第一話 三人のお姉ちゃんたちとの朝
「おはよう、みっくん♡」
「あー、ズルいよ、私も」
二人に引っ張りだこにあい、その度に胸に顔を押し付けられ、もみ合いになる。
ここ最近は朝から、ずっとこんな感じ……。
正直、うんざりもしているが、二人の好意を無碍にも出来ず、断れなくて僕も困っていた。
「んもう、やっぱり、可愛いなー。ふふん、由奈お姉さんの、おっぱい触ってみるー?」
「あ、ちょっとそれやりすぎー。光毅君、私のも♪」
「あ、あの……」
二人がブラウスのボタンをはずして、色っぽい笑みで僕に更に迫ってくる。
ちょっ、これ、冗談じゃ済まないんじゃ……。
「こらーーー、ウチのみっくんにセクハラするなって言ってるでしょうがっ!!」
ブラウスを肌蹴て下着を脱ごうとした所で、怒号が鳴り響き、二人を強引に引き離す。
「もう、何やってるのよ、二人とも! 仮にも弟の前ではしたない!」
「良いじゃない、別に。幼い弟とのスキンシップだしー♪」
「ねー。自分が光毅君独占出来なくなったからって、イライラすることじゃない」
「そういう問題じゃないっ! みっくんの面倒見ろって言われたの、忘れたの!?」
「ふん。だから、ちゃんと見ているんじゃない」
中学二年の僕、有動光毅には三人の姉がいる。
いや、三人の姉が出来てしまったというべきか。
「みっ君も、ほらさっさとしたくしなさい。遅刻するよ」
「うん……」
ムスっとした顔をして、制服をビシっと着こなしたお姉ちゃんが、僕の手を引き、体をベッドから起こしていく。
ショートツインテールの髪形をし、キリっとした瞳をした、ちょっと勝気な雰囲気の一番下のお姉ちゃんの有動菜月
僕の一つ上の姉で中学三年生。
年も近く、とても世話焼きなおねえちゃんであったが、ちょっと気が強く、上のお姉ちゃんたちと一緒にいるとよく怒る。
「光毅くーん。はい、お弁当。今日もお勉強頑張ろうね。ちゅ♡」
「はうう……」
僕に弁当を手渡し、頬に挨拶代わりのキスをしたのは一番上のお姉ちゃんの、由奈お姉ちゃんで新しく出来たお姉さん。
父の再婚の際に出来た義理の父親の連れ子で、僕の通う学園の高等部の三年生をしている。
カールが少しかかった長い髪に、おっとりとした雰囲気の包容力あふれ、胸も大きいキレイなお姉ちゃん。
母親みたいな感じで、血の繋がらない僕でもとてもかわいがってくれており、大好きなお姉ちゃんではあるが、ちょっと過保護なのが玉に瑕であった。
「みっくーん。ふふん、んじゃ、私と手を繋いで学校行こうか」
「こ、子供じゃないんだからー……」
家から出た後、僕の手を繋いで、登校しようとしているのは僕の二番目の姉の静子お姉ちゃんで、高校二年生。
肩までかからないくらいのボブヘアーに、悪戯っぽい瞳が特徴の、からかい癖の多いお姉ちゃんで、スレンダーなモデルみたいな体型をした
実は静子お姉ちゃんは、訳アリで、お母さんが僕と菜月お姉ちゃんと違うらしい。
所謂腹違いの姉という奴らしいが、血は繋がっているので、実のお姉ちゃんである
父が僕と菜月お姉ちゃんのお母さんと結婚する前に出来た女性の子らしいが、詳しいことは、僕は聞いていない。
「あーー、静子ちゃん、ずるい。今日は私がみっ君を送る番なんだから」
「そんなの聞いてないわよ。光毅君を送るのは私の役目なんだから」
「だから、勝手に決めないでって言ってるでしょう。つか、みっくんも中学生なんだから、往来の前でみっともないわよー!」
静子お姉ちゃんが僕の手を繋いでいるのを見て、由奈お姉ちゃんも対抗するように僕の腕を組み、それを赤い顔をして、慌てて菜月お姉ちゃんが引き離す。
「もう、みっくんもしっかりして。男の子なんだから、ちゃんとしなさい!」
「ごめんなさい……」
オドオドしていた僕に頬を膨らませながら、菜月お姉ちゃんが注意し、僕もシュンとして頷く。
朝から、こんな調子では確かに情けないけど、
菜月お姉ちゃんは正真正銘の両親も同じの実姉弟。
静子お姉ちゃんはお母さんが違う片親違いの姉弟
由奈お姉ちゃんは血の繋がらない義理の姉。
両親の仕事の都合で、今は僕たち四人だけの生活になってしまい、姉たちのスキンシップがやたらと過剰になって困っていたのであった。