は成績が良いので、推薦で早めに決まる可能性も高かったが、それでもこの夏休みはとても遊べる状態ではなく、自分も羽目を外すのは悪いと思っていた。
「ほら、そこのコンビニで休もう。お礼に何か飲み物奢ってあげるから」
「う、うん」
学校を出てすぐ近くにあるコンビニに行き、由奈がドリンクを二つ買い、イートインコーナーに二人で並んで座る。
「今日は、ありがとう。何か一人だと不安で」
「不安?」
「い、いや……何か、最近二人きりの機会あんまないなって思って……」
「そ、そうかな?」
「っ! 別に変な意味じゃなくて……家だと、お姉ちゃんたちいるしさ。あんまり、二人で居る機会いないし……」
と、なぜかしんみりした表情をしてそう呟くと、菜月は顔を真っ赤にし、
「な、何でもない! 今の忘れて! ほら、早く飲みなさい。私の奢りなんだから、ありがたくいただく」
「うん……」
慌てて菜月がそう言うと、一気飲みして、光毅もそれに続く。
だが、光毅は飲んだ後、一呼吸置き、
「ねえ、菜月おねえちゃん」
「ん?」
「教材を置いてきたら、二人で遊びに行こう」
「え?」
そう菜月を誘うと、彼女も目を点にする。
「み、みっくんと二人で?」
「うん……」
「そ、そう。しょうがないわね。あんたがそう言うなら、付き合ってあげるわ」
と、思わぬ誘いに狼狽しながらも、




