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空のエリス  作者: 長部円
第3部
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2 変革と次代の支配者たち

2


ヴェルトヴァイト帝国の第1皇女リリスがある程度成長すると、女帝ノクスは第2子を産んだ。

ヴェパルと名付けられた娘はイルミナの後継として世界の海を支配することになるため、物心ついてからは、母親のノクスよりもイルミナのほうが多くヴェパルと接し、次代の海の支配者を育てていった。


そして、先帝リリスの没後100年となる年に、ヴェルトヴァイト帝国は大きな変革を迎えた。

マリーネと世界の海の支配権がイルミナからヴェパルに引き継がれただけでなく、それまで実質的にイルミナやエリスの"所領"としていた地域について、一部を除いて帝国の行政官に諸権限を譲渡。

イルミナはティグリ大陸のリオグランデ州、エリスはアヴァロニア大陸のセントメアリとその上空にあるヒンメルスパラストだけが領地として認められた。


それらが一区切りついたある日、3姉妹とノクスの娘2人は専属侍女とともにパンゲーアの一室に集まった。

「今の心境としては、ヴェパルちゃんに無事マリーネを引き継げてほっとしているわ」

「私も、これからはヒンメルスパラストにいられる時間が増えるし、都合がつけばイルミナお姉ちゃんといられる時間もこれまでより増えるからうれしいです…」

「エリスちゃんったら…そんなかわいいこと言う子には、ちゅーしちゃうわよ…」

実際にイルミナはエリスの唇を奪い、キスされたエリスもうれしそうにしている。

ノクス、リリス、ヴェパルはイルミナとエリスのイチャイチャを羨ましそうに見ていた。


もともと、アヴァロン王国などの人間(アントロポス)勢力を攻めるために新たな戦力としてこの世に生を受けたエリスは、庶民を導く統治者には向いていない。

メイやクロエ、ジーベンヴァイゼンたちに支えられてこれまで慣れない仕事を続けてきたが、ようやく解放された。

デー・クラフトの総司令官は引き続き務めるが、姉のノクスや次の女帝になるリリスとの仲は良好で、彼女たちと敵対する要因は全くない。


イルミナもいつか来る世代交代を見越していたからこそ、リオグランデ州をサンゴ帝国に譲らず自らの手で征服し"隠居地"として整備すると、専用武装"レヴィアタン"を含めてそれまで持っていたもののほぼ全てを姪に譲った。

譲らなかったものは、専属侍女4名だけだった。


なお、先帝リリスの専属侍女だった4名のうち、ヴァンピーリンのユリアネはエリスやアンネが強く望んでヒンメルスパラストに迎え入れた。

ルイゼ、ユーディット、リビティナはすでに亡くなり、ノクスの娘であるリリスが"ユッタ"と呼んでいる、彼女の第1専属侍女(エルステ)ユーディットは、先帝の第3専属侍女(ドリッテ)だったユーディットとは別の存在である。

リリスの第2専属侍女(ツヴァイテ)エーファはユリアネが推薦したヴァンピーリンで、アンネもユリアネから、エーファが次の女帝のツヴァイテに相応しいかの見極めを依頼された。

ユリアネとアンネに太鼓判を押してもらったエーファは大喜びし、以後両名をずっと敬慕している。

第3専属侍女(ドリッテ)ロスヴィータはミネルヴァとメイが帝国領内の人間(アントロポス)から選定し、主となるリリスによってディアボロスにされた。

第4専属侍女(フィアーテ)アガーテはリリス自らパンゲーアにいる侍女の中から選んだ魔女(ヘクセ)で、先輩の魔女(ヘクセ)であるカリナ、ベルタ、アネモーネは彼女が皇女の専属侍女として成長するための協力を惜しまなかった。

「ヴェパルのことはイルミナに任せたけど、リリスについては専属侍女の選定や育成など、かなりの割合でエリスとその配下に任せてしまったわね」

「大好きなノクスお姉ちゃんの娘に尽くせるなら、どれだけ任されても苦にしないです…」

「エリスお姉さま…健気でかわいい…ユッタも、エリスお姉さまやユノに追いつけ追い越せとは言わないけど、いいところはどんどん取り入れて少しでも彼女たちの域に近づけるよう精進しなさい」

「はい…」


"変革"から数年の間、特段大きな問題は起こらなかったが、ミッテルアヴァロニア州のエリスの本拠に近い地域である日、帝国の内乱につながりそうな事件が起きた。

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