エピローグ 後編
前編からだいぶ間が空いてしまいましたが、ようやく書ける余裕が少しだけできました。
最終エピソードです。
エピローグ 後編
「エリスはもともと、人間たちの国を征服するために2代前の女帝リリスがレア様の提案で産んだ子。
そして、四大陸にあった人間たちの国はエリスの活躍もあってことごとく帝国の版図と化し、異世界の人間たちによる侵略も二度失敗させたですの。
ヴェルトヴァイト帝国に対抗できる人間たちはもはや"この世界"にいないですの。
それに、エリスを産んだリリスやエリスの姉だった先帝ノクスもイルミナもすでにこの世を去り、エリスがこのままの状態で存在し続ける意義はほぼないですの。
ただ、もし遠い将来、ヴェルトヴァイト帝国に新たなる脅威が迫った際、時の女帝を援ける戦力として蘇るですの」
エリスは次に必要とされる時まで、専属侍女4名とともにヒンメルスパラストで眠ることとなった。
エクレアは当初、エリスだけをヒンメルスパラストに残すつもりだったが、"エルステ"のメイも、"ツヴァイテ"のクロエも、"ドリッテ"のアンネも、"フィアーテ"のファニーも、エリスの側に居続けたいと願った。
クロエはエリスが生まれた時から側に仕えている侍女であり、メイとアンネはエリスによって救われたことからエリスへの精神的な依存は測り知れないほど深く、エリスとの離別は彼女たちにとって死にも等しいものだった。
ファニーは3人と異なり、ヒンメルスパラストの管理を理由に挙げたが、エリスと離れたくないという思いも隠さなかった。
「4人くらいなら"誤差の範囲内"だから問題ないですの」
専属侍女たちがそう願うことも想定していたようで、エクレアはすぐに許可。
ヒンメルスパラストに残る5人のうち、ファニーだけは"永き眠り"に入らず、ヒンメルスパラストの管理者を務めることになった。
セントメアリの住民には具体的なタイミングを示さなかったが、近いうちにヒンメルスパラストが切り離されることを予め周知していた。
そして、とある日の夜中…。
エリスと4人の専属侍女、それにエクレアは最近リニューアルした1つの部屋にいた。
その部屋には手前側に普通のサイズのベッドが2つ、奥に大きなサイズのベッドが1つある。
手前側のベッドにはクロエとアンネが、奥のベッドにはエリスとメイが一緒に横たわった。
ファニーは部屋の出入口近くで、これから行われる"儀式"を見守っている。
エクレアはアンネ、クロエの順に"術"を施し、2人を永き眠りに誘う。
次いで、大きなベッドに近づくとメイの顔に手をかざす。
「メイ、これからもエリスのこと、よろしくね」
「はい…エリのこと、いつまでも…」
エクレアへ返す言葉が途切れるとともに、メイは永き眠りに入った。
「エクレアちゃん…今までありがとう…またいつか、一緒に…」
「ええ、おやすみなさい、エリス…」
最後に、エリスもエクレアによって永き眠りについた。
"儀式"を終えると、エクレアは何かを託すようにしばらくファニーと唇を重ねてから、振り返らずに部屋を出る。
ファニーもエクレアの後を追ったがすぐに立ち止まり、エリスたち4人が眠る部屋に、先ほどエクレアから授けられた力で封印を施した。
この封印はエクレアとファニー、それに神々以外は誰も解除できないものである。
エクレアはもう1つ別の"儀式"を行った後、ヒンメルスパラストから離れた。
その"儀式"によってヒンメルスパラストが揺れても、予め伝えられていたファニーは驚かなかった。
エクレアが行った"儀式"でヒンメルスパラストはセントメアリから切り離され、東へ移動しながら高度を上げていく。
アヴァロニア大陸から離れたところで進路を南に変えた。
海に出てからの進路は、ある程度ファニーの裁量で変えられるが、陸地には近づかないようにエクレアから命じられていた。
こうしてヒンメルスパラストは、次にエリスが目覚めるまで海の遥か上を飛び続けることになった。
これで「空のエリス」は完結です。
もっと長く書きたかったですが、アイデアが枯渇したのと本業の多忙さで叶いませんでした…。
でも設定回含めて100ページ以内なので、目次が複数ページにまたがらないのは、むしろいいのかもしれないですね…。




