1 代替わりとある日の天空会議
今回から第3部です。
世代交代に伴うキャラクタの入れ替えがあるので、キャラクタ情報のまとめは(やる場合)ある程度の入れ替えが済んでからやります。
1
"この世界"はアヴァロニア大陸、アウェス大陸、ティグリ大陸、テストゥド大陸の4大陸と数千の島々からなり、かつてそれぞれの大陸には人間が国家を築いていた。
アヴァロニア大陸にはアヴァロン王国、アウェス大陸にはラプタ王国、ティグリ大陸にはマルテル王国、サンタクルス王国、シエロ王国、テストゥド大陸にはバグロヴァヤ帝国といった大国が繁栄し、人間による文明を発展させてきた。
だが、アヴァロン王国はアマージエン島から侵攻してきたディアボロスのヴェルトヴァイト帝国に滅ぼされ、アヴァロニア大陸はヴェルトヴァイト帝国の版図に組み込まれた。
ラプタ王国は異種族のサンゴ帝国との数十年間にわたる戦争に敗れて姿を消し、アウェス大陸はサンゴ帝国が統一。
ティグリ大陸の三国はヴェルトヴァイト帝国にマルテル王国が、サンゴ帝国にサンタクルス王国が征服され、最後に残ったシエロ王国は一部地域をヴェルトヴァイト帝国に譲った上でそれ以外をサンゴ帝国が征服。
テストゥド大陸に広大な領土を占めていたバグロヴァヤ帝国は、広義的には同族にあたるウリンという勢力から侵略を受けて弱体化し、その隙に付け込んだヴェルトヴァイト帝国に切り崩されて滅びた。
バグロヴァヤ帝国より先にウリンを実質的に壊滅させたヴェルトヴァイト帝国は、ウリンに征服されていたチュンヤン王国を形式的に再興させたが、その際に女王の位に就けた人間はヴェルトヴァイト帝国の皇女に心酔し、以後も帝国の意を受けて動くようになった。
そのため、チュンヤン王国は女神の要望で存続し続けているものの、実質的には帝国領の一部である。
テストゥド大陸においてヴェルトヴァイト帝国やチュンヤン王国の領土でない地域も人間以外の種族が支配しており、人間が実質的な最高権力者として君臨する場所はすでに"この世界"のどこにもない。
ティグリ大陸の征服が終わった後に母のリリスからヴェルトヴァイト帝国の女帝の位を継いだノクスは、母の死後に子供を産むと、母と同じリリスという名をつけた。
イルミナもエリスも姪のリリスをかわいがったが、リリスは特にエリスを気に入り、ノクスからの指示を拒否したいと思った時も、エリスに説得されると、
「エリスお姉さまがそう言うなら…」
と言って従うなど、エリスの言うことなら何でも受け容れていた。
----
ある日、エリスの城・ヒンメルスパラストでは、これから幹部会議"ヒンメルスコンフェレンツ"が開催されるため、会議室にエリス配下の幹部たちが入り、次々と自分の席に座った。
エリスの席と隣り合った席とその隣、左右2席ずつは専属侍女が座る。
エリスの左隣がエルステであるメイの席、右隣がツヴァイテであるクロエの席、メイの隣がドリッテであるアンネの席、そしてクロエの隣がフィアーテであるファニーの席。
なお、5名は他の幹部が全員揃ってから入室する。
アンネの席の左には七賢女が着席。
ドライヴァイゼンを拡張した役職であるという経緯から、形式的な序列はマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディア、ヘレーネ、グレーテル、ジビュレ、アデーレの順で、それがそのまま席順にもなっている。
ファニーの席の右にはティーアクライスの12名が座った。
イーリス、ペペ、リューディアは"ノインラターネン"だった頃から変わらないが、"ゲファレネ"の2名、"フィーア"だったベルティルデと"ゼクス"だったレナーテは、女帝が代替わりしたタイミングでティーアクライスを辞任した。
ただ、エリスや専属侍女たちとの関係は良好のまま変わっていない。
ベルティルデが務めていたフィーアはマルテル王国の元王女デジレが、レナーテが務めていたゼクスは、旧バグロヴァヤ帝国の皇族の傍流にあたり、ノルトシュヴァルツ・バグロヴァヤ州の初代知事ナジェージダの末裔であるエヴゲーニヤが後任となった。
エヴゲーニヤは水冷の女神ケルテアから受けた加護により、水や氷、雪などを魔法でほぼ自在に操れ、彼女がウリンやヴェルトヴァイト帝国の征服を受ける前に生まれていたら歴史が変わっていたかもしれないと言われるほど、その才能を評価されていた。
ノクスもイルミナもエヴゲーニヤを欲したが、エリスは先手を打ってエヴゲーニヤのもとを訪れ、数百年生きているとは思えないエリスの愛らしい容姿に魅了されたエヴゲーニヤは堕とされ、彼女の心はエリスのものになっていた。
こうしてエリスは"奥の手"を使うまでもなく2人を諦めさせ、エヴゲーニヤをティーアクライスに迎えた。
特にメイやリューディア、デジレといった"元王族"たちからは"ジェーニャ"という愛称で呼ばれ、かわいがられている。
ジェーニャも元人間ながらエルステを務めているメイを敬慕し、リューディアとデジレにも親友以上の感情を抱いていた。
フュンフのミヤ、およびジーベン以降のヘーデ(ヘートヴィヒ)、カリナ、ベルタ、アネモーネ、スルーズ、ティジー(ティジーフォネ)はティーアクライスになってからこれまで、変わらず名を連ねている。
ジーベンヴァイゼンとティーアクライスの合計19名が全員着席すると、やや間があってからエリスと専属侍女が入室。
専属侍女4名が先に座り、最後にエリスが他より豪華な造りの椅子に腰掛けて、ヒンメルスコンフェレンツのメンバー24名が揃った。
エリスの真向かいにあたるアネモーネは、ティーアクライスに加わったばかりの頃こそ緊張を隠せなかったが、今では落ち着いて会議に臨んでいる。
その隣に座るベルタは、敬慕するメイとアンネが真向かいにいるため、この座席配置を気に入っており、会議が始まるまでは2人に熱い視線を向けているが、会議中は至って真面目である。
この日のヒンメルスコンフェレンツは特に重要度の高い議題がなかったため、比較的和やかな雰囲気だった。




