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空のエリス  作者: 長部円
第2部 3章
82/98

42 国王と次女とドリッテとフィアーテ

42


エリスからノクスに引き渡されたマルテル王国の王アルベールと次女ベルナデットはパンゲーアの、必要最小限のものしかない部屋に別々に囚われたが、ある日、壁も天井も床もすべて石造りになっている部屋で再会。

その場にはノクスの専属侍女2人が先に待っていた。

「あなたたちがマルテルの国王アルベールと娘のベルナデットね?」

「貴様ら魔族に名乗る名前はない」

ノクスの"ドリッテ"であるフォルトゥナからの問いかけに、アルベールは不快感を(あらわ)にしながら言葉を返す。

「ならば、わたしたちも名乗りません…お2人はこれから、名も知らぬディアボロスによって斃されるのです…」

「我らの国は魔族によって蹂躙され、我々の命ももはや風前の灯火かもしれないが、簡単にくれてやると思うな」

「なぜ王都で容易く拘束されてしまったのかわかりませんが、簡単に屠れる相手ではないからこそ、"ドリッテ"と"フィアーテ"であるわたしたちが相手なのです…」

ノクスの"フィアーテ"であるミネルヴァとベルナデットの"会話"が終わると、フォルトゥナはアルベールとベルナデットに襲いかかった。


フォルトゥナの武装"フュルホルン"からは様々な攻撃が単発ではなく複数同時に展開され、アルベールを翻弄する。

アルベールはすべての攻撃を防ぐことはせず、自分の受けるダメージがなるべく少なくなるように見極めていた。


武装"ピークダーメ"をまとったミネルヴァもベルナデットに反撃の隙を与えず、一方的に攻める。

ミネルヴァの攻撃を受け続けたベルナデットは、自分の体に傷と違うものが現れていることに気づいた。

「その"ヘルツ"は"ドライツェーン・ヘルツェン"の一部…。

 その身に13個刻まれたその時、あなたの人間(アントロポス)としての命は尽きます」

 正確には、黒いスペードを逆さにしたような紋様がベルナデットに刻まれている。


戦闘開始からかなりの時が経過し、ミネルヴァへほとんど攻撃を当てられないまま、逆に12個の黒いヘルツをつけられたベルナデットは、それでも満身創痍とは思えない立ち振る舞いでミネルヴァと相対していた。

「これで終わりです…レーベン・ネーメン」

そんなベルナデットに、ミネルヴァはとどめの一撃を放つ。

それを避ける力は残っていなかったのか、ベルナデットは"レーベン・ネーメン"をまともに受けて倒れた。


「ベルナデット!」

「そちらには行かせない」

ベルナデットに駆け寄ろうとするアルベールを、フォルトゥナは回り込んで阻止する。

人間(アントロポス)として勇敢に戦って斃れたベルナデットには…こうです」

ミネルヴァは斃れたベルナデットに近づくと、自分がつけた13個目の"ヘルツ"に触れながらベルナデットの唇を奪った。

ミネルヴァから口移しで何かが送り込まれると、ベルナデットの体に刻まれた13個のヘルツは緑に変わる。

ミネルヴァが体を離すと、ベルナデットは瞼を開いてゆっくりと起き上がった。

ベルナデットが再び動き出しても、アルベールは喜んでいない。

なぜなら、ベルナデットの瞳は先ほどまでと違う淡緑色(ヘルグリューン)に染まっていたから。

そして、ベルナデットは無言で父親(アルベール)に斬りかかった。


人間(アントロポス)としての命を奪われ、わたしたちのものとなったベルナデット…。

 最初の仕事は"先ほどまで父親だった"人間(アントロポス)の処刑よ」

だが、アルベールは変わり果てた娘からの攻撃をすべて防ぐ。

「この状況でまだここまでやれるとは…。

 もし、この才能を持って違う環境で生まれ育っていたなら、少なからず我らの脅威になっていたかもしれないですね」

「そうね…」

フォルトゥナとミネルヴァは"父娘"の争いをしばらく眺めていたが、

「そろそろ飽きたから終わらせるわね」

「はい…」

フォルトゥナはベルナデットだけに意識を集中させていたアルベールに近づいて、魔力を帯びた刃で首を刎ねる。

「ケプフェン!」

その首にミネルヴァが頭突きをして、首はアルベールの体からかなり離れたところまで飛んでいった。

そして、ベルナデットはアルベールの首の切断面から噴き出した血で真っ赤に染まった。


「期待通りの結果ではなかったですけど、この子は無能ではないですね。

 もし、ノクス様が欲しいと言わなかったら、私の配下にしたいです…」

もう自分のものになったかのように、血塗れのベルナデットを愛でるミネルヴァ。

その後、ノクスは直臣としてベルナデットを取り立てなかったため、ミネルヴァの希望通りベルナデットは彼女のものとなった。

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