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空のエリス  作者: 長部円
第2部 3章
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37 三国時代、終焉に瀕する

37


プランタン家とプランタン騎士団について、形式上はジャンヌが両方を継ぎ、家長と騎士団長とサンタントワーヌの領主を兼務することになったが、騎士団の実権はフェリシテが掌握して、サンタントワーヌを含めた帝国の支配地域の治安維持にあたった。

ジャンヌは妹2人や騎士団員たちが帝国軍に先陣として組み込まれることを覚悟していた。

だが、帝国軍の思惑はどうであれ、彼女たちをサンタントワーヌおよび周辺に留めるとエリスから聞いた時は、エリスを含めた帝国軍幹部たちに感謝した。

ズーセ・インゼルからダクマーが増援を率いてやってくると、帝国軍は本格的に進軍を再開。

「ゲネラールであるが故にエリス様へ加勢できないなら、ゲネラールの肩書を返上します!」

とまで言ってエリスの指揮下で戦いたいと志願したダクマーに、エリスは陸戦部隊を委ねることにした。

「あなたほどの歴戦の勇将に、実戦経験の劣る私が指示するとしたら、"お任せするわ"しかないわ。

 むしろ、陸戦部隊の事前準備はあなたに任せて、戦いが始まったらあなたの部隊を援護するよう、

 私から他の部隊へ指示するほうがあっていると思うの」

「そこまで私のことを…ありがたきお言葉…身に余る光栄です…」

エリスの期待に応え、彼女の率いる部隊は帝国軍随一の働きを見せる。

「あなたが来てくれたおかげで、明らかに私たちの勢いは増したわ」

エリスから"お褒めの言葉"を頂き、ダクマーのやる気はさらに増した。


一方、マルテル王国側では"魔族"の侵略を止められないことやプランタン家の当主夫妻を反逆罪で処刑したことなどに対する不満と、プランタン家の二の舞を避けるための動きとして、地方領主やその一族が自分の領地に籠るようになった。

国王からの召集に対して、さまざまな理由をつけて引き延ばす者もいれば、事実上王国から独立し、王国軍が攻めてくるなら追い返すと宣言した者もいる。

もはや直轄領以外には王権が及ばなくなりつつあるマルテル王国だが、南のサンタクルス王国や西のシエロ王国は助けることも、この機に乗じて領土を切り取ることもできなかった。


サンタクルス王国はサンゴ帝国の侵略で国土の半分以上を失っており、それどころではない。

シエロ王国は万が一の時に亡命や住民の避難を受け容れる約束をしているが、自国の守りを固めることを優先し、他国に軍を派遣している余裕はなかった。

そして、クノスペが率いる魔獣部隊もエリスの増援として投入したヴェルトヴァイト帝国軍は、マルテル王国の都モンドールの衛星都市をすべて落とし、次の標的をモンドールに定めた。

ほぼ同時に、サンゴ帝国軍もサンタクルス王国の都を俯瞰できるところまで到達。

2つの帝国による侵略で、ティグリ大陸の"三国時代"は終焉を迎えようとしていた。


帝国軍が王都モンドールに迫った時点で、三賢女(ドライヴァイゼン)のマグノーリエやバルザミーネなど戦闘が不得手なエリスの配下たちは、イルミナ配下から"出向中"のアストリドを含めてすでに全員

サンタントワーヌへ移動していたが、ユヴェーレンからの連絡でマグノーリエ、バルザミーネ、アストリドは

エリスがいるモンドール近郊の要塞シャトーデシャへ向かった。


エリスから現在までの戦況を聞いたアストリドは1つため息をつく。

「そうですか…私がいなくなってから"ティーグル・ブラン"もだいぶ落ちぶれましたね…。

 ところで、帝国軍やユヴェーレンと"ティーグル・ノワール"は何回か接触しましたか?」

「いいえ、向こうからもこちらからも接触はしなかったわ」

「王国の上層部はティーグル・ノワールの扱いもわからないほど無能ばかりなのか、それとも権力争いで干されたか…。

 いずれにせよ、もし我らやサンゴ帝国が動かなかったとしても、サンタクルス王国に攻められていたかもしれませんね…」

「そんな無能たちが中にいたとしても、攻め方を誤ると意外に手こずってしまうかもしれないから、あなたを呼んだのよ。

 サンタントワーヌと同様、使える限りの搦め手を用いて、死者を"必要最小限"に抑えたいの」

「承知しました…優しいエリス様の望みを叶えるため、私が知っている限りのモンドールについての情報を提供します」

こうして、エリスたちはシャトーデシャでモンドール攻略のための作戦を立て始めたが、数日後に保護したモンドールからの脱走者たちが、その作戦に大きく役立つこととなった。

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