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空のエリス  作者: 長部円
第2部 3章
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41 アガットの行く末

41


デジレが目を覚ました日から10日後、サンゴ帝国もサンタクルス王国の都サン・ミゲル・デル・モンテを攻略した。

ティグリ大陸で残っている人間の勢力のうち大国はシエロ王国だけで、あとはマルテル王国やサンタクルス王国から独立した地方領主が王を自称する小国家群と、モンドールを追い出されたアルセーヌ、ベルトランの兄弟が率いるマルテル王国の残党。

ユヴェーレンを使ってその情報を入手した次の日、エリスは専属侍女4人とロロット、デジレを従えてパンゲーアに向かう。


「エリスちゃん、待ってたわ」

パンゲーアに到着すると、待ち構えていたイルミナにぎゅっと抱きつかれた。

「イルミナさま…エリスおねえさまはこれから用があるので…」

デジレが軽く睨むようにイルミナへ視線を向けながら言葉をかける。

「お母様のところへ行くなら、わたしも一緒に行くから問題ないわ。

 ねっ、エリスちゃん」

「はい…でも、あまり遅くならないように…」

「わかってるわ…本当に時間が無くなったらフェーりんが教えてくれるから」

結局、フェブラに急かされてイルミナとエリスはリリスの部屋へ向かった。


イルミナに続いてエリスはリリスにティグリ大陸の戦況を報告し、その中でデジレの紹介も行った。

ロロットはディアボロスにする際に紹介を済ませていて、アガットとベルナデットについてもリリスは把握している。

「この子もディアボロスにするの?」

「はい、私だけでなく三賢女も専属侍女たちも、姉と同じディアボロスにしたほうがいいという意見で一致しています」

「デジレはロロットおねえさまと同じになりたいです…エリスおねえさまがそうしてくれたらうれしいです…」

「エリスちゃん、羨ましい…」

「イルミナ、諦めなさい…この子の心はすでにエリスのものよ」

「はい…」

デジレに少なからずエリスと似た雰囲気を感じ取ったイルミナの、デジレを自分のものにしたいという欲望はリリスによって未然に阻止された。


数日後、デジレはロロットと同じディアボロスになった。

「ああ…やっぱりわたしも人間(アントロポス)の王女が欲しい…」

エリスの側に侍るロロットとデジレを見て、イルミナは改めて欲望を言葉に出す。

「2人はこの通り、完全に私のものですし、次女のベルナデットはノクスお姉ちゃんにあげてしまいました。

 長女のアガットなら残っていますが…」

「今のアガットには、同胞(ディアボロス)にも兵器(アンドロヴァッフェ)にもする価値はないですの。

 王女が欲しいなら、事実上滅びたサンタクルス王国かこれから攻め込むシエロ王国の姫が欲しいと、サンゴ帝国に要求したほうがいいですの」

「エクレアちゃんの言う通りにした方がよさそうね。

 わたしも人間(アントロポス)の王女を手に入れるなら、エリスちゃんやそこにいる子たちみたいなかわいい子がいいもの」

エクレアの言葉を受けて、早速イルミナはサンゴ帝国と交渉を始めた。


アガットの扱いについても後日エクレアからリリスに提案があり、リリスがそれを承認すると、エリスはモンドールの"旧王宮"に留まっているアガットと面会。

「あなたは今後、人里から離れた祠に移ってもらい、死ぬまでブリゼア様に祈りを捧げるだけの存在になってもらうけど、帝国からはそれ以上のことは求めないし、あなたの祈りを妨げようとする輩は近づかせない。

 それなら問題ないでしょう?」

「ええ、それでいいわ…」

後継者争いによって心身ともに疲弊していたアガットは、エリスが率いる帝国軍に保護された際、マルテル王国がどうなろうと興味はないし、魔族に与するつもりもないと言っていた。

エリスからの、俗世と離れた環境へ移ることになるという話はアガットにとってありがたかったが、エリスへ肯定を伝える返事は雑なものになってしまった。

アガットの侍女たちと移住先などについてしばらく話してから、エリスが部屋を出ようとすると、

「ちょっと待って」

アガットはエリスを呼び止める。

「エリス…私のような、魔族にとって何の役にも立たない人間にここまでしてくれて…ありがとう。

 あなたになら、ロロットとデジレのこと、安心して任せられる…」

「あなたの妹2人は、同胞(ディアボロス)としてずっと大切にするわ…」

言葉を交わし、少しだけ見つめ合ってから、エリスはアガットの部屋を後にした。


アガットが"旧王宮"を出てブリゼアを祀る祠へ移り住むと、エリスは祠へ通じる道をすべて封鎖して関係者以外の出入りを禁じ、アガットが天寿を全うするまで彼女と交わした約束を守った。

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